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GOOD PROFESSOR

東京工科大学
工学部 応用化学科

西尾 和之 教授

にしお・かずゆき
東京都立大学大学院工学研究科工業化学専攻修士課程修了後、コニカ株式会社(現コニカミノルタ株式会社)に入社。東京都立大学工学部材料化学コース助手、首都大学東京都市環境学部分子応用化学コース准教授、東京工科大学コンピュータサイエンス学部コンピュータサイエンス学科教授を経て、2015年度より同学工学部教授。専門は材料化学、電気化学、無機ナノマテリアルの創成とデバイスへの応用。

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西尾教授の研究室が入る片柳研究所

新設の工学部でナノの世界に挑む

――今回は、東京工科大学に2015年度新設となる工学部で、ナノマテリアルの創成に取り組む西尾和之教授を紹介する。ナノマテリアルは、肉眼では到底見ることのできない微細な構造をもつ材料で、様々な分野から注目を集めている次世代素材だ。その中でもとくに西尾教授が研究しているのは、金属の表面処理、とくに金のアノード酸化について。どのような研究なのか、お話を伺った。

私は金属加工の中でも表面処理を主題として研究を進めています。アルマイトという言葉をご存知でしょうか。アルマイト処理とは、アルミニウムを陽極にして電気分解し、表面を硬い酸化皮膜で覆って錆びにくくする技法です。アルマイトは日本で命名されたものですが、この技術は100年を超える長い歴史があります。現在はアルミサッシをはじめ、アルミニウム製品の表面処理に幅広く利用されています。

アルマイト処理でできる酸化膜には、ナノスケールの細長い穴が無数にできています。この穴は通常、不揃いなものです。しかしこれを規則的に並べると、様々なものに応用できる可能性があります。例えば、穴が規則的に配列した酸化膜を基板として光の回路を作ると、光ファイバーよりもずっと繊細で鋭角に光を通すことができますし、超高密度のハードディスクを実現させる素材としても使うことができるでしょう。細長い穴の一つひとつに磁石を詰めれば、1本の磁石が1ビットとして機能します。25ナノメートル間隔というレベルで作れれば、1平方インチ当たり1テラビットもの情報量を誇ることになります。読み書きする技術が追いついていないので、そういったハードディスクが実現するにはまだ時間がかかるでしょうが、原理的には可能なのです。このような、アルミニウム酸化膜にできる穴の規則配列に関する研究を、首都大学東京の益田研究室で益田秀樹先生を筆頭に進めてきました。

「アノード酸化」とは、金属を酸化させてその表面に何らかの構造を作る方法ですが、私は金のアノード酸化の研究も行っています。アノード酸化に使われる金属はこれまで、表面が自然に酸化される金属(アルミニウムやチタンなど)に限られており、それが常識でした。私は金でもアノード酸化が可能である事を見つけ、最近はこの研究に注力しています。金は金属の状態が安定していますので通常は酸化されませんが、陽極にして電気の力を利用すれば表面が酸化されます。これまで酸化金の形成に関する研究は行われてきましたが、私は酸化反応を続けることによってナノスケールの微細な穴が成長する事を見出しました。この成果は、歴史のある化学系の論文誌『Angewandte Chemie』に『Hot Paper』として掲載されました。

緑が美しい八王子キャンパスは約38万㎡と広大

酸化の技術が導く省資源化への道

――工学部の教育の柱の一つに「サステイナブル工学(持続可能な社会を実現するための実学)の追究」とある。西尾教授の研究は、持続可能な社会へどのように結びつく可能性があるのだろうか。

