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GOOD PROFESSOR

電気通信大学
電気通信学部 人間コミュニケーション学科

福田 豊 教授

福田 豊(ふくだ ゆたか)
1947年生まれ。
東京大学・大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。80年代に社会科学の学者としていち早く「情報化」に着目し、研究を始める。電気通信大学・電気通信学部電子情報学科助教授を経て、現職。

主な著作に『情報化のトポロジー』御茶の水書房、『情報経済論』(共著)有斐閣、がある。
福田研究室のホームページ http://www.fukuda.hc.uec.ac.jp/

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使い方次第で社会を根底から覆す!?

キャンパスの改装工事も進み、新しい校舎もかなり見かけた

わずか20~30年前、待っていればロボットやコンピュータが豊かな未来を連れてくると思っていた。いや現在でも、多くの人がそう思っているのかもしれない。2000年の流行語大賞に選ばれた「IT革命」という言葉には、IT(Information Technology=情報技術)がもたらす未来への期待が、素直に表れている。

しかし現実はどうだろう? コンピュータも買ったし、インターネットも使っている。しかし喧伝されていたほど暮らしやすくなったとも思えないのだ。いったい「IT革命」や「情報化」は何をしてくれるのか、と疑問に感じる人も多いだろう。

「情報技術の発展が社会全体に大きな影響を及ぼすことは、理解され始めています。ただ個別の分野が騒がれるだけで、全体的な社会の動向は見えにくくなっているのです」と説明してくれたのは、社会科学的な見地から「情報化」を研究し続けている、電気通信大学の福田豊先生である。  

例えば、eコマースと呼ばれるインターネット上の電子商取引が脚光を浴びたり、音楽や映像を編集できるパソコンが注目されても、社会全体にどんな変化が起こるのかは見えてこない。IT自体が大きな影響力を持っていても、これでは人々も変化を実感できないだろう。

「情報化による大きな変化の一つは、現代社会の持つ光と陰をそのまま増幅することです。例えば、企業が利潤を上げるためにITを導入したとします。うまくいけば競争力や生産性が向上するでしょう。ただし、これまでの社会構造、例えば競争社会や企業社会が変わらずコントラストだけが大きくなるので、企業間の競争は激化します。また弱者への配慮が欠けたり、経済的な採算の合わない部分の切り捨ても増えてきます。

しかし、これはITを『既存の関係のまま使う』場合です。ITは、知的活動一般を支える技術でもあります。そのため使い方によっては、社会を根底から覆らせることになります。すでにコミュニケーション分野では、いままでにない力をITが発揮していますから」

ITの新しい使い方

写真の正門は調布駅から徒歩5分。交通の便がいいのも嬉しい

一方、個人がホームページを立ち上げ、1日に何万ものアクセス数を記録した場合を考えてみてほしい。こうした人気ホームページの読者数は、規模の小さい月刊誌を超えてしまう。つまり人類史上初めて、個人がマスメディアと対等の力を持ったことになるのだ。これこそITの新しい使い方である。  

ITを使った情報発信やコミュニケーションの発展は、意外な影響を社会に与えている。例えばアメリカのアカデミー賞。かつては話題の大作ばかりが受賞していた同賞も、インターネットによる「口コミ」が宣伝効果を生み、近年、小粒ながら質の高い作品が選ばれやすくなってきているという。

お金を掛けて派手に宣伝しなくても良質のものが評価される。それはすばらしい! こんな調子でどんどん社会を良くしてほしいと、誰もが思うだろう。

だが、ことはそう簡単でもないらしい。

研究室の学生

「新しい価値を持った社会ができるためには、条件が必要なのです。ITの可能性だけを興味に任せて追及するだけでは、光と陰の増幅作用だけが残ってしまうでしょう。人々の主体的な問題解決につなげるために、努力しなければなりません」

地域住民とともに進める情報化

福田研究室のホームページ(http://www.fukuda.hc.uec.ac.jp/ )も見てみよう

だから先生は、ITを使って生活の質を高めるための実験と行動を始めた。ITの真の恩恵を、社会に普及させるためである。  

大学の地域住民に呼びかけ、地域の情報化について市民と一緒に話し合っているという。市民運動はもちろんNPOなどの活動もしたこともない一般市民、地域をもっと良くしたいと考えている市役所職員、そして福田ゼミの学生が参加者である。年齢も、性別も、職業も違う人々が実際に集い、あるいは電子会議室で議論をかわしているという。

「ITという切り口があったから、これだけ多様な人々に集まっていただけたのですよ」と先生は語るが、忙しい市民を集めるだけでも大変だったに違いない。いくらITが大きな可能性を秘めているとはいえ、実際に開花させるのは容易ではないのだ。ましてIT技術に慣れ親しんでいる学生だけが相手でもないのだから……。

それでもゼロから立ち上げたワーキンググループは、軌道に乗り始めている。 「学問研究というのは現実との緊張関係にないと、絶対に形骸化してしまいますから」  気負うでもなく先生は言った。 「老人介護の問題や子育ての悩みなど、ITは有効な解決手段を私たちに提供してくれるはずです」

先生の力強い言葉を聞きながら、本当の「IT革命」が起こるには努力が必要だと痛感した。

こんな生徒に来てほしい

自分で考えて、自主的に行動してほしいと思います。情報技術は、とつてもない可能性を秘めています。その可能性を新しい文脈の中で開花させられるように、一緒に研究しましょう。せっかく個人が情報発信手段を持つ変革の時期に立ち会っているのですから、積極的に関与してほしいですね

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。