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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

アフガンニスタンの大統領選挙

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04年の大統領選挙で当選した、アフガニスタンのカルザイ大統領の再選か、新大統領の登場かを決める選挙が09年8月に行われた。

アフガニスタンは、80年代の旧ソ連による事実上の支配から脱しようとした、各地の軍事グループが最終的にソ連軍を追い出したものの、その軍事グループ連合による政権(ラバニ政権)が四分五裂の状態となって国民の支持を失い、その間にオマール師が指導するタリバーンが乱れに乱れた治安を回復し、国土のほぼ9割を制圧した。しかし、その極端な強権支配とウサマ・ビンラーディンとの関係が、01年の米国同時多発テロ以来大問題となり、米軍主導の軍事攻撃でタリバーンは崩壊し、いくつかのプロセスを経て、04年から現体制の「アフガニスタン・イスラム国」が発足した。政権を追われたとはいえ、タリバーン残存勢力は根強く、09年大統領選挙でも妨害に回るなど、危険性な存在であり続ける。候補者を見ながら現在のアフガン情勢を考える。

1)カルザイ氏(パシュトゥーン人)

02年の緊急ロヤ・ジルガ(国民大会議)で元首に選ばれ、04年に大統領就任。アフガン最大民族パシュトゥーン人(約45%)の名門、ドラニ族の出身。

もともとは、ザヒルー・シャー元国王政権(73年に亡命)下で国会議長を務め、タリバーンに暗殺されたとみられる、反タリバーンの父親の後を継いだ人物。就任当時はむしろ父親の声望が高く、その七光り的な部分があった。パシュトゥーン人であり、旧北部同盟(後述)とも友好的で、父親の声望と米国の支持もあるということで、非常にバランスのいい位置にいる。

2)アブドラ氏(タジク人)

04年の政権発足時に外務大臣を務めた。アフガンで二番目に多いタジク人(約3割)出身。彼は同じタジク人の、故マスード司令官を抜きには語れない。

マスード司令官は、旧ソ連軍支配時代にはソ連軍に対しても機略縦横の戦いで勝利を収め、「パンジシールの獅子」の異名を取った。タリバーン時代にも唯一国内に留まり、抵抗を続けた英雄である。本来ならば「タリバーン以後」の元首に最も近い人物だったが、同時多発テロの直前に暗殺された。今でもあまりに暗殺とテロの日が近いので因果関係を疑う者が多い。

打倒タリバーンは、この、故マスード派が中心の「北部同盟」が、米軍とともになしたといっていい。新政権発足後はファヒーム副大統領兼国防相、アブドラ外相、カヌーニ教育相が入閣。いずれもマスードの愛弟子ともいえる人物だった。09年選挙はこの「愛弟子」のうち、ファヒーム副大統領(タジク人)がカルザイ氏の応援に回った。

北部同盟からは人口の約10%を占めるウズベク人の声望を集め、北部の都市マザリシャリフを中心とした勢力をもつドスタム氏も、カルザイ支持を表明した。

3)ガニ氏(パシュトゥーン人)

世界銀行や国連でも勤務した経験がある国際派の人物で、米国市民権(国籍)も持つ。カルザイ政権では財務大臣も務めた。パシュトゥーンの有力部族アフマドザイの出身。アフマドザイ族には、「最後の国王」ザヒルー・シャー元国王(07年死去)とともに、ローマに亡命していたグループを支持する国王派もいる。総じて親米であり、欧州との関係もいい実務派である一方で、少なからぬ米国嫌いを抱えるパシュトゥーン内部からは疑問符を付ける声もある。なおタリバーンの多数派もパシュトゥーン人だ。

パシュトゥーン人の有力部族は、他に東部の都市ジャララバード一帯に勢力を持っていた、反タリバーンのザマン家の系統や、タリバーンに暗殺されたパシュトゥーン指導者アブドゥル・ハク氏などを排出した、ハク家の系統がある。カルザイ父と、ハク家、ザマン家は、もともと反タリバーンのパシュトゥーンとしては同格だったので、「何でカルザイの子だけが……」と不満に思っていてもおかしくない。

4)バシャルドスト氏(ハザラ人)

アフガンで10%強の人口を占めるハザラ人出身。ハザラ人は中部の都市バーミヤンを中心とした勢力をもっている。ただしこの民族の中心は、カルザイ支持のハリリ副大統領。ハリリ氏はタリバーンに殺害されたとみられるマザリー氏の後継者だ。イスラム教少数派のシーア派に属し、同派が主流の隣国イランの支援を受けてきた。

このようにみてみると、カルザイ氏は自身が最大民族の出身の上、数の上では第二のタジク人有力者ファヒーム副大統領と、第四のウズベク人ドスタム氏を味方に引き入れて、タジク人のアブドラ氏の基盤を崩す一方で、第三のハザラ人においても、ハリリ氏を取り込むことでバシャルドスト候補をけん制する、という構図である。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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