アノード酸化の特徴のひとつは、容易に金属表面の加工ができるということ。ナノスケールの加工は本来かなり手間暇のかかるものですが、アノード酸化では、電解液に浸した面にナノスケールの構造が出来上がります。また、金のアノード酸化はクエン酸水溶液中でも可能ですので、極めて環境に優しい技術です。高額な機械や複雑な工程を必要としないシンプルな技術を提供することができれば、ナノテクノロジーは確実に普及することでしょう。現在は細孔の成長挙動や酸化皮膜の物性に関する研究が中心ですが、応用についても検討を始めています。なお、アノード酸化によって得られる多孔質構造により金属の表面が微細化すれば、表面積が飛躍的に増大します。電極として使用する際、大幅な省資源化が可能になるのです。環境に優しい金属加工技術と、それに伴って得られる物質、どちらもサステイナビリティに貢献できると考えています。

インターンシップよりはるかに密な産学連携で就業力の強化を

――工学部には「独自のコーオプ教育」という柱も。聞きなれない言葉だが、どんな教育法のことだろうか。

コーオプとは、Cooperative Educationの略称です。通常のインターンシップと違い、お給料をもらって企業に勤務します。本学のコーオプ教育は大学と受け入れ先が共同で実習プログラムを作成し、2年次後期または3年次前期に約8週間、全学生にみっちり実習プログラムをこなしてもらいます。そして、最後に学生が実習レポートを提出することにより単位修得(8単位)となります。あらかじめ就業体験を組みいれたカリキュラムになっていることで、学生は必要な授業に出られないといった悩みを抱えることなく、安心して就業体験に集中できるのです。学外に出て、初めて知る自分の強みや弱みがあるでしょう。その気づきが学修と研究への意欲を高め、就業力の強化につながるものと期待しています。

一般的な大学では4年次から研究に取り組みますが、我が大学では3年次の後期に研究室の配属を決め、「創成課題」で研究の準備を進めていきます。こうすることで、4年次にスムーズに研究に着手できる様にしています。ですから2年次後期または3年次前期は、自分の方向性を模索する重要な時期です。コーオプ教育での貴重な就業体験を、研究室の選択やその後の研究、就職へ最大限に生かしてもらいたいですね。

――コーオプ教育を導入している大学はほかにもあるが、工学部の全学生(約300名)が必修で行う取り組みをしている例はほかに見ないとのこと。新設工学部最大の特長といっていいだろう。

他大学に先駆けてこれだけのコーオプ教育の取組が可能なのは、一昨年の春休みから、長期休暇の度にコーオプ実習の試行を行ってきたからです。昨年の夏までに4回、累計50名、また現在もさらに15名の学生が本番さながらの試行に参加しています。これにより、実際に学生が企業でコーオプ実習を行った時の課題や学生にどのような学修上の効果があるか、また企業にはどのような受入メリットがあるかなどをつぶさに把握することができています。幸いこれまでの試行では、概ね受入企業の評価も「実戦力として学生を使えた」「学生からの刺激で職場の活性化につながった」など高いものでした。

一方、試行に参加した学生からも、これから大学で学修する上でリアルなニーズがわかって役に立った、今後の就活への自信につながったなど、有益だったとの評価が多数を占めました。国も昨年4月に「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」という新たな方針を出しており、その方針を地で行く本学の取組に大変注目しています。その意味でも、今回の日本初の試みをぜひ成功させなければならないと考えています。

こんな学生に来てほしい

「世界初」の事を行う研究活動の喜びと価値を理解してくれる学生に来てほしいです。世界初の成果を出す事はそう簡単ではないので、捉え方によっては、研究が苦しいだけの作業になってしまいます。そんな状況を支えるのは、やはりモチベーションだと思います。また、オンとオフの切り替えがしっかりしていて、研究に取り組む時には五感を駆使して集中できる人も素晴らしいです。中には、はじめから要領良く済まそうとする人もいるのですが、要領の良い研究は、集中して研究に取り組み続けた結果として身につくものだと思います(私自身、その領域に到達していません)。3年次後期の創成課題から研究に関わることができる当大学は、客観的に見ても、焦らず、深く研究に向き合える良い環境にあります。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。