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GOOD PROFESSOR

淑徳大学
看護栄養学部 栄養学科

桑原 節子 教授

くわはら・せつこ

1980年女子栄養大学栄養学部栄養学科卒業。東京、千葉、横浜などの国立病院で管理栄養士を務め、2007年から3年間、厚生労働省医政局政策医療課栄養専門官を併任。2010年より国立がん研究センター中央病院・栄養管理室長。2013年より現職

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桑原教授監修「減塩・適塩サポート弁当」の
第2弾、「若鶏のパン粉焼き弁当」。
9月頃には第3弾が発売予定。
看護栄養学部がある最新の設備が整う
千葉第2キャンパス

身近なところから日本人の食を支えたい

――からあげ弁当に、ソースたっぷりの焼きそばに、チキンやナゲット。おなじみのコンビニメニューもおいしいけれど、たまにはヘルシーなものを選びたい。内臓に疾患を抱えながら働く人であればなおさら——。

一食2グラムという理想の塩分量を実現した「減塩・適塩サポート弁当」をファミリーマートとともに開発したのが、今回ご紹介する淑徳大学の桑原節子教授だ。

桑原教授は長年病院で管理栄養士を務め、近年はがん栄養管理を中心に調査研究を行ってきた。減塩弁当に込めた思いと、「大事なのは知識だけでなく『この人を食の面からサポートしたい』という気持ち」と断言する教授の教育方針、授業の様子などについて詳しく伺った。

がん医療といえば入院しての療養を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、今や早期発見・早期治療のうえ、自宅療養、社会復帰が可能な時代になりました。つまりがんを抱えながら日常生活を送っている人は多いのです。そういった方や、内臓疾患、特に腎臓に疾患を持ちながら働く人は、塩分を控えるために自分で弁当を作らざるを得ない。しかし忙しい現代人ですから、弁当を作る時間のない日もあるでしょう。そんなとき、減塩をサポートできる弁当が身近に売られていたらどんなにいいか。そんな思いから監修に関わったのが、「減塩・適塩サポート弁当」です。

もちろん療養中の方ばかりではなく、ヘルシー志向の方、「夜は飲み会があるから昼は塩分を控えたい」という方、「適塩の味を知って自分の食生活を見直したい」という方にもおすすめです。食べにくさが不安であれば、お味噌汁をつけても健康な人であれば適塩の範囲ですから、好みに合わせた献立にしてもらえればと思います。

丁寧な調理が身につけるため見られることを
意識したガラス張りの調理実習室
必要な栄養量や食べ方の指導をする際、
食品の目安に使う食品サンプル

学生が自信を持てる授業を展開

――「日本中が健康的な食生活をするためには、利用者の多いコンビニからヘルシー志向を発信すべき」という桑原教授の考え方には、現場で培われた力強さがあり、説得力を持つ。そんな桑原教授の授業は、どのようなものなのだろうか。

私が教えているのは臨床栄養学です。長く現場にいた人間なので、化学や生物学などの基礎学というよりは、管理栄養士とはどんな仕事なのかを教えます。学生が就職するのは病院、介護施設、保健所など様々ですが、専門科目が始まる2年生から4年生にかけて、どんな現場でも実践部隊として働けるような知識とスキル、そして管理栄養士としての倫理観を身につけさせるのを目標としています。

その中で一つの要点となるのが、3年生に集中する学内実習・学外臨地実習です。特に施設へ実際に出向く臨地実習では、出先機関のドクターや室長とコミュニケーションをとりながら、実際に学修します。学生のためになり、なおかつ施設にも迷惑をかけないようにするにはどうしたらよいかを模索する日々です。病院などの施設は実習生のために何かを用意するわけではなく、生身の患者、利用者がいるわけですからね。そして大学側としては、学生を送ることによって、施設と協力した最先端の栄養管理の研究や考え方を共有するという役目も担っています。

最終的には、学生の糧になる実習ができれば最高です。実習に行く前は「病院は大変そう、私に務まるでしょうか」と不安がっていた子が、「実習に行ってみたら、とてもやりがいを感じました。病院を目指してみようと思います」などと言ってくれたりする。それはとても嬉しいことです。

授業では、こちらが一方的に教えるというよりは、学生が自信を持って自らプランを立てられるようサポートすることを心掛けています。それは、仕事に就いたとき、学生自身が患者に自分の価値観を押しつけることがないよう、という願いから来ています。病院の管理栄養士は、患者が自分の力で健康になれるよう応援する立場です。決して、患者自身の食生活や生活習慣を頭から否定してはいけません。その感覚を学んでほしいのです。

具体的には、例えばケアプランを考える授業では、一つの症例に一学年80人の学生が一斉にケアプランを立てます。80通りのケアプランが生まれ、その中身は一つひとつ違います。私はそれらを評価する際、あえて正解の幅を広げています。もちろんカロリーオーバーしたり、必要な栄養素が入っていないようなプランは不正解ですが、それ以外は理論が通っていればきちんと評価する。そのうえで、「合格点だけれど、100点とはいかないかな」「この年代の方の口に合う献立になっているかな」などと言い、学生自身に考えさせます。

学生は国家試験を受ける立場ですから、どうしても○か×かで評価してもらいたがりますが、現場には正解があるわけではなく、許容範囲が必ずある。その感覚をつかんでもらえれば、自分も許せるし、人も許せる人間になれて、結果的にどんな現場に行っても対人関係で失敗しないだろうと思っています。

デザインも好評な食品実験室
充実した設備の給食経営管理実習室

知識を使う心を育てる

――対象者の体調を改善させるためには、ケアプランでどんなことに気を付けるべきでしょうか。

ケアの方法は学べば誰でも理解できます。でも、それを対象者に還元してあげるためには、「この人をなんとかしてあげたい」という気持ちがなければ無理なんですよ。対象者に合ったケアプランを立てるというのは、人に対するそういう気持ちがなければ絶対に成り立たないんです。気持ちの入らないケアプランを立てても、罰せられることはないんですよ。でも、対象者の体調は改善しないでしょう。食の面からサポートするという強い気持ちとモラルが、面倒でも手間暇をかけてオリジナルのプランを立てるためには、絶対必要です。

そのモラルが、学生のうちに完成されるということはあり得ません。大学では種蒔きまで。あとは社会人となった学生自身が、肥料をやり、水をあげて自ら完成させるものなのです。

先生の共著の1つ。『大腸がん手術後の
100日レシピ—退院後の食事プラン』

こんな学生に来てほしい

私は現場でいろんな人を採用し、辞めてしまう人も続けられる人も、たくさん見てきました。言えるのは、成績がいいからといって現場で成功するとは限らないということ。管理栄養士の仕事をし続けたい、生きがいを感じるという人は、仕事で壁にぶつかったときに「じゃあ、どうすればいいか」と粘り強く考え、自ら解決策を導き出す力を持っています。そうやって情熱を持って続けていれば、必ずジャンプできる日が来る。

そもそも、自分の適性が見えてくるのは実際に仕事をしてみて、10年くらいたってからではないかと私は考えています。ですから、今から適性を考えて悩むより、「管理栄養士を目指してみたい」という気持ち、自分の情熱を大事にしてほしいです。



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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。