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坂東太郎のこれだけは知っておきたい高校生のニュース常識 【早稲田塾】

人口減少と社会保障改革

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「人口減少」とは、国内の人口が前年より減る傾向を一般に指す。「国内の人口」を国内の国民とみるか、国内外の国民か、外国人も含む日本国内の人口かで若干違う。

また少子化と高齢化は、「人口減少」の大きな要因だがイコールではない。少子化は主に子どもの数が少なくなる傾向を指すが、高齢化は高齢者(65歳以上)が人口に占める割合をいう場合が多く、「数」と「率」が混在した議論も目立つ。また高齢者も生きている限りは人口減少の理由にはならない。

とはいえ子どもの数が減って高齢者が増える一般的傾向はあるので、その点で少子と高齢化は密接に関係がある。多産少死ならば人口は増える。多産多死だとどちらに振れるかわからない。日本は近年「少産少死」の段階にあり、理論的には多産多死と同様に減少にも増加にもなる状態だった。少産多死ならば確実に減る。

人口減少が数字上で現実となったのは、05年末に厚生労働省が発表した人口動態統計である。05年の出生数が死亡数を下回ったために1899年に統計を取り始めてから初の減少となった。確定値は06年9月に発表され、出生数は106万2530人で、死亡数が108万3796人。差し引き2万1266人の減少である。

04年に比べて出生数が4万8191人減少したのに対して、死亡数が5万5194人増加したために一気に逆転となった。どうやらここから少産多死に踏み込んだらしい。

海外から入国したり、海外へ出国する社会的増減も加えた総務省の国勢調査でも、人口減少が確認された。同省は06年10月に確定値を公表し、日本の総人口のピークは04年12月の1億2784万1000人と確認した。つまり04年から05年に切り替わるころから、おそらく日本史上初めて長期にわたる構造的な減少時代に突入したようである。

総務省は8月にも、日本国籍を持つ国内居住者を対象とする住民基本台帳に基づく全国の人口を公表しているが、ここでも減少。主な統計がすべて「人口減少」を示す結果となった。

まず死者数である。06年人口動態統計の確定値では、死亡数は5年連続して前年を上回り敗戦直後の113万8000人に迫った。高齢者の増加が必然的に導き出している数字としても、敗戦の混乱時と同程度の死者を数え、しかも下げ止まらない新しい局面に入ったともいえよう。08年にはついに敗戦直後以上の死者数を記録した。

次に出生率。

6月には05年の合計特殊出生率が1.26と、過去最低だった03年と04年の1.29を下回る過去最低を更新したとわかった。合計特殊出生率とは15歳から49歳までの女性1人が産む子どもの数だ。06年は1.32と若干持ち直し、以後07年1.34、08年1.37、09年1.37を記録する。ただし対象となる出産可能な女性の母数も減っているので、出生数は低下傾向にあり、2010年にはついに人口減少数が12万人を超えた。

04年に国会で審議した年金改革関連法案の可決・成立にともなう、年金制度改革の根拠になっていた数値は、02年の中位推計に用いていた1.39を根拠にしていた。当時は出生率が下がる一方だったので、同法案が同年6月3日に参議院厚生労働委員会で強行採決され、賛成多数で可決したのを受けた4日付毎日新聞社説のタイトルは、「『100年安心』誰も信じない」だった。「100年安心」とは政府・与党のうたい文句だった。しかしその後やや持ち直して1.39に近づいてきたので、「100年安心」は多少信じていいのか……というとそうはいかない。この間に進んだデフレが年金財政を揺さぶっているからだ。

ただし1.39としても世界に類を見ないほど低い。世界約200の国と地域のなかでおそらく180位以下であろう。なぜ日本人は子を産まない、産めないのか。具体的には1990年以降のエンゼルプランなどが効果を発揮しなかったのはなぜか、である。

多くの識者が指摘するように、仕事と子育てが両立できるようなシステム作りが不十分なのが大きい。社会保障費のうち児童・家庭関係は3.2兆円で全体の4%。高齢者関係の59兆円とは大差がある。「人口」だけに限れば高齢者関連予算も人口維持には役立っていようが、少子対策は寒い現実がある。

06年発表の国立女性教育会館による「家庭教育に関する国際比較調査」によると、日本の母親が子どもと過ごすのが調査対象6カ国で最長の7.6時間であるに対し、父親は3.1時間で、父母差4.5時間も対象国で最大。「子どもと接する時間が少ない」と悩む父親は41.3%もいる。厚生労働省が06年9月に発表した『06年度厚生労働白書』では、親の世代の長時間労働を少子化の理由にあげている。11月にスイスの民間研究期間・世界経済フォーラムが発表した「男女平等度」で、日本は115カ国中79位と低迷した。

「人口」を劇的に増やしたければ移民を認めるという方法がある。現に経済の先進国では、唯一合計特殊出生率で2を上回っている米国はそこが大きい。ただ、圧倒的多数が日本民族という環境で長らく過ごしてきた国民に決断できるか。婚外子の差別をなくして「父親はいないが子はいる」状態を当たり前とする政策転換も、人道上の問題以外に少子化対策としてあっていいはずだ。フランスはそれで出生率改善の傾向を見せている。でもここにも国柄や民族性の壁が立ちはだかる。

かなりの世代が「日本国は狭い。その上に平地や平野が少ない。ところが人口は1億人以上いるので人口密度が高い。また地下資源にも乏しい。食糧自給率も低い。よって加工貿易で生きていく以外の術はない」と教えられてきた。となると人口減少は必ずしも悪くはないという結論も導き出せる。

明治時代に入って、初の近代的な統一的戸籍である壬申戸籍が編成された。それによると1873年の日本人口は3330万672人。ここからどんどん増えて今の1億2千万人にまでふくれあがった。

よく以前は、労働力が多く必要な農業が主流だったので、農家は働き手として多数の子どもを必要としたとの説を耳にするが疑わしい。戦前は農地の最大約5割まで達していた寄生地主制が存在したので、多くの農家は小作と呼ばれる零細農民か小さな田畑を持つ自作農だった。年端もいかない子どもを有力な労働源にする以前に、自分の生活で精一杯だったはずである。現に故郷では食べていけない若者がどんどん都市へと流入していった。労働力説と「子だくさん」の因果関係は決して固くはない。また農家は夫婦共働きだから女性が社会進出(仕事を持つ)すると少子化になるともいいがたい。

「地下資源に乏しい」も正確ではない。正しくは、日本列島は豊富な地下資源が埋蔵されていたが、先人が目ぼしい物資を掘り続け使い果たしてしまったために、現代はなくなったのだ。つまり大人はずっと昔から基本的には「我が亡き後に洪水は来たれ」の姿勢でいた。だから次世代にまで気を使って大がかりな予算を組む気になれない。ということは次世代がまずいと思えば人口減少に歯止めをかけてくるだろうし、構わなければ構わないとしよう。

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著者紹介

【坂東太郎】

毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師。 現在、日本ニュース時事能力検定協会監事を務める。 著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。 早稲田塾の「AO・推薦対策講座」および「論文作法」を担当。

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