早稲田塾
GOOD PROFESSOR

日本社会事業大学
社会福祉学部 福祉援助学科

佐々木 由惠 教授

ささき・よしえ
日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程修了。修士(社会学)・博士(学術)。日本赤十字の臨床看護師・助産師をへて、看護教育や介護職の養成にかかわる。介護保険施行後は、自ら「佐々木由惠事務所」を西東京市内に立ち上げ、訪問介護やグループホーム・デイサービスなどの普及・実践にも携わる。日本社会事業大学社会福祉学部准教授をへて、2012年度から現職。日本社会福祉学会・日本介護福祉学会・日本認知症学会・日本社会政策学会・日本地域福祉学会らに所属。

おもな著書として『介護現場における医療ケアと介護職の不安』(社会評論社)などがある。

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日本社会事業大学の正門付近

福祉の未来を構築できる人材育成を

――今週の一生モノプロフェッサーには、日本社会事業大学社会福祉学部の佐々木由惠教授にご登場願うことにした。まずは日本社会事業大学のことから教えていただこう。

この大学は福祉に特化した伝統ある大学です。戦後まもなく日本初のソーシャルワーカー養成の機関として誕生し、今年で創立68周年を迎えます。建学の精神としては「博愛の精神に基づく社会貢献・社会福祉の理論を窮め、社会福祉実践を大切にすること」「異なる文化・異なる民族・異なる国籍の人々とともに生きる社会の創設」などを掲げて、日本の社会福祉の発展に大きく貢献してきました。

こうした伝統が受け継がれ、将来の社会福祉リーダーの育成を目標とする「福祉教育のモデル校」と位置付けられています。また、私学でありながらも国の委託を受けた大学であるため、入学金や授業料が国立大学とほぼ同額で、全国から学生が入学してくるため学生寮などもあり、少人数教育が徹底しているのも特徴のひとつでしょう。

近年の福祉系大学の傾向として、看護大学のような職業系大学とは異なって、学生の職業選択の幅が多様化してきているなか、本校では卒業生の大部分が福祉関係の就職を選択していることも大きな特色といえましょう。また、本学は厚生労働省の委託機関であるため、原則すべての学生が社会福祉士の国家試験を受験することになっており、その合格率も全国トップレベルを維持し続けております。

――どのような学生が多く入学してくるかについては……

当事者研究や当事者によるソーシャルワークが大切であると、学生たちも教員側も考えていることもあって、さまざまな障がいを持つ学生が比較的多いのも本学の特徴のひとつです。また昨年度からは、聴覚障がい者にとって手話はひとつの言語であると位置づけ、第一外国語の入試において、英語試験の約5割を手話で受けられるような仕組みもできています。障がいを持つ学生のなかには24時間介護が必要な学生もいますし、視覚障がいを持つ学生、聴覚障がいを持つ学生、身体機能の障がいを持つ学生など、特別な支援を必要とする学生がいま20名ほど在籍しています。

このうち視覚障がいを持つ学生に対しては、講義資料やテキストをパソコンで送信し音声に変換し学習できるような支援体制がとられています。また聴覚障がいを持つ学生に対しては、手話言語学の第一人者である斉藤くるみ教授を中心に、授業中のパソコンテイクやノートテイク・手話通訳などを援助する「聴覚障がい者大学支援プロジェクト室」など、学業に支障のないような支援環境を整えております。

本学は、原則すべての学生が社会福祉士の国家試験を受験します。そのためには社会福祉実習が必須であり、障がいを持つ学生にもその特性に合わせて、実習教育研究・研修センターの教員が実習先を調整するなど、きめ細やかな支援をしております。また学生によっては、大学独自の給付金制度や奨学金を活用しながら、東京・清瀬という医療・福祉施設の多い環境を生かしつつ、福祉施設での夜勤アルバイトや障がい者への夜間在宅介護支援などの仕事をしながら、学費や生活費をまかなう者も少なくありません。

