早稲田塾
GOOD PROFESSOR

慶應義塾大学
経済学部

細田 衛士 教授

ほそだ・えいじ
1953年東京生まれ。82年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。80年慶應義塾大学経済学部助手。87年同助教授。94年より現職。この間83~85年英マンチェスター大学留学。博士(経済学)。環境経済・政策学会第1回学術賞(09年)。環境保全功労者賞(環境大臣より表彰06年)。廃棄物学会著作賞(06年)。

主な著作に『環境と経済の文明史』(NTT出版)『資源循環型社会―制度設計と政策展望』(慶応義塾大学出版会)『グッズとバッズの経済学』(東洋経済新報社)などがある。

「細田衛士研究会」(細田ゼミナール)のURLアドレスはコチラ↓
http://seminar.econ.keio.ac.jp/hosoda/root/top.html

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細田教授の研究室が入る「研究室棟」
慶應大三田キャンパス東門および「東館」

フィールドワークを踏まえた環境経済学

――今回登壇願う一生モノのプロフェッサーは慶應義塾大学経済学部の細田衛士教授だ。まずは、慶應義塾大学経済学部の特色からお聞きしていこう。

大きく3つほどあります。まず第1に、その学術分野の広さです。経済学研究を中心にした学部であることは当然ですが、その研究範疇は社会科学全般にまで広がっています。研究のコアである経済理論や経済実証分析に加えて、社会史や社会思想史などまで取り込んで研究しています。そのため学生は広範囲のことが学べることになります。

第2には、伝統的な経済理論や経済実証分析を学ぶと同時に、現実に生起している経済活動から学ぶことができます。これは本学の創始者・福沢諭吉が説くところの「実学」であり、世の中の現実に即した空理空論でない経済学を学べるということです。つまり経済学を知ることで、どう経済活動に日々関わっていけば良いのかがわかってくるようになります。

さらに第3には、やはり福沢諭吉の語る「独立自尊」の精神があります。だれかに指示されたから学ぶのでなく、自ら進んで学ぶということ。それを象徴する言葉として「半学半教」というのもあります。半分教えて、半分学ぶということ。ここでは教員も学生も個として確立された存在であり、互いに学び教え合う関係であれとも言っているわけで、その伝統をいまも継承し徹底しているのがまさに本学経済学部ということなのです。

以上の3点が慶應義塾大学経済学部の誇るべき特色ではないかと思っています。それをいま言えるのも、本学部が学生数・教員数ともに全国有数の規模であり続けているからでもあります。

キャンパス内に残る「三田演説館」
昼休みの慶應大三田キャンパス点描

「資源循環の経済学」のトップリーダー

――そう語る細田教授のご専門は「環境経済学」「理論経済学」だ。これらについても果たしてどんな学問分野なのか教えていただこう。まずは環境経済学(environmental economics)から。

環境経済学は、人類が直面している環境問題について経済学をツールにして分析し、問題解決に貢献する学問分野です。ですから分析のうえに立った政策提案・政策立案をし、その問題が解決されるまでに関わることになります。

――このカテゴリーにおける細田教授による研究テーマの「資源循環の経済学」は、この分野でわが国のトップリーダーの地歩を築いている。

わたしがライフワークにしているのは、各種の廃棄物の処理とリサイクル(recycle)、そして資源の循環利用についての経済的側面の分析です。理論分析と制度分析をしながら、具体的な政策提案をしていくというのが研究内容となります。

――かつて細田教授は「自動車リサイクル法」(05年施行)の審議委員をされていたとき、当時多くの経済界の反対を押し切って拡大生産者責任(extended producer responsibility、略EPR)の原則を認めさせたことでも知られる。

わたしの出身は理論経済学(Theoretical Economics)でした。だから、こうした実践的な政策提案においても必ず理論的に裏打ちされた説得力があるよう心掛けているつもりです。

――そうした理論派でありながら、その一方で細田教授は「最もフィールドワークをする経済学者」とも言われることがある。

多くの経済学者は研究室にこもりがちで、研究対象のはずの現場をほとんど見ようとしません。わたしも理論的裏づけはもちろん重視しますが、その一方でできる限り現地調査(fieldwork)をして自らの足で見て回わるようにしています。

とくに環境問題は、公表されている情報データと現実とに食い違いがないとは言えない分野でもあります。ですから現場に赴いて自分の目で確認し、それをフィードバック(feedback)し理論に反映させて、そのうえで政策提言をするように心掛けているのです。

このフィールドワークでは、廃棄処理施設やリサイクルプラントのほか、資源循環の観点から原材料を採掘する山奥の鉱山にまで出かけることもあります。「なんでも見てやろう」の精神をモットーにしていることは、それこそが他の経済学者と一線を画するところだと自負もしております。

――細田教授らの活躍もあってこの国の産業廃棄物問題はかなり改善されたとされるが、今後の課題は何だろうか。

90年代に最大6千万トンほどもあった産廃ですが、現在は約3分の1まで減量されております。そのうえでの課題といえば、リサイクルの量自体は増えてきましたが、(1)その内容が妥当かどうか(2)有害物質の管理徹底の問題(3)限りある資源を有効利用するために何ができるのか――これら3点になるでしょうか。

慶應大三田キャンパス点描

ハートをもってフィールドへ飛び出そう

――つぎに慶應義塾大学経済学部における専門ゼミ演習についてもお伺いした。

経済学部の専門ゼミは3~4年次の学生が対象です。わたしのゼミの定員は16人で、これは4人でのグループ活動を考えてのことです。入ゼミ希望者が定員を超えたときは、入ゼミ試験・リポート提出や面接によって選抜します。かなり厳しめの選抜方法といえるでしょうね。

ゼミの内容は、通年で「今週のトピック」とテキスト輪読をやっていきます。今週のトピックでは、その週に起こった経済問題1件を取り上げ、ゼミ生が解説するもので、解説ゼミ生は1週間ごとに交代していきます。

これらに加えて、春は環境問題についてのグループワーク、夏合宿ではグループワークの発表会や「1万字論文」作成・ディベート、秋には京都大学・一橋大学など5大学との「インゼミ」(あるテーマについてゼミ間で討議し競うこと)などがあります。

4年次は卒業論文の作成に集中することになります。そのテーマは環境問題にこだわらず経済に関するものであればOKとしています。しかし大半の人が環境問題に関連したテーマに取り上げていますね。

――あらためてゼミ生たちへの指導方針についてはこう語ってくれた。

ハートをもってチャレンジする人を育てたい――大局的にはそう思って指導しています。少しは無鉄砲でもいいので積極的にフィールドへ突っ込んでいき、取材してオリジナルのデータを集めてくるような学生ですね。そうした姿勢は社会に出てからも大切になるはずです。

そのためにもミクロ経済学・マクロ経済学および統計学の知識はきちんと身につけておくべきでしょう。その一方で、環境問題をはじめ社会経済の現実にも目を向けていてほしい。

さらには人間としての教養の重要性も強調しておきたい。そのためには何より読書をたくさんしなければなりません。できれば古今東西の映画や音楽にも通じるようになっていて欲しいですね。

こんな学生に来てほしい

まずは何ごとに対しても好奇心のある人。あらゆる物事に「なぜなんだろう?」と若者らしい素直な好奇心をもてる人ですね。
第2には、とことん考えることができる人。つまり好奇心を一度もったらすぐに他人に聞くのではなく、自ら身体を動かして自分の頭で考え抜くということです。
そして第3には、他の人とのコラボレーションですね。ときに見知らぬ誰かとディスカッションを闘わせてみる。あるいはチームを組んで行動を共にしてみることも必要となります。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。