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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

米軍再編

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世界最大規模の軍隊である米軍が、組織編成・配備の全部をひっくるめた再編を遂げようとしている。これまでの軍の配備はこの場所で最適かという位置の見直し、情報技術の発展に伴う装備の組み直し、よりすばやく世界中のあらゆる場所に部隊を展開できる組織に至ろうとするこの再編により、アジア最大の米軍基地を抱える日本が大きな影響を受けるのは当然だ。

再編に関する米国と日本の対話は、06年5月の安全保障協議委員会(2プラス2)で両政府の合意に至っている。

この合意の中で、現時点で宜野湾市にある普天間基地の移設問題はようやく出口にたどり着いた。住宅密集地に隣接し「世界一危険な基地」と以前から言われていたこの基地では、1995年の少女暴行事件がきっかけで本格的な返還運動が起こった。96年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告では、同基地は5~7年のうちに返還されるとしながら、当時の稲嶺惠一知事が移設先の名護市辺野古沖に設置される基地について、「軍民共用」「使用期限15年」などの条件をつけるなどした結果、つまずいたまま10年以上棚上げされていた。

2プラス2で2014年までの基地の移設が決定したものの、いまだ移設先である辺野古沖のキャンプ・シュワブ案を通そうとする政府と、沖縄県外への移設に持ち込みたい地元沖縄の間で押し合いが続いた。当時の自民党中心の政府は09年8月の総選挙で敗北。沖縄の小選挙区は全敗した。このため普天間の問題は新政権に託される。

沖縄にとどめたい理由は米側にもあった。普天間基地には海兵隊が駐留する。米軍には陸海空の3軍以外に、海軍兵力で地上戦を戦う海兵隊が別に存在し、航空部隊と陸上部隊、任務支援部隊が作戦を共にして展開する性格を持つため、部分的に欠けると機能が低下してしまうからだ。

合意では一時「3兆円」とも言われた米海兵隊8000人とその家族9000人のグアムへの移転費のうち、全体(1兆1000億円)の59.3%にあたる約7000億円を日本側の負担とすることを決定した。7000億円にまで負担が縮小されたのか、とホッとする人もいるかもしれないが、この金額には移転により生じる国内分の負担額は含まれていない。負担額は06年9月30日時点の防衛庁試算で1兆1867億円。金額の根拠がハッキリしない上に、揺れ幅があまりにも大きいため、最終的な決定にはまだ時間がかかると思われる。

日本以外の国の大きなケースとして挙げられるのがドイツ、韓国に駐留する米軍の再編である。再編前の2002年の時点で在外米軍は合計で19万7000人。そのうち韓国と日本、そしてドイツの3ヵ国に81%にのぼる兵力を配置していた。韓国では現段階の兵力の3分の1にあたる1万2500人が削減され、ドイツでは7万2000人の兵力が半減するといわれている。在独米軍のうち大規模な地上戦闘を想定された陸軍は78%にも上るが、再編でこのうち60%が撤収されることとなっている。

なぜ米軍再編か。その必要性について考えるとき「対ソ連シフト」にまず触れなければならない。対ソ連シフトとは、1991年に崩壊するまで米国と軍事超大国を二分していた旧ソ連を封じ込める作戦である。米国は第二次世界大戦終了後の45年からまもなく、ソ連との「冷たい戦争」に入った。戦闘を実際に交え(熱戦)ていない一種の戦争準備状態をさす。そのため旧ソ連を軍事的・経済的に包囲し、ソ連を共産主義体制の中心とするグループ拡大を封じ込めることを目的とした「シフト」である。その限りでこれまでの在日米軍の配備や位置取りは、在韓米軍と合わせて、ソ連を極東(東側)から重装備部隊で抑制する役割を果たしてきた。ちなみに在ドイツ米軍は欧州(西側)からのけん制である。

しかしこの配備体制は91年のソ連崩壊で理論的には古くさくなる。加えて同年の湾岸戦争、2001年のアフガニスタン戦争、03年のイラク戦争、イランとの対立など米国が「ならず者」とみなし「対テロ戦争」などの敵とみなす新たな相手が登場し、その事態にすばやく応じるには必ずしもマッチした配備ではないことが明らかになってきた。

ドイツと韓国における兵力の大削減にはこんな背景があるが、単に数を減らしただけではない。ドイツでは重装備の陸軍を撤収すると同時に、より機動性の高い戦闘用装甲車部隊であるストライカー旅団や空挺旅団が配備される。つまり、前方からやって来るとわかっている巨大な敵に対しての重戦力から、その地点からさらに他の地域への戦力を展開する能力にすぐれた部隊へと再編がはかられたのだ。数量的な軍隊編成から能力、展開力にすぐれた部隊への再編が予定されている。これまでの、ある程度「敵が誰で、その敵に対してどこで闘うことになるのか」といった状況を想定することができた戦略から、あらゆる「5W1H」に対応し、地球規模で軍事作戦をすばやく展開できる体制を作り上げることを米軍は必要としている。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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