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GOOD PROFESSOR

中央大学
理工学部 情報工学科

牧野 光則 教授

まきの・みつのり

1992年3月、早稲田大学大学院理工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了。92年4月より中央大学理工学部専任講師。新潟大学講師、日本大学大学院非常勤講師などを兼任し、助教授を経て2004年より現職。2009~2013年理工学部長補佐。現在、一般社団法人日本技術者教育認定機構(JABEE)基準委員長。

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学生が作ったゲームの展示。いかに立体的に
見せるかもテーマのひとつ。BGMも学生が製作する。

ビジュアルの根底を創り出す

――ゲームが好きで、あるいは映画技術に魅せられて、CGの世界に興味をもつ現役高校生はきっと多いことだろう。このたびご紹介する中央大学理工学部の牧野教授は、CG技術や応用システムの専門家であるとともに、技術者・エンジニアの育成に情熱を傾ける教育者でもある。CG技術が社会に提供する便利さから「厳しいが、やりがいも大きい」と太鼓判を押す演習科目の内容まで詳しく聞くことができた。

わたし自身は理工学部情報工学科で5つに分類している学問領域のうち「映像情報系」を担当しています。とくにCGやバーチャルリアリティ、最近ではAR(拡張現実)技術といったビジュアルテクノロジーにかかわる研究に関心があります。基本的にはコンピュータによる情報処理された結果を映像として出力するシステムづくりをしています。このようなことを言うと、高校生諸君は「ゲームを作る研究室かな」と思うかもしれませんが、ゲームそのものを作るというよりは、ゲームを構成するプログラムやそのプログラムのもととなる計算手法、そしてそれらを動かすためのシステムを研究している、と言ったほうが正しいでしょう。もちろん応用分野はゲームだけではありません。教育の場面や社会貢献など多種多様で、人々のニーズに対応するビジュアルな「仕組み」を日々考えています。

わたし自身が近年取り組んでいるものとしては、「見えやすさ」をリアルタイムで数値化・可視化するシステムの開発研究があります。歩行者から看板や標識はどの程度見えやすいのか、防犯カメラや警備員がどの範囲をどの程度まで見ることができているのか?これらは同じ場所でも昼と夜では明るさが違いますし、人や車の通行量でも変化します。さまざまな要素を含めた「見えやすさ」をとらえて数値化し、CGを使って可視化する技術です。

――こうした視認性の研究に関しては日本と中国で特許を取得しているとのこと。ところで研究室の学生はどのような研究を……

学生の研究テーマは学生と相談しながら学生自身が決めています。まず、切り口やターゲットをディスカッションし、なにが社会や誰に求められているのかなどあるべき姿や方向性を把握させます。では現状とのギャップはなにか? これからどんな技術があればあるべき姿に向かって進むのか? こうしたところまで自分自身で考えてもらいます。

実際にある男子学生が研究テーマに選んだのは、料理手順がメガネ型のディスプレイ(スマートグラス)に映し出される支援システムでした。簡単な手の動きや首の振りで、手順に関するメッセージ、静止画や動画を現実と重ねて画面に表示できます。学生によれば、料理をしている最中は食材や油で手が汚れるので、本をめくったりタブレットを操作したりしづらい。ハンズフリーならどんなに良いか、という思いがきっかけとなったそうです。スマートグラスはまだ軽くはなく高価な眼鏡ですが、ハードウエア関連のICT技術がさらに進めば一般向けのリーズナブルなスマートグラスは必ず市場に出てきます。そのような近未来に必要な技術やシステムをあらかじめ研究し、実現可能性を探るのです。

ぬいぐるみをキャッチするかわいらしいゲームにも、
必要なのは物理学の知識だ。

経産省のお墨付き「画像・映像コンテンツ演習」とは

――徹底的に学生に考えさせ、自分は相談・助言役に徹することで指導する牧野教授。ちょっと厳しいようだが、じつは牧野教授が担当する演習科目にはアクティブラーニング(学生が主体的に学修に取り組むこと)につながる仕組みが隠されている。

