{literal} {/literal}
GOOD PROFESSOR

東京工科大学
コンピュータサイエンス学部

亀田 弘之 学部長・教授

1982年東京大学工学部卒業、1984年東京大学大学院工学系研究科電気工学専攻修士課程修了、1987年東京大学大学院工学系研究科電子工学専攻博士課程単位取得の上満期退学、同年11月工学博士(東京大学)取得。その後、東京工科大学工学部講師を経て現在に至る

  • mixiチェック
研究室で開発した感情を持つロボットたち
研究室で開発した感情を持つロボットたち

思考と言語をコンピュータサイエンスで研究

――亀田教授の研究室は「知的ソフトウェア創成研究室」と名付けられ、思考と言語をコンピュータサイエンスの側面から研究。さまざまな専門家と組んで、独創的な研究成果をあげていることで知られている。まず、高校生にもわかりやすい感情を持つロボットについてお伺いした。

私のつくったロボットは、他者の心を理解しながらの会話を目指して作られたものです。例えば運動会の日に、子どもに「今日は晴れてよかったね」と言うべきか、走るのが苦手だから「今日は晴れちゃったね」と言ってあげるべきかを、人は判断します。そうしたロボットを作るには、状況を判断して発言するプログラミングを組む必要があります。

このロボットは外部的な環境と内部的な感情や心の状況を、それなりに理解して話します。そのためロボットをいつどこに置くかによって対話の内容が変わってくるのです。

例えば「こんにちは」とあいさつすると、「こんにちは。今日は寒いね」と答えます。これはインターネットに接続し、リアルタイムにヤフーの天気予報を読み込み答えています。また、何度も時間をたずねると「何度聞いても同じだよ」と答えたり、悪口を言って怒らせると返答しなくなります。

究極的には、他者を理解して共感し、相手を癒やすことができるロボット作りを目指しています。ペッパー君が世界初の感情を理解するロボットとして話題になりましたが、じつはうちの研究室の方が先なんです。10年前からやっているので(笑)

――ロボットの反応をみると、状況をしっかりと把握しているように見えますね。

人間の側が、そのように感じるということです。コンピュータと人間が対応しているように見える。それは感情や状況を理解することの定義をどうするのかによって変わってきます。多くの人が感情を持っているみたいと感じてくれれば、それで実現できている。そういう評価法しか考え付かないので……。

コンピュータサイエンスとしては人間の高度な脳モデルは作れますが、人間の頭の中が本当にそうなっているのかは証明のしようがありません。結局、科学的な真実は何なのかという疑問に突き当たってしまうのです。

――コンピュータと人間が対応しているように見える、というのは?

刺激があって反応するという人間の対応を、コンピュータサイエンスでは、ある入力があったときに何らかの出力をする仕組みと考えます。それはオートマトン理論でできるはずのものですが、心の状態が有限個に限られているという仮定がつきます。

心が感情をいくつ持っているのか定めるのは難しいですよね。とりあえず喜怒哀楽から始めようとすると、辞書で50数個、医学的な研究で120を超えるともいわれます。研究室で作ったロボットは、喜怒哀楽プラス「ご機嫌パラメーター」で動いています。「ご機嫌パラメーター」は学生の発案ですが、学会では「面白いですね」と評判はいいですね。

このロボットのサブプロジェクトとして、会話をして人間を笑わせることにもチャレンジしていますが、そこはまだまだです。

認知リハビリテーション用ゲームソフトの画面
ロボットのプログラムの設計図

自らプログラムを書き換えるプログラム

――知らない単語を推測する人工知能の開発もされていると伺っていますが?

