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GOOD PROFESSOR

東京理科大学
大学院 理工学研究科 工業化学専攻

関 陽児 教授

せき・ようじ
1960年千葉県生まれ。1982年東北大学理学部地学科卒。2002年秋田大学大学院鉱山学研究科地球工学専攻博士課程修了。2012年より現職。

おもな著書には『温泉科学の新展開』(ナカニシヤ出版)『土壌生成と重金属動態』(博友社)などがある。

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関研究室がある野田キャンパス3号館
東京理科大学野田キャンパスの正門

地中資源の秘密に迫る「水文地質学」

――今週は東京理科大学大学院理工学研究科(学部において理工学部その他を担当)の関陽児教授にご登壇ねがうことにした。まずは理工学部の特色からお聞きしていこう。

理系の純粋科学を追求する理学部本来のマインドと、その応用研究のマインドを、教員スタッフも学生も共有し合いながらより良いものを目指していこうというのが本学部の特色といえるでしょう。わたしが理工学部において教えているのは「地学1」です。

地学は「天文」「気象」「地質鉱物」の3つに分かれますが、わたしの担当は、専門である地質鉱物分野の講義です。同様に「地学実験」という科目もあるのですが、これも地質鉱物の関係部分が担当になります。

――この地学実験の授業というのが関教授独特の、実に興味深い内容らしい。

地質鉱物の実験では、鉱物や岩石そのものに触ることが何より肝要です。叩いたらどう割れるか、どんな臭いがするのか鉱物そのものを感じてもらいます。岩塩を粉末にしてなめれば、文字どおり美味しい塩の味がすることを体験してもらいます。さらにアルキメデスの原理(Archimedes' principle)を応用して、水を張ったビーカーに鉱物や岩石を入れて、宙づりにした状態と、着底させた状態との重量の違いによって密度を求めるといった基本的な実験もしています。

二酸化ケイ素の結晶である石英(quartz)の硬さなども実験で体験できます。鋼鉄製のヤスリで石英を削ってみると、多少は削れたように見えるのですけれど、機械的な衝撃で割れることはあっても削れることはないんです。逆にヤスリが石英に削りとられてヤスリの表面がガタガタになり、次第にヤスリ自体が丸くなっていってしまいます。このように、実験して初めてわかることをどんどん体験してもらうわけです。

――この実験講義に対する学生たちの反応については……

東京の神楽坂キャンパスに通っている、理工学部以外の学生にとってこの実験集中講義は、わずか3泊4日をやると半期分の単位が取れます。ただし朝9時から晩飯の後までビッシリで、先生によっては夜10時過ぎまで丸1日カンヅメ状態になる、なかなかタフなコースです。そのなかで地質鉱物の野外実習もあり、丸一日かけて新しい地層や古い地層、鉱物や化石の観察をします。

うちの大学の学生は理科に興味を持っている子ばかりなので、実物に触れるチャンスを提供すると大抵は興味を示してくれますね。鉄と硫黄の化合物である硫化鉄(ron sulfide)は非常にありふれた鉱物なんですけれど、それを強く叩いてやると独特の腐臭というか温泉の硫黄のにおいがします。あまり良い匂いではないのですが、楽しそうに嗅いでますよ。

また、チャートという硬い岩石を鉄製のハンマーでこするようにして叩くと、赤熱した鉄片が飛び散って火打ち石と同じ現象を見ることができます。これなんかは、教室を暗くしてやらせるとなかなか盛り上がりますね。

関教授が実験で使用する鉱物の標本群
東京理科大野田キャンパス図書館

フィールド調査で見えてくる地下鉱物の様子

――こう語る関教授の専門分野は「水文地質学」だ。

水文地質学(hydrogeology)とは、地球の地殻を構成する土壌や岩石に含まれる地下水の振る舞いおよび分布を対象とする、地質学の一分野を指します。わたしの研究の軸をひと言でいうならば、地層や岩石と水とが関わり合ういろいろな自然現象ということになります。身近なところで言えば温泉や地熱などについて研究しています。

どろどろに溶けた岩石(マグマ)が地下深部に存在する地域では、地下水も岩石も温度が増加していきます。たとえば地下2000メートルで300度くらいになることもあります。そうやって温度が高くなればなるほど、水と鉱物との化学反応の速度が指数関数的に上がって、いわば石が「腐る」んですね。鉱物が水と反応して水とくっついちゃったり水に溶け出したりして、変質鉱物(変質帯)というものになるわけです。

変質帯を生じるような場所では、地下深部の高温のマグマと、地層や岩石中の割れ目や隙間、それと地下水とが程よいバランス状態にあると、高温の蒸気の貯留部が生まれます。そこを狙って井戸を掘って高温高圧の蒸気を取り出してタービン・発電機を回すのが地熱発電なのです。そこで地表や、少しだけ穴を掘ったときに取り出した岩石がどういう変質をしているかその状態を調べて、地下に地熱資源が存在するかどうかの評価に役に立てていくわけですね。

――さらに直近の研究テーマについては……

石油や天然ガスの資源探査をするときに地べたを歩くと、ぷくぷくと泡が出ていたり、川沿いに油が染み出ていたりすることがあります。地下深くにあるものが地層や岩石の割れ目を伝って少しずつリークしてくる現象ですね。そういう状況が観察できる場所で、地下のどういうところから流体が上がってくるかといった調査をしています。

地下から流体が染み出てくるキッカケは、いろいろな条件が重なっての異常高圧(overpressure)です。石油というのは、地下に密閉構造があるからこそ原油が存在しているのです。密度の小さい物質ですから、密閉された構造でないと少しずつ染み出ていってしまい、油田(oil field)という形での保持リザーブができない。

石油が閉じ込められているのに、密閉構造に不用意に穴を開けると、暴噴(blowout)といって高圧の原油やガスが勢いよく噴出して制御できなくなる事故が起きることさえあります。2010年に起きた「メキシコ湾原油流出事故」などはその典型です。

――このほか関教授は「地球化学基本図作成手法」や「高レベル放射性廃棄物地層処分の安全規制支援」についても研究を進めているという。最後に、受け持つゼミ演習のこともお聞きしておこう。

卒業研究の学生が3〜4人ほどいて指導担当しています。その学生たちとは今年の夏ごろまで週2回勉強会をやってきました。いまは基礎データを取る段階なので、学生たちといっしょに現場に出かけて、川の水を中心に現地調査をし、採ってきたサンプルを分析する段階となっています。

東京理科大野田キャンパス点描
野田キャンパス最寄りの東武「運河駅」

こんな学生に来てほしい

「汚いのを気にしない人」などはすごく良いですね。泥だらけ埃だらけになることが普通ですから。自然と触れ合うことが楽しくて仕方がないというような、自然児が良いですね。野外調査に行くときなどは、トイレがないところでも気にしない人だとなお良いですね。あ、でも普通はみんなちゃんとトイレしていますよ(笑い)。たとえ都会で自然と縁遠い生活を送ってきたとしても、自然に囲まれると嬉しい気持ちになれそうな人。そういう学生なら十分にやっていけるだろうと思います。

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。