こういったアルバイトの求人先は脈々と先輩学生から後輩へと受け継がれている部分もあり、学外でも学年の枠を超えた交流となっているようです。サークル活動も、障がいを持つ人と交流する活動や、手話サークル、福祉の問題を深める研究サークルなど、福祉ボランティア的な活動グループが圧倒的に多くなります。こうして大学で知識や理論を学び、実習やアルバイトなどを通して福祉・介護の実践を早い時期からやっているのも本学らしいところかも知れません。

本社会事業大キャンパス点描

福祉職として一生モノの醍醐味を学び尽くす

――介護福祉養成機関も数々あるなか、日本社会事業大学社会福祉学部福祉援助学科が目指すところは……

いま世界的に少子高齢化が進み、とくに日本では団塊世代が後期高齢者を迎える2015年までに、さらに100万人の介護職を生み出していかなければならないと叫ばれています。介護保険制度導入により「介護の社会化」を実現させた我が国の国民にとって、介護サービスはだれにとっても高齢期における重要なライフラインのひとつ。その主な担い手である介護福祉士となるため、(1)4年制大学での養成(2)短期大学での養成(3)専門学校等での養成、また介護職・ヘルパーとなるためには誰にでも受講できる(1)実務者研修(2)初任者研修――など複数のルートが存在します。その一方で、多くの介護福祉士養成校では、学生を集客できずに閉鎖に追い込まれたり、2クラスを1クラスにして何とか事業継続したりと窮地に立たされるという厳しい状況にもあります。

一方で、社会福祉士の学習をベースにする本学において、さらに介護福祉士のコースを選択する学生の傾向としては、「親が在宅で介護をしていた」「身近に障がいを持つ人がいた」「中学や高校の授業の一環で介護施設を訪問した」「夏休みなどに支援の必要な人たちへのボランティア活動をする機会があった」――といった体験がキッカケとなった人が圧倒的に多いようです。もっと福祉・介護を学ぶ学生を増やすためには、いかに早い時期からの介護やボランティアの体験が重要であるかがうかがわれます。

現在150万人とも言われる国内の介護職数のうち、4年制大学を出ている介護職はわずか1%と推定されます。本学福祉援助学科では、介護職として将来のリーダーになれる力を備えた人材育成をめざしております。その誇れることとして、福祉にとって重要な、人権意識の高い人材を育成し社会に供給してきたという自負もあります。

また本学の大きな財産のひとつとして、1946年(昭和21年)創設以来、全国さまざまな福祉関連分野に優れた見識を有する同窓生が多数活躍しており、実習や就職の際にも大きな力となってくれることも特筆ものでしょう。学内にも同窓会が置かれ、就職などで各出身地へUターンするような場合にも、それぞれの地域の同窓会が大きな力となってくれるはず。これらは日本屈指の福祉伝統校だからこそだと思いますね。

――今この時代において福祉を学ぶ意味については……

少子化や核家族化に伴い、祖父・祖母などの高齢者や小さな子どもたちと接する機会が家庭生活において少なくなるなか、自らの仕事を通して多様な年代の人たちと関わることができ、社会のなかで日々起きている様々な生活問題等に向き合い、そうした深刻な問題がなぜ起きるのか、その問題解決のためにはどのような制度や専門家とかかわることが必要なのか、こうしたことを思考し実践に移しフィードバックしていく――そうしたことが自らの力でできるのは福祉専門職ならではの醍醐味ではでないでしょうか。

そのためには自身を客観視できる力が必要であり、本学における4年間のソーシャルワーク演習や講義・実習を通すことで、自らを知り高めていくことが可能です。また、こうした学びの経験は、たとえ福祉関連の仕事に将来つかないとしても、社会の荒波を生き抜いて良好な対人関係を構築するうえでも大いに有効な一生モノの宝となると信じております。

