早稲田塾
GOOD PROFESSOR

千葉大学
工学部 機械工学科

並木 明夫 准教授

なみき・あきお

1999年3月、東京大学大学院工学系研究科計数工学専攻博士課程修了、博士(工学)。2008年3月より現職

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並木先生の研究室がある
千葉大学自然科学系総合研棟2
人間の動きを認識し、その通りに動く
「マスタ・スレーブ型」ロボット

「器用なロボット」はいかにして作られるか

――つかむ、ひねる、つまむ、折る、投げる……普段何気なく行っている動作だが、人間の手指の繊細な動きをそのままロボットで実現するのは、とても難しいと言われている。そんな中、人間の筋肉の動きをそのままロボットに伝える技術や、ジャグリングを自律的に行う多指型ロボットの開発などを通して、ロボットの指の動きを人間に近づける研究をしているのが、千葉大学の並木明夫准教授。このたび、ロボット研究の難しさと面白さについて、詳しくお話を伺った。

ロボットには様々なタイプがあります。その中の一つ、人間の動きを認識し、その通りに動く「マスタ・スレーブ型」は、人の腕にチューブ状のセンサーをつけ、腕の動きを計算してロボットに伝える仕組みです。一方で、ロボットが見ているものも人間のほうに伝えられます。すると遠隔操作が可能になるため、人間が立ち入れないような危険な現場で活躍することができます。

従来のロボットは、歩くことや単純作業はできても、人間と同じように複数の作業をすることがなかなかできませんでした。例えば手がハサミ型になっているロボットは切ることしかできませんし、シャベル型なら掬うことしかできません。しかし人間と同じ機能を備えた手にすれば、ハサミを持ったりシャベルを持ったり、様々なことができるわけです。この能力は特に色々なことをしなければならない危険な現場、例えば災害現場などで有効です。日常的にも危険物や爆発物を扱うような場面はありますから、そういったところで活躍できるロボットを実現するために研究しています。

人の動きを真似るというと、簡単なように聞こえるかもしれません。しかし、人の動きをそのまま読むだけでは、ロボットのほうがわずかに遅れてしまいます。それでは使いづらいですから、同時に動くためには先を少し読むということをしなければなりません。また、使う人間側の体格や手の長さによって、反応を合わせることも必要です。

ロボットを操縦するために
腕にセンサーをつける
人間と対等に戦えるホッケーマシーン。
対戦する人間の動きを予測して
戦略を立てることができる

多くのロボットは目をつむって作業している

―先生は考えて動くロボットを研究していると伺いましたが……

人間の動きをリアルタイムで真似るのが「マスタ・スレーブ型」ですが、一方で、機械側が自律的に考えて動くロボットの研究開発も行っています。特に片手で2つのボールをお手玉するジャグリングを行うロボットは、発表するや否や海外でも話題になりました。ジャグリング専用の機械はあるのですが、人間の腕型ロボットを使って実現し、それを発表したのは初めてかと思います。

ジャグリングは、柔らかいボールを正確に受け取り、また正確に投げるということの繰り返しです。それには視覚と触覚を同時に使い、受け止め方と投げ方を補正しなければなりません。実は、今ある多くのロボットは、見ることと触ることを同時にできていないもののほうが多いのです。先に対象を見て、どう動くかをあらかじめ計算し、あとは目をつむって作業をする。それでは対象の動きを見ることができません。するとジャグリングはもちろん、折り紙を折ることもできないわけです。折り紙は折ったそばから対象の形が変わってしまいますから。実際、紙、布、紐など、形が変わりやすい柔らかいものを扱うロボットは実用化されていないという現状があります。

目の能力単体や反応速度そのものでみれば、今となっては人間よりもロボットのほうがはるかに優秀です。人間は見てから動くまでに0.2秒ほどかかりますから、通常はさっと見て、あとはどうなるかを予測して動いています。一方で私たちが開発したロボットハンドは、見るのに0.001秒、それに反応するのに0.001秒しかかかりません。まさに「目にもとまらぬ速さ」で正確に作業ができるわけです。

この高機能な目と腕と、あとは計算する頭の部分をいかに組み合わせるか。ロボットが能力を最大限に発揮できるよう、特に感覚と運動に関しては速度を上げていくことを現在の主な研究テーマにしています。人間を超えるような作業速度で、社会に役立つロボットを完成させたいのです。

ジャグリングができるロボット
折り紙ロボット。カドとカドをぴったり
合わせるだけでも難しいという

内から外から、ロボットを学ぶ

―どのような授業を担当してらっしゃいますか

私が担当している授業には3つの分野があります。制御工学、計測工学、ロボット工学です。

制御工学では、ものの動かし方を学びます。ロボットに限らず、自動車のエンジンはどう回っているのか、飛行機はどうやって飛んでいるのか、ハードディスクの読み取り装置をどう動かすかなど、動かすときの根本的な仕組みを学習する基礎的で重要な学問です。様々な機械がありますが、動かし方の原理は一緒。いろんなものに応用がききます。

計測工学では様々な物理量の測り方を学びます。ロボットを動かすためには、自分がどう動いているかをわからせなければなりません。世の中には様々なセンサーがあり、同じ力を測るのでもいろんな測り方があります。今でも発展し、まだまだ技術革新が必要な分野です。また、測ったときには必ずノイズが生まれますから、それをどう扱うかも学びます。統計学的な処理です。

ロボット工学は、ロボットそのもののメカニズムについて学びます。動きや仕組みを作る方法を深く掘り下げます。

―卒業研究についても教えてください。

4年生の卒業研究では、研究室にある設備を使って、おのおの違うテーマにチャレンジしてもらいます。ジャグリングや、人と対等に戦えるホッケーマシーンも、卒業研究から生まれたものです。同じロボットを使った研究でも、目の機能、手の仕組みなど人によってアプローチが違いますから、教え合って一つのものを作り上げることができます。多くの学生が、学部に引き続き大学院で研究を続けています。

こんな生徒に来てほしい

ロボットというのはまだまだ発展の余地がある分野です。新しいアイディアや技術を必要としていますから、熱意のある人はもちろん、新しいことにチャレンジしたい人、やりがいを求める人に来てほしいと思っています。

ロボットの魅力は、結果が確実に目に見えるところ。ものが動くか動かないかは一目瞭然で、偽造や改ざんはできません。非常にストレートに結果が見える反面、やっていることは人間の置き換えで、とても複雑です。何気ない動作でも、人間がいかに深いことをしているかを理解する、つまり人間を知るという側面もあります。

ロボットが、ひいては人間がどう動くかを知っていると、どんなところに就職しても活躍の場を見出せると思います。ロボットメーカーというのは数が少ないので、学生の多くは一般的な電機、機械メーカーに就職しますが、企業の内部でシステムを作るような、ロボットに触れない部署に入っても、実際にどう動くかを知っているのと知らないのとでは、確実に仕事の幅が違うと思いますよ。


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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。