わたしは、理工学部で「段階的コンピテンシー育成教育システム」の主担当者を務めています。中央大学がコンピテンシー(行動特性)に関して系統立てて教育を始めたのは2008年からで、情報工学科が先鞭をつけました。中央大学の学生に求められるコンピテンシーとしては「コミュニケーション力」「問題解決力」「組織的行動能力」などがあります。そうなると大学教育としては、単に読み書きそろばんを教えるのではなく、学生が自ら動こうとするきっかけを与え、学生に気づかせ、モチベーションを維持し高める流れをつくってやらなければなりません。

――そんななか2009年から始めている「画像・映像コンテンツ演習」は、2年次生の後期から4期連続で取ることのできる選択科目で、経産省の「社会人基礎力を育成する授業30選」にも選ばれたユニークなものだ。

これは4人ほどがひとつのグループとなり、半年弱の期間でプログラムを作成し、結果として映像コンテンツを構築するプロジェクト型の科目です。最終段階の4年生の前期では、6つの4Kディスプレイを連結した3Dディスプレイウォールを使って、オープンキャンパスなどで来られる高校生に操作し、楽しんでもらえるコンテンツ制作を目標としています。それぞれのチームでは、オープンキャンパスという限られた時間内に来られる高校生がすぐに使えるもの、最後までできるもの、3Dディスプレイが提示する立体感を感じられるもの、などを考慮して、何を作るかという企画から考えます。4月から7月までの限られた期間内で、自分たちの実力で作れる範囲とは何かといった己を見極める力も大事です。

作りたいものがある程度見えてきた段階で、チーム単位でプレゼンテーションします。これに対して、科目経験者でもある大学院生のTA(ティーチングアシスタント)や教員からはもちろん、ほかのチームメンバーからも指摘・質問・疑問が出されます。これらにどう答えて自らの企画の正当性を主張できるかも、この科目の重要なポイントですし、指摘を受けて必要な修正を施す謙虚さも重要です。企画が固まったらチームメンバーで進捗管理しながら完成させていきます。この作業の中で、組織的行動能力やコミュニケーション能力・問題解決能力などのコンピテンシーが向上する機会が得られます。

最終回にはポスター発表と完成させたコンテンツのデモを披露します。この場にはICT企業の最前線で活躍されている学科の卒業生が審査員として参加します。先輩たちに厳しいことを言われたり褒められたりすることで、学生の新たな気づきや次に進もうとするモチベーションにつながればと考えています。この演習は社会人基礎力を育むのにも有効ということで、経産省が選定した「社会人基礎力を育成する授業30選」に入りました。

コンピテンシーにはいわゆるジェネリックスキルだけでなく、専門性と呼んでいる情報工学科学生に必要な数学・物理といった知識から専門的応用能力までも含みます。実際に、モノが飛んで来る、弾むといったコンテンツを作りたい場合、運動法則の知識とそれに基づくプログラミング能力が必要です。特にこの科目の場合、自分が実現させたいことに必要な知識や能力となりますから、足りなければみんな一所懸命に勉強しています。

またTAにとっては、コーチングの経験を積むかけがえのない機会です。加えて、2年後期から4年前期まで4回履修するチャンスがあることもポイントです。たいていの場合、一度目は進捗管理や技術面で何かしら失敗をします。失敗をそのままにせず、次の科目、また次の科目で繰り返し取り組むことで、気付きだけでなく向上の機会が得られ、向上した実感が実際に得られます。この経験と習得した知識や能力は、社会に出るときの自信へとつながることでしょう。

東京・後楽園のそばにある中央大理工学部

こんな学生に来てほしい

受け身ではなく、自発的に取り組む意思のある人に来てほしいと思います。大学で学ぶべき知識は大学で得られるので、入学時点でプログラミングの未経験者でも情報工学科のカリキュラムについていけるはずです。またCG関連の授業や研究室を含む学科を希望する高校生は「ゲームをつくりたい」という人が多いかもしれませんが、ゲームの何をつくりたいのか? このことをよりはっきりさせておいたほうが良いでしょう。キャラクターやデザイン・ストーリーに興味があるなら、もしかしたら美術・企画関連の教育機関が向いているかもしれません。ゲームの企画づくりはコンピュータを知っていることよりも大事なことがあるでしょうから。一方、入出力インタフェースの技術や仕組みに興味があり、それにより社会を変えていきたいと思う人は、本学科に向いていると思います。人や社会に役立つモノ・コトをコンピュータや関連技術で実現するための勉強をしたい、そういう人を歓迎します。


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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。