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知識と想像力を駆使して、基礎研究で、未来の礎を築く

棟朝亜理紗 Special Interview #21

Profile
早稲田塾第27期生。2006年、日本大学第二高校卒業。2010年、日本女子大学理学部物質生物科学科卒業、2012年、日本女子大学大学院理学研究科物質・生物機能科学専攻修了。2009年~2012年は、単位互換制度を利用して日本医科大学大学院医学研究科システム生理学分野にて研究を行う。現在、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程3年。
専門分野は、神経科学。現在の研究テーマは、ニューロステロイド。

東京大学大学院で現在、
子育てをしながら研究中!

「子どもを育てながら研究ができるのか?」不安はもちろんありました。そこを踏みきれたのは、持ち前の「やりたいことは全部やる!」という私のワガママな性格(笑)と、東京大学大学院という環境のおかげ。東大は構内に保育園がありますし、所属する研究室の川戸佳(かわとすぐる)教授も、子育てと研究が両立できる雰囲気をつくってくださっています。実際に、出産の前後は無理することなく、スムーズに研究生活を送ることができました。復帰したはじめの頃は、娘と一緒に研究室に通い、研究の合間におっぱいをあげたりしていました。ウィークリーセミナー(研究室の定例ミーティング)にも、娘と一緒に出席。途中で泣き出さないかと心配でしたが、不思議なことに、そういうときはおとなしくしていてくれました。今は大学構内の保育園に預けていますが、3時間に1回は、授乳のために研究室を抜けています。
一日は、朝7時過ぎの起床からスタート。朝食、支度して、9時半に娘を保育園に預けて、10時から19時までが研究の時間。帰宅するのが20時過ぎで、夕飯とお風呂を済ませて娘を寝かしつけ、自分が寝るのはだいたい24時くらい。
働くママに共通しているのは、保育園のお迎えの時間などの“タイムリミット”があること。研究にかけられる時間は、出産前と比べてだいぶ減りました。でもだからと言って、研究の中身が薄くなったかというと、そんなことはない。集中して時間を効率よく使うようになって、内容も充実しています。
修士課程の頃に、日本医科大学の研究室で出会った主人も研究者。娘の名前は、主人と初めて一緒に出した論文のタイトルにちなんでつけました。そういう意味では、本当に研究どっぷりの一家ですね(笑)。

人生を賭けられる場所を求めて、
現役合格一本の早稲田塾へ

実は、元々シンクロナイズドスイミングに人生を賭けていたんです。中学3年まで東京シンクロクラブに所属していて、オリンピックを目指して猛練習の日々。全国ジュニアオリンピックカップでは4回メダルを獲り、日本選手権の決勝にも出場しました。
そのシンクロを、キッパリとやめた。「将来は、大学で学んだことが直結するような職業に就きたい、そういう大学に行きたい」と考えたのが、大きな理由でした。さらに当時の私は、現役で大学に行くということに、強いこだわりを持っていた。それまで打ち込んできたものをやめた自分にとって、現役合格こそが、その後の人生の自信になると思ったからです。その点で、早稲田塾は「ここなら絶対に現役合格できる!」という確信が持てたので、中3の冬に入塾を決めました。 高校時代は、受験勉強一色でした。早稲田塾で印象に残っているのは、数学の講座です。体験授業で教えてくださった講師にひかれて、その講師が受け持つ「スーパーハイレベル数学」「東大・東工大数学」に行ってみたら、まわりは学力トップレベルの生徒ばかり! 内容もレベルが高く、1回目の授業では、ポカーンとしたまま終わってしまいました(笑)。慌てて復習。その後も毎回、復習は徹底的にやりました。自分は何がわかっていないのかを明確にするために、授業後には必ずひとつ、講師に質問に行くようにもした。やがて、数学は自分の武器とも言える得意科目に。
受験に関する相談事は、全部スタッフにしていました。そして、日本女子大学理学部に現役合格。自分の信念は正しかった。現役合格の経験は、今でも自信になっています。私の親は、「娘のときにあれだけ信頼できたのだから」と、弟も早稲田塾に入れ、彼は慶應SFCに現役合格しました。

高校時代の写真

「無理」を突き抜けたら、
「面白さ」が待っていた!

