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GOOD PROFESSOR

明治学院大学
法学部 政治学科

川上 和久 教授

かわかみ・かずひさ
1957年東京生まれ。86年東京大学大学院社会学研究科社会心理学専攻博士課程単位取得退学。86年東海大学部文学部専任講師。91年同助教授。92年明治学院大学法学部助教授。97年より現職。第6回大川出版賞。

主な著作に『情報操作のトリック—その歴史と方法』(講談社現代新書)『「橋下維新」は3年で終わる—民衆に「消費」される政治家たち』(宝島社新書)『「反日プロパカンダ」の読み方—歪められた歴史認識を正すために』(PHP研究所)などがある。

「川上和久ゼミナール」のURLアドレスはコチラ↓
http://www.meijigakuin.ac.jp/~kawakami/

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川上研究室が入る明治学院大「本館」
「ヴァーリズ広場」から「2号館」を俯瞰

心理学的ツールで迫る政治分析

――今回紹介するのは、テレビ・ラジオにおける人気コメンテーターとしての出演でもおなじみの明治学院大学法学部政治学科の川上和久教授である。はじめに所属する政治学科の特色についてお話しいただこう。

この学科には1年次から4年次まですべてにゼミがあるのが特色でして、1年次の「基礎ゼミ」で、自らの問題意識や課題について今後4年間どう学んでいったら良いかを徹底的に学習します。そして2年次以降の学習を深めていくわけです。

さらにはフィールドワーク(field work)に力を入れているのも特色といえます。政治学を学ぶうえで理論も大切ですが、それ以上に大切なことがあります。それは現実社会においてどんな政治的課題があるのか? その課題はどう解決していけばいいのか――それらをそれぞれの現場フィールドに立って身をもって体験していくことです。

たとえば選挙期間中の選挙事務所の仕事を体験してみる。あるいはダム建設反対運動の渦中に入ってみる。またホームレス支援団体の活動を手伝ってみる。こうした机上の講義などからは得られない貴重な現場体験、それを皮膚感覚で知ることが出来るようになっています。

政治学を皮膚感覚で知りながら学ぶことはとても重要です。さまざまな立場の人のベクトル方向があることを知るためにも、フィールドワークの大切さがいえます。

川上先生「情報メディア論」の講義風景
川上先生「情報メディア論」の講義風景

感情的な政治キャンペーンに踊らされない

――そう語る川上教授の専門は「政治心理学」と「戦略コミュニケーション論」だ。あまり聞き慣れないテーマではあるが……

政治心理学(political psychology)について別の表現でいえば「世論研究」となります。たとえばメディアの報道が世論や政治行動にどういう影響を与えるのかといったことについて、社会心理学(social psychology)の手法による研究が主なものです。

わたしはある新聞社との共同調査で、05年の総選挙(郵政選挙)においてテレビを日常的によく視聴していた人は自民党に投票し、09年の総選挙では民主党に投票した人が多かったという結論を得ています。あるいは13年10月の時点では、大半の大手新聞は消費税増税に賛意を表明する論陣を張りました。そうしたメディア報道が世論にどんな影響をもたらしているのか研究しています。

また「戦略コミュニケーション論」というのは、どのような政治的メッセージを大衆に送れば世論が反応するのかという研究です。古くはドイツ・ナチスが、一般に普及していたラジオを巧みに利用しました。アメリカのレーガン元大統領は、テレビ収録の時どの立ち位置に立って撮影されれば強さを印象づけられるのかまで研究したとされます。

とくに相反するグループ層を感情的に批判する政治的メッセージは世論を動かしやすいといわれます。冷戦後の東欧・中近東・アフリカなどにおいて、特定の勢力によるキャンペーンが繰り返されることで、それが事実かどうかに拘わらず、あたかも真実であるかのごとく人々の脳裏に根深く焼きついていくのです。これは中国・韓国などの反日キャンペーンと日本側の政府およびメディアの対応にも言えることです。

若い人に馴染みやすい例では先日の「AKB総選挙」がありました。AKB各メンバーはそれぞれの得票数を上げるために、歌やダンスでがんばったり、握手会などでのスキンシップに工夫したりと、これらはまさに戦略コミュニケーションそのものと言えるものでした。

――なるほど。ところでこうした戦略コミュニケーションは今後どう変わっていくのだろうか。

今この国において人々の世論や政治行動をリードしているのは圧倒的にテレビです。やがてインターネットがリードする時代が来ると思いますが、いまのように真面目な課題をシリアスに訴えても国民の関心は呼ばないでしょう。ネットを使ったメッセージに人々がワッとアクセスしてくるためにはどんな方法が有効なのか、それが今後の課題になりますね。

初夏を迎えた明学大白金キャンパス点描

一生モノの「市民感性」を研ぎ澄まそう

――つぎに川上教授の専門ゼミ演習について伺っていこう。

明治学院大学法学部政治学科の専門ゼミは3~4年次学部生が対象で、わたしのゼミでは例年各学年15人ほどを受け入れています。入ゼミ希望者はこれより多く、メンバーは選抜で選んでいます。その基準は、成績とエントリーシートに書かれた志望動機です。

ゼミでは「メディアと政治」をテーマにしています。今年度は、(1)原子力発電所の再稼動と脱原発問題が福島知事選に与える影響(2)普天間や集団的自衛権についてのわが国の安全保障――という2つを3年次のグループ研究の課題にしています。これらの問題はいま新聞論調もまっ二つに割れていまして、なぜ割れているのか、各新聞の意図はどこにあるのかなどを分析しています。

そうしたグループ研究での分析が4年次の個々の卒業論文につながることになります。ただ卒論のテーマについては3年次グループ研究のテーマにこだわることなく「メディアと政治」の範疇内であれば何をテーマにしても構わないことにしています。

――あらためてゼミ生たちへの指導方針についてはこう語ってくれた。

各自の感性を研ぎ澄ます訓練の大切さ、このことを繰り返し言っていますね。そこで各新聞の1面に掲載されているコラムを必ず読むように推奨しています。1面コラムは感性を磨く入り口なのです。つまりコラムには時事的なことから、いろいろな問題が凝縮されて書かれています。そんなコラムの書けるような人間になれるようゼミ生諸君には目指してほしいわけです。

さらには政治学科で学ぶからには、社会の現実を見ながら問題をどう解決していったらいいのか常に考えていてほしい。日ごろ街で生活困窮者を見ても「オレには関係ない」では政治学を学んだことにはなりません。それらを政治の力でどう解決していけるのか。自分は何ができるのか。一生モノの感性を磨いていると自然にその答えが見えてくるはずなのです。

こんな学生に来てほしい

大学生活で重要になるのは、一定程度の学力の下における本人の「やる気」ではないかと思っています。とくに政治学科で学ぶからには、社会の現実に目を背けずに、その解決のための自分なりの視点をもつべきです。それを仲間の視点とぶつけ合ったり共有し合ったりすることも大事になります。そういうことが出来る人に来ていただければと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。