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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

サブプライムローン危機とは①

アメリカの大手証券(投資銀行)5位のベアー・スターンズをJPモルガン・チェースが買収、4位のリーマン・ブラザーズが破綻、3位のメリルリンチを商業銀行大手のバンク・オブ・アメリカが救済、保険最大手のAIGを米政府が事実上国営化、ニューヨーク証券取引所の株価暴落、日本銀行など世界の主な中央銀行がコール市場に巨額のドル供給……などなど、連日大きく報道される「アメリカ金融危機かも?」ニュース。何やら世界恐慌にもなるらしいとの不安さえ伝えられている。でも何がどうしてこうなっているのか仕組みが全然わからない。

その根源といわれている「サブプライムローン問題」が、そもそも理解不能という人が多い。そこで今回はこの問題をできるだけわかりやすく紹介する。

まず拠り所として毎日新聞の「ニュースな言葉」を引用する。

◆サブプライムローン

クレジットカードの延滞履歴のある人や低所得者など返済能力の低い借り手を対象にした住宅ローン。金利は当初、低く抑えられているが、一定期間を過ぎると大幅に上昇し返済額が急増する。住宅価格の上昇が止まり担保価値増加による追加融資などが受けられなくなり、返済できなくなる人が続出した。自宅を差し押さえられるケースも急増し、米国で大きな社会問題になっている。
(毎日新聞 2008年7月18日東京夕刊)

「住宅」は高額な買い物だから「住宅ローン」も高額。それを「返済能力の低い借り手を対象にした」ら貸し手からみれば危険である。そこで貸し手のもうけに当たる「金利」を「一定期間を過ぎると大幅に上昇」させるなど高めに設定する。ざっくばらんに言えば、「危ない借り手に高めに貸し付ける」ローンといえよう。

そんな危険な行為をなぜしたかというと、近年のアメリカで「住宅価格の上昇」が続いたからだ。以下にローンの仕組みをある程度デフォルメして紹介する。

【仮定1】家の値段は1000万円。借り手は「返済能力の低い借り手」で全額借りるとする

【仮定2】そこでローン会社は高めの金利20%を設定して貸す(なお、ここでは話を単純にするために、1000万円のみを「金利」の対象とする単利とします)

となると総額は1200万円で、これだけ返せば借り手は家が得られ、貸し手は200万円が得られてハッピーエンド。

「住宅価格の上昇」によって、購入した家の価格が1200万円に届けば、最悪でも借り手が住宅を売って返せば問題なし。「上昇」が1200万円を超えれば、超えた分を金融機関から「追加融資」してもらって返済してもいいし、楽観的な人は他に使ってしまっても大丈夫。「こんないい話はない」と他の人がこぞって住宅購入を始めれば、需要(ほしい)と供給の関係から住宅価格はさらに上昇。ハッピーは続くのだ。

しかし「住宅価格の上昇が止ま」ると上記の歯車が止まり、下がれば逆回転する。だから「返済できなくなる人が続出」となる。

では、なぜ「上昇が止ま」ったのかが問題となろう。これはアメリカの政策や金融のあり方と密接に関連するが、難しいのであえて省いて考える。そうすると答えは一つ。「永久に上昇する商品はあり得ない」だ。

ある商品が値上がった場合に、すでにその商品(住宅)を得ている人(Aさん)は得をし、得ていない人(Bさん)は「私もそうして得したい」と考える。だから新たに買う。この「新たに買」った金額は、「すでにその商品を得」た人の価格より当然ながら高くなる。

それでも値上がりが続けば、まだ購入していないCさんは喜ぶBさんのようになりたいと購入する。その価格はBさんの時を上回る……という循環は、永久に続くはずがないのだ。

例えば「東京都港区南青山」といえば日本でも有数の人気地区。しかしそこで、一戸建ての住宅が10兆円などという値段が付くか。あり得ない。でも「永久に続く」としたらあり得るはず。要するにどんなに人気のある商品でも、あまりに上昇すると売り手も買い手も「高所恐怖症」にかかって止まるのだ。このような現象は日本でも、1980年代のバブル経済とその崩壊過程で見られた。「よくある現象」とまでは言わずとも、「十分あり得る」現象である。


サブプライムローン問題が深刻なのは、問題が貸し手と借り手の単純な図式に止まらず、「証券化」というやっかいな概念が入り込むからだ。

これまた「ニュースな言葉」から引用する

◆証券化

住宅ローン債権などの資産を裏付けに、銀行などが小口証券を作成して多数の投資家に販売する手法。調達した資金は新規の投融資に回せる。ローンの金利収入などから証券購入者(投資家)に金利を支払う代わり、ローンが焦げ付いた時に背負わなければならないリスクも投資家に分散し転嫁できる。投資家もリスクはあるが、少ない資金で一定の高利回りを期待できる。

住宅ローン債権の証券化商品のように多数の個人向けローン債権を一括して証券化したものは、個々のローンが焦げ付くリスクはあるが、一度に全部が焦げ付く確率は極めて低い。このため高い格付けが与えられ、金融機関は資金調達のためどんどん発行し、投資家も積極的に購入した。

米証券会社などは住宅ローン債権の証券化商品をベースに、消費者ローン債権や自動車ローン債権などを加えた証券を合成。「低リスク・低利回り」「高リスク・高利回り」など投資家のニーズに合わせ、オーダーメード型の複雑な商品に仕立てて販売している。
(毎日新聞 2008年2月2日東京朝刊)

「住宅ローン債権などの資産」とは、例えば「○○にある土地(資産)をAさんに1000万円で売った、金利は200万円だ」ということ。契約を交わしているからそれを「裏付け」とする。最初にサブプライムローンは「危険な行為」と書いた。それがここの「焦げ付いた時に背負わなければならないリスク」を指す。それを「分散」するのが証券化という手法だ。

先に紹介した、1000万円で金利200万円の「貸した権利」(=債権)を、100人集めたとしよう。総額で10億円(金利2億円)。「焦げ付」くリスクは、ひとり3分の1と高めに仮想して(最初からわかるわけがないので)みる。でも「一度に全部が焦げ付く確率」、この場合は100人全員が焦げ付く確率は「3分の1×3分の1×3分の1………」を100回繰り返すわけで限りなくゼロに近づく。「ニュースな言葉」の言う「極めて低い」だ。すると「高い格付け」=安心商品に早変わり。

でも、だからといって10億円(金利2億円)の貸し付けをローン会社1社で持っているのは不安。そこでこの権利を証明する紙(証券)を発行して、「小口」つまり小さく分けて再販売する。一口1000円(金利200円)の証券を100万枚作って売るのだ。買った人が丸損する可能性は「極めて低」く、そうなっても1口だけならば1000円を失うだけ。10口買っても1万円。逆に持っているだけで200円もうかる可能性が高い。これが「投資家もリスクはあるが、少ない資金で一定の高利回りを期待できる」という意味となる。

なるほど。でも何か変だと思いませんか? その答えはおそらく2つ。一つは、リスクは分散できても消滅しない。もう一つは、リスクの分散自体がリスクである。続きは次回で。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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