大学の卒業論文から現在まで、私はずっと「神経科学」と呼ばれる分野を研究しています。実は、初めて専門的に学んだときには、「これは無理!」といきなり匙を投げかけたくらい、全くわけがわからなかった。
ところが、「この分野はもう一生涯やらない」と決めていた大学3年の夏に、研究生活の面白さに気づいてしまったんです。北海道大学の公開臨海実習では、教授とふたりきりで、無人島でジンギスカンを食べたりしながら研究に没頭する日々を送り、基礎生物学研究所(日本の基礎生物学研究の中心拠点)の体験入学では、充実した設備の中で、神経発生について学ぶ機会に恵まれました。国際学会にも挑戦し、イタリア、フランス、中国の3か国で、英語でポスター発表。その移動の飛行機では、たまたま話しかけた隣席のおばさんが、実はノーベル賞受賞者だったという、まさかの出来事も! こうして、シンクロ以来、再びのめり込めるものに出あって、研究の道を歩み始め、現在に至ります。

既知の概念が覆る、刺激的な研究生活

現在、ニューロステロイドと呼ばれる、脳内で合成されるステロイドホルモンについて研究を行っています。近年、性ステロイドホルモンは記憶・学習能と深い関係にあることが報告されています。
性ステロイドホルモンは精巣や卵巣で合成され、血中を介して運ばれ、脳内へ作用するとされてきましたが、私が所属する川戸研究室では、記憶・学習の中枢である海馬に性ステロイド合成系が存在することと、血中よりも海馬内の性ステロイドホルモン濃度が高いことを発見しました。これらのことから、私は海馬内の性ステロイド合成系と記憶・学習の関係に着目をして、研究を進めています。
また、雄ラットの海馬内エストラジオール濃度が、雌ラットよりも高いことも明らかにしています。(女性ホルモンの一種であるエストラジオールは、男性ホルモンであるテストステロンから合成されるので テストステロンを多く持つ雄の海馬内でエストラジオール濃度が高いことは当たり前とも考えられるのですが、意外に感じる人は多いのではないでしょうか?)。現在世界中で、閉経直後の女性に対する女性ホルモン補充療法が経験的に行われていますが、記憶・学習能が回復する詳しいメカニズムは不明です。
しかし、私が現在行っている研究を進めることで、このメカニズムが解明し、より良い治療法の開発や、さらには男性の治療にもつながるかもしれません。

将来の<夢>コツコツと研究を続けたい。
育児と研究を両立できる
環境づくりにも貢献

私がやっているような基礎研究は、すぐに臨床に結びつくものではなく、長い目で見たときに人々の役に立つものです。有名な例では、京都大学の山中伸弥教授が世界で初めて作製に成功したiPS細胞などもそう。たくさんの研究者たちが、基礎となる知識を地道に積み上げていくことで、新しい薬や治療法が開発されたり、病気のメカニズムが解明されたりしていく。だから私は、論文が世に出たときが一番嬉しい。そういう研究を、これからもコツコツと続けていければ幸せです。
若くして子どもを持つ機会にも恵まれたので、子育てしながら研究ができる環境づくりにも貢献したい。機会があれば、どんどん活動していきたい。

―― 今回は、ユメビト初の、お子さん同席取材となりました! インタビューで研究内容を活きいきと語ってくださる合間にも、抱っこをしたり、おむつを替えたり。テキパキと明るく、頼もしい姿を見せてくれた棟朝先輩。女性研究者のお手本のような先輩の、今後の研究成果にも期待大。ますますのご活躍をお祈りしています。

棟朝亜理紗
棟朝亜理紗
知識と想像力を駆使して、
基礎研究で、未来の礎を築く
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