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GOOD PROFESSOR

東京工科大学
工学部 機械工学科

大山 恭弘 学部長・教授

東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了後、アドバンスト・コントロール・ラボラトリ(株)取締役にて、産業用ロボットコントローラ、NCコントローラ、制御工学学習機器の開発に従事。平成3年に東京工科大学に着任。イリノイ大学客員研究員。

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ロボットの機構を学ぶ学習機材
学生がタイムトライアル競う廊下
かなりの直線距離だ

人に合わせて変化するロボットをつくる

――人間と機械が協調し共存する機械システムの開発を目指している、東京工科大学工学部の大山恭弘教授。人がロボットと共存するためには、人の動きを解析することが必要だという。大山教授も憧れた「鉄腕アトム」をつくり出すために、どんな研究を積み重ねていこうとしているのかを伺った。


私はアトム世代なんですよ。鉄腕アトムや鉄人28号をテレビで見て育ったので、大学でロボットをつくりたいと子どものころから思っていたのです。ただ、大学で工学系には進んだものの、ロボットの勉強はしませんでした。制御工学という分野で、ロボットの手や足を動かす理屈を学んでいたのです。

研究室を選ぶときも、ロボットではなく、コンピュータでラジコンのヘリコプターを飛ばす研究室を選びました。当時の技術ではうまく飛びませんでしたが、面白かったですね。

ところが就職するときに指導教員がロボット企業との共同研究を始めて、ロボット製作のための子会社を設立したのです。私のロボットづくりは、その会社に入ったところから始まりました。

当時、産業用ロボットの開発が始まった頃でした。ロボットのベンチャー企業が次々に設立されたのです。私達の会社は新しい制御技術を使ったロボットの開発を目指していました。2年後には親会社から独立。10人ぐらいの会社でしたから、開発、販売、メンテナンスとすべてを手がけました。おかげで仕事全体の流れを見ることができました。5年間、楽しかったけれど忙しかったですね。

そんなときに東京工科大学からお誘いがあり、大学で研究する側へ戻ってきたのです。今までの経験を活かして、実業でも使える知識を学生に教えたいなと考えていました。ロボットを動かすのに役立つ知識や技術をしっかり伝えたいと思ったのです。

大学に戻ってしばらくは、産業用ロボットの高性能化を研究していました。ところがロボットが進化すればするほど、製造現場で労働者がいらなくなってしまう。それは違うと感じました。やはり人が活躍し、その補助をロボットに任せるのが望ましい方向性だろうと。

200名以上を収容する大講義室で
構成されている研究棟
吉野家、SUBWAY、ラーメン椿家などが入る
FOODS FUUのおしゃれな佇まい

動作から先を読んでアシスト

――ロボットと人の共存に向けた動きですね。それは鉄腕アトムに描かれているような世界ですが、どのような研究をするようになったのですか。


電動車いすの研究を始めました。電動車いすはスイッチを入れれば動くので便利ですが、脚を動かせる人が使うとますます脚を動かさなくなってしまいます。そこで電動車いすに自転車のペダルをつけ、脚の動きと連動するようにしました。ペダルを逆に回せばバックもできますし、上り坂ではペダルが重くなり、下り坂ではペダルが軽くなるようにもしました。また足腰の強さによって、ペダルの加重にも強弱をつけられるようにしたのです

あくまでも主体は人。機械に乗らされているのではなく、人が動かすロボットをつくっていました。

現在は、人の動きを検知してアシストするロボットを研究しています。キャスターのついた椅子をモーターで電動化し、人の動きに合わせて動かそうとしているのです。そのために座席の上とキャスターにセンサーをつけて、椅子を動かそうとする際のお尻や太ももの付け根の動きと椅子の動きの関連性を探ろうとしています。人のちょっとした動きから、先の動作を読み取ってロボットがアシストできるようにしたいのです。将来的には、人の手の動かし方から感情を推測できるようなロボットを開発できればと思っています。

また学習することで、個人の動きによりフィットするようなロボットをつくりたいと考えています。例えば椅子を動かそうとしたときに、足を横に動かしてから前に踏み出す癖のある人もいるでしょう。そうした癖をロボットが学習すれば、よりスムーズにアシストができるようになりますから。

現在、センサーをあちこちにつけて、大量のデータを収集しています。最近のコンピュータは、大量のデータから一定のパターンを解析することができます。このビッグデータ解析の応用によって、人の動きを数値化する糸口をつかみたいと思っています。


――研究室の学生には、どのようなことを学んでほしいと考えていますか。

研究室には3年の後期から所属するのですが、卒業研究の前の基礎講義として、今年はモーターとタイヤを学生に配り、4人で1台の四輪駆動車をつくるよう指示しています。教授室前の廊下でタイムトライアルを実施して、端から端まで一番早いタイムで走りきったチームの優勝です。

学生は4つのタイヤを同期させることに頭を悩ませています。でもタイヤは完全に同じ大きさではないですし、廊下でタイヤの1つが滑ることもあるでしょう。そうなるとまっすぐには進みません。その防止のためには、壁が近づいたら曲がるような機構が必要になります。

ところが学生はそこまで考えないし、テスト走行もしないんですね。頭で考えているからです。この課題で、問いに必ずしも正解がないことを学生は知ることになります。企業で仕事をするということは、そういうことですから。

メディアセンターと図書館の入る建物
「サステイナブル工学」は3つのシステムを
満足させる工学技術

持続可能な社会を目指す工学

――東京工科大学は今年(2015年)4月に工学部を設置したわけですが、その特徴を教えてください。

工学部には、基幹学問を学べるよう機械工学科・電気電子工学科・応用化学科の3学科を設置しました。そして持続可能な社会の実現を目指す「サステイナブル工学」という新しい工学を学べる学部としています。

「サステイナブル工学」は、つくるだけではなく、使い終わってからどうするのかまで考える学問です。産業システム・環境システム・人間システムの3つがすべて満足する物づくりをする必要があるのです(図1参照)。環境だけに力を入れて、極端に不便になったり、産業がつぶれるのでは困ります。

サステイナブル工学は、まだ研究途上で正解はありません。ただ、原料を採掘し廃棄するまでに二酸化炭素をどれだけ排出するのかといった環境負荷評価「LCA」※を活用することは可能です。

本学部では、2年次の前期にサステイナブル工学の考え方を学びます。ここでLCAの評価のやり方も勉強し、3年の後期に3学科合同で少人数のチームを組んで課題製品の二酸化炭素の排出量を分析し、改善に向けた話し合いをしてもらいます。応用化学科の学生からはプラスチックの改善が、機械工学科からはリサイクルできる構造の話などがでるかもしれません。その原料の産出から廃棄まで含めた商品サイクルを、各学科の立場から議論してもらう試みです。

これは3学科の学生が協力して行わないと意味がありません。そのため学科ごとの縦割りではなく、1年のときから各学科が友達になれるよう環境を整えています。

また全学部生に約8週間の就業体験を課すコーオプ教育も実施します。仕事がどんなもので、大学で学んだ何を活かせるのかなどを、学生が体験する貴重な機会となるはずです。

こんな学生にきてほしい

ロボットを動かすには、理論、コンピュータ、機械、電気、センサーの全てを組み合わせる必要があります。卒業研究でも、このような要素を組み合わせることになります。そのため、なかなかうまくいきません。

だから失敗を恐れないで、果敢にチャレンジする人に来てほしいと思います。うまくいかずにがっかりするのではなく、対策をどんどん考えるチャレンジ精神のある人を待っています。




※LCA:ライフサイクルアセスメントの略。製品やサービスの環境への影響を評価する手法のこと

公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。