本社会事業大キャンパス点描

国試合格だけでなく福祉リーダーをめざそう

――佐々木教授の日本社会事業大学における講義内容については……

元々わたしは赤十字の看護師・助産師でした。助産師として取り上げた子どもは1000人を超えますが、そのなかには先天性の障がいを持って誕生する赤ちゃんもいて、その両親の養育支援のために自主的に家庭訪問をするようになります。また慢性期疾患の病棟では入退院を繰り返す患者さんが多く、私たちの退院指導がどう生かされているのか疑問を感じるようになり、日々の生活実態を知るために、地域に出て訪問看護の仕事もしました。また介護保険制度もまだない時代でしたが、行政による福祉サービスだけでは賄いきれない部分を埋めるため、第三セクターである福祉公社を立ち上げるなどしてホームヘルパーの育成にも力を注いできました。当時はまだ普通の主婦からホームヘルパーという仕事に就くのは抵抗感や偏見が残る時代で、地域のなかで家庭介護の学習会などを地道に開催するなどして一緒に働く仲間を1人・2人と増やしていきました。

そんな体験をへて介護労働の課題に突き当たり、大学に戻って介護労働問題をテーマに博士論文をまとめました。その後は地域の介護職の皆さんからいっしょに働く場がほしいという要請もあり、グループホームやデイサービス・訪問介護などの事業所を立ち上げます。またその一方で、看護大学の教員ともなりましたが、最後は優秀な介護職を本格的に育成したいという思いで本学に赴任し、今年度で5年が経過しています。

本学「介護福祉コース」の学生には「介護技術」「介護実習前後の教育」「施設での介護実習」などを担当。このほか学部生・大学院生の「ゼミ演習」や「老人福祉論」なども教えております。このうち「老人福祉論」では、高齢者を取り巻く諸様相や高齢者を取り巻く諸問題、たとえば「多重介護」「老老介護」「認知症の介護」「ターミナルケア」「孤立・孤独死」「高齢者虐待」「介護殺人」「介護労働」――などのテーマを取り上げて、学生とともに各問題の根源や対応方法・制度限界などについて多角的にとらえつつ考えていく授業を展開しています。

大学での学びは、国家資格を取得することも目的のひとつではありますが、学生一人ひとりが自ら問題を発見し、解決方法を多角的な視点で考えていく力を養うことが最も重要です。日本における今後の人口推計を考えるとき、ますます労働生産人口が減少し、一層の高齢化が進行していくのはほぼ確実。そこでの介護の担い手は外国人労働者の力を借りなければ充足できないとも考えられます。そうした時代を背負う学生たちには、本学の建学の理念にもあるように共生社会のなかで福祉専門職のリーダーとしての役割を果たすことを大いに期待したいですね。

そうした個人的な想いもあり、毎年春休みには学生たちを連れて、フィリピン共和国のダバオという町へスタディーツアーに出かけています。高齢者介護の現場や孤児院への参加型訪問、大家族の暮らしぶり、介護教育の実態、目に見える深刻な貧困問題などを見聞し、真の豊かさとは何かについて考えたり、現地で働く日本人のソーシャルワーカーと活動をともにしつつ福祉ニーズの多様さに触れたりしています。

こうした海外での体験が、これから学生たちが歩む長い職業人生のなかで直面するかもしれない窮地の場面において、途中で投げ出したくなったり苦しくなったりしたとしても、福祉の仕事はどこに行っても必要とされていること、自分を生かす場は世界のどこにでもあるということ――そういうことを思い出してもらい、さらに前へと歩いていく気持ちになってくれたらいいなぁ、そう願っております。

こんな学生に来てほしい

毎年迎える新入生の多くは、対人援助を通して人々の役に立ちたいと思っている学生がほとんどです。福祉の分野も学際的な広がりを見せています。他者を支援するために自らを成長させたい、福祉を通して地域社会を良くしたい、具体的によくわからなくとも何か人のために役立ちたい――こうなふうに思っている人たちにとっても、本学にはさまざまな学科・コースが準備されていますので、きっと関心のあるものを見いだせると思いますよ。

本学に入学したての1年生のころに「この大学で良かったのかなぁ」なんて思い悩んでしまうような学生たちも、みんな2年生ごろになると「この大学で良かった」、3年生になると「この大学が好き」、4年生になると「この大学で学べて本当に良かった」と変わっていく姿が多くみられ、それがわたしの喜びでもあります。まずはオープンキャンパスにお出かけください。お会いできる日を心からお待ちしております。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。