早稲田塾
GOOD PROFESSOR

上智大学
外国語学部 ロシア語学科

上野 俊彦 教授

上野 俊彦 教授(うえの・としひこ)
1953年7月8日東京都生まれ。78年3月慶應義塾大学法学部政治学科卒業。83年3月慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。防衛庁防衛研究所教官・在ロシア日本大使館専門調査員・日本国際問題研究所ロシア研究センター主任研究員などをへて、2000年4月から現職。専攻はロシア政治・政治史・政治制度史など。
主な著書に『ポスト共産主義ロシアの政治――エリツィンからプーチンへ』『[新版]エリア・スタディー……地域研究の学び方』(共著)、『国家と民族を問いなおす』(共著)などがある。上野俊彦先生のホームページには、政治から語学、そして絵葉書のように美しいクレムリンの写真まで、ロシアの話題でいっぱい。興味のある人は今すぐクリック! http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/9354/index.html

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実社会で活躍できるロシア語ワーカーをめざそう

外国語学部系私大のトップ上智大学の四谷キャンパス

お騒がせの少女歌手ユニット「タトゥー」が日本でも大ブレイクして、ロシアへの関心が高まっている。上智大学外国語学部ロシア語学科の上野俊彦教授(学科長)は、ロシア語をはじめとする「英語以外の外国語」を学ぶ意味をこう言って説明する。

「世界の共通語として多くの人々に話されている言葉は英語ですが、母語として考えると、世界には多様な言語が存在しています。英語以外の言語を学ぶことで、英語を母語としない地域について深く知ることができるのです」

上智大学の外国語学部は、語学教育と地域研究の2本柱となっている。「言葉の勉強とは、その言葉が話されている地域について知ることと分かちがたく結びついている」(上野先生)からだ。

したがってロシア語学科に入るということは、ロシア語を学ぶと同時に、ロシア語が話されている地域の歴史や文化・政治・経済といったことがらについて勉強することでもある。あるいは、それらを学ぶための基礎としてロシア語を学ぶことになる。

最初の1~2年生は語学学習にかなりのウェイトが占められ、ロシア語必修の授業がほぼ毎日ある。これが3年生以上になると、語学以外の地域研究の科目が増えてくる。

ロシア語学科の定員は50人。そのうちの半分ぐらいの学生は、ロシアについてかなり具体的な興味を抱いて入学してくる。英国留学したときのルームメイトがロシア人だったとか、おじいさんがシベリア抑留されていたなどの個人的な体験が明確な動機づけとなって、ロシア語学科をめざして来るそうだ。

最近多いのは、ロシアのスポーツ・文化への関心だ。ロシアは、サッカーをはじめアイスホッケーなども強い。オリンピック種目でも多くのメダリストを輩出しているように、スポーツのレベルが高い。文化面では、バレエやクラシック音楽はもちろん、ひところほどではなくなったがトルストイなどのロシア文学への関心も根強い。

古くて深いロシアとのかかわり

実は、日本とロシアは歴史の関係も深い。例えば、幕末の開国と聞いて思い浮かぶのは米国のペリー提督だが、ロシアもプチャーチン提督が伊豆の下田に来て、江戸幕府と下田条約を締結している。このときプチャーチンが乗って来た船は、そのころ伊豆を襲った地震津波で壊れてしまう。そのため日本側が伊豆の戸田村で代わりの船を建造した。これは日本で最初の西洋式造船だった。

外国人と接触することが制限されていたこの時代に、戸田村の人たちは4ヵ月近くものあいだロシア人船員たちと生活を共にした。日本への感謝の意を込めて、プチャーチンは新しい船に「ヘダ号」と名づけて帰国した。

今でも、戸田村にはプチャーチンが泊まったという寺が残っており、「ヘダ号」建造時のエピソードや関連の品物を展示する造船資料館がある。近くの修善寺にはロシア正教会の教会もある。

だから上野ゼミでは、毎年のゼミ合宿をこの戸田村で行なう。日露関係の史跡めぐりを、ゼミ教育の一環として行なっているのだ。

「高校生の皆さんも、世界史の授業でロシアについて知ったり、音楽の時間にロシア音楽について知る機会があったのではないでしょうか。高校の授業のなかで、意外にロシアにふれているんですよ」

そう話す上野先生自身ももともと世界史が好きで、ロシア革命に強い関心があったことがきっかけでロシア語を学びはじめたという。そして、ロシア語の面白さに引きこまれてしまった。 「今風な言い方をすると、ロシア語にはまったわけです」

ロシア語は日本人に合っている!?

文法が複雑で難しいとされるロシア語だが、上野先生によれば、実は日本人には親しみやすい外国語なのだという。

その理由として、

①ロシア語は英語と違って音節が区切れて聞こえる。日本語も比較的音節が区切れて聞こえる言語なので、日本人にはロシア語は音として聞きやすい。
②ロシア語にも難しい発音はあるが、聞きづらい発音はあまりない。英語のRとLのように、日本人が聞いて区別がつかないようなものはない。
③文字を見ればほぼ規則的に発音できる。英語のように発音記号がないとわからないということがない。「だからロシア語の辞書には、基本的に発音記号がついていません」
④冠詞がない。
⑤形式主語がない。
⑥語順の自由度が高い 。

――を先生は挙げてくれた。


だから英語が苦手な学生でも、努力次第でロシア語の語学力が伸びるという。「4年間のプログラムをふつうの成績でついてこられれば、現地でコミュニケーションがとれるというところに目標を置いています。成績のよい人であれば、ロシア語のコミュニケーションに不自由しないぐらいにはなります」

語学力を向上させるため、2年生になると、現地ロシアで短期の語学研修が行なわれる。夏休みの1ヵ月間、教員も同行してサンクトペテルブルク(旧レニングラード)の文化大学の寮に暮らす。2年生の半数ぐらいが参加しているそうだ。さらに3年生以上からは、毎年ロシアに10人ぐらい留学する。休学して向こうの大学に留学するケースと、単位互換で留学するケースとが半々ずつだそうだ。

ただし、「ロシア語しかできないという学生を送り出そうとは考えていません。ロシア語はあくまでもプラスアルファという学生を育てたい」とのことだ。

自動車メーカーに就職した今年の卒業生(女子)は、日本の自動車メーカーがロシアでどう展開しているのかを調べ、統計分析をしたり、フィールドワークをしていた。やはり今年の卒業生で、外務省のロシア語専門職に合格した学生も、ロシア極東・朝鮮半島の安全保障に関する卒論を書きながら、憲法・国際法・経済学・時事論文、そしてロシア語の試験問題をパスした。

どちらもロシア語ができるだけで採用されたわけではないのだ。

「実社会で活躍できる力に加えて、ロシア語もできるという人材をたくさん送り出したいと思っています」

こんな生徒に来てほしい

まず望ましいのは、ロシアについて関心があること。語学に関心があるよりも、ロシア自体に関心があるほうが、実際に勉強するときの大きなバネになると思います。ロシア語は複雑な面もありますが、単純な面もあります。世間で考えられているほど難しくないので、どんなことでもロシアに関心さえあれば、英語があまり得意でなくても伸びていくことがありますよ。

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※掲載されている教授の所属・役職などは取材当時のものであり、現時点の情報とは異なっている場合があります。