未知語ですね。通常のシステムは、知らない単語につまずいて動けなくなってしまいます。私が研究している人工知能は、「あっ、これ今までに知らなかった単語だ」と気づき、その単語はこういう意味なんだろうと自動的に推測して処理をします。また、知らない文法規則についても、自動的に獲得していくのです。論理学を使った推論システムです。

現在、多くの大学や研究所で行っている研究は、統計的な手法を使って未知語を推測します。ある意味では、サイコロを転がして決めるような手法です。それでもかなり近い回答は得られます。言語のあいまいな部分にうまくはまるからです。そうではなく、理論的にきっちりした推論システムの開発を目指しています。

逆に論理の枠組みの中の言語ですので、どんな文章を持ってきても処理できるというものではありません。そこで人間のようにどんどん賢くなっていくシステムも開発しています。従来の人工知能は知識を増やしましたが、プログラムがプログラム自身を効率のよいやり方に書き換えていくシステムを作って動かしています。

――先生は研究内容が幅広いことでも知られていますが、他にはどのような研究をされているか教えてください。

工学教育のシステムもしています。プログラミングができることとソフトウェアが開発できることは全然別の話なのに、プログラミングの授業についていけないと「僕はもうダメだ。一生終わった」みたいな学生もいます。そこでソフトウェア開発がプログラミングだけではないことを学習できるソフトを開発しました。来年から大学でも使う予定です。

あとはゲームを教育に使う研究や、オンライン環境であらゆる国の人が学べるプロジェクトをバングラデシュの研究者と立ち上げる予定です。

医療と介護の分野では、高齢者の認知症の方が訓練に使う「認知リハビリテーション」のためのゲームを開発しました。将来的には症状から病気を特定するようなものではなく、脳のどんな能力が、どれぐらい弱って、その結果どんな症状がでているのかを説明。機能が弱っている部分をピンポイントにリハビリできるようにしたいと思っています。

また、アラビア語の機械翻訳なども扱っています。

――非常に幅広い研究ですが、一番の興味はどのようなものにありますか?

そもそも言葉が何なのかということです。人間が言葉を扱えることがどういうことなのか、どういう仕組みでできているのか、そこが本来の興味です。大学院のころに教官とともに「思考と言語研究会」を立ち上げました。医師も心理学者、教育分野の方など、いろんな方が集まって議論をしています。

私の研究室は思考と言語という面から人間の知的能力を解明し、そのやり方がわかったら、どう世の中に役立てることができるのかを考える場です。研究室のキーワードは人工知能ですが、より豊かな社会の実現を目指し、そこに貢献したいという基本的な姿勢は学生時代から変わっていません。

取材で訪れたのは八王子キャンパスの
シンボル的な建物「片柳研究所棟」
広大なキャンパスには馬の群れの彫像も

AO入試では難しい話でもあきらめないこと

――コンピュータサイエンス学部のAO入試は評判がよいので、その内容についても教えてください。

まず講義をします。その講義では、板書やパワーポイントは一切使いません。ひたすら教員が話します。その話を理解して、ノートにまとめて提出。さらに面接があります。

最後まで集中して講義を聴く必要があります。さらに先生が話したことを、自分なりに理解してまとめられるかがポイントになります。学部として「未知なものに果敢に挑戦する人」を求めていますので、やや難しい話であっても、自分なりに理解して最後まで頑張れるかが重要です。

――AO入試で合格した学生の評判はいかがですか?

まだ、はっきりした差はわかりません。ただ、私は入学したての学生が全員受講する「コンピュータサイエンス概論」を受け持っていますが、しっかりしたレポートが提出されています。

コンピュータサイエンス学部はコンピュータのことだけを学ぶのではなく、コンピュータのことを知っていろんな分野で活躍してほしいのです。専門性を高めてノーベル賞を狙うのではなく、世の中に何が必要かを感じ取り、コンピュータサイエンスの知識を使って社会に貢献できる人物を育てたい。だからこそAO入試では、伸びしろを感じる学生に合格してもらいたいのです。

こんな学生にきてほしい

自ら進んで学び、チャレンジする学生ですね。難しくても逃げない、失敗してもめげないで、仲間と一緒に最後まで一緒に頑張ってほしいのです。

私の研究室では、研究テーマを用意しません。頭の固い教授のテーマではなく、若い学生がやってみたいものをやってほしい。卒業研究は、小学校から勉強してきたことの集大成でもありますので、これまでに学んできたことすべてを投入できる場にしたいのです。そのため電子制御されたルアーを作った学生もいたりするのですが(笑) 

自分のやりたいことを持ってきてもらい、私はアドバイスやサポートをするスタイルです。



公開日:

※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。