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Good Professor

兼築 信行

兼築 信行 教授
早稲田大学
文学部

兼築信行(かねちく・のぶゆき)
1956年、島根県生まれ。75年に早稲田大学第一文学部へ入学し、79年に大学院文学研究科へ進学。その後、早稲田大学高等学院教諭を経て、早稲田大学文学部の専任講師となる。2001年教授に昇任となり、現在に至る。

高校時代に大学で師事する教授まで決めていた?

東西線早稲田駅から徒歩1分で文学部のある戸田キャンパスの正門に到着。この立地条件の良さも早稲田の魅力の一つだ。
東西線早稲田駅から徒歩1分で文学部のある戸田キャンパスの正門に到着。この立地条件の良さも早稲田の魅力の一つだ。

大きい人である。横にも縦にも大きいが、何より度量がデカイ。

文学部でホームページを立ち上げる責任者に抜擢されたときには、大学と関係ない人にまで開かれた掲示板を立ち上げた。結果、イタズラから激しい論争まで、あらゆる問題が兼築信行先生を洪水のように飲み込んでいったという。

「いやー、空前の盛り上がりをみせましてね。1ヵ月に200万件のアクセスを記録したこともありましたから。早稲田大学が面白いと思ってもらえれば成功ですよ」

めげた様子などまるでない。それどころかアクセス数が増えたことを、大きな体を揺すぶって喜んでいた。  

そんな先生の専門は、百人一首の撰者として有名な藤原定家を中心とする、和歌の研究である。高校時代、友人の影響を受けて『源氏物語』など古典に親しんでいた先生は、入学前に習いたい教授まで決めていたという。 「詩人になりたいとも思っていました。大学では中世の和歌を研究していらした故藤平春男先生に師事したいと思っていたのです」

古典研究が生活の中心に

意外と言っては失礼だがとてもモダンな学食だ。大学周辺に食事処もランチタイムには多くの学生で席が埋まる。
意外と言っては失礼だがとてもモダンな学食だ。大学周辺に食事処もランチタイムには多くの学生で席が埋まる。

大学に入学してからも、先生は文学の勉強に熱中した。特に古典作品などを読む研究会活動は、生活の中心となった。そして定家にのめり込んでいく。
「定家は複雑な人物だと思います。ただ、あんまりつき合いたくない人かな(笑)。

時代の転換期にあって、時代をリードして新しい歌を作り続け、芸術に生きている姿勢に引かれるのですよ」  高い比喩性を持ち、本歌取りなど凝った歌を作り続けた定家が、先生の心をつかんだのはうなずける。詩人にこそならなかったが、先生の研究に対する情熱は、芸術家に通じる部分があるからだ。

「和歌を勉強してもお金持ちになれるわけではありませんからね。ただ好きだから勉強していました。当然、在学中は就職先なんか考えていませんでしたよ」  こう言って豪快に笑う先生の研究姿勢は、教授になった現在でも変わることはない。何より研究について語る先生は、とても嬉しそうなのだ。

ピンときた古書は真っ先にゲット

「今まで発見されていなかった資料を研究することで、それまでの常識がひっくり返ることだってあります。だから面白いのですよ。既存の資料をじっくりと研究するのはもちろんですが、古書店などで売り出される古書にも目を配っています。

古書店のカタログに載っている資料は先着順のことも多いので、ピンときたらすぐに買います。まあ、考古学の発掘と似た部分があるかもしれませんね」  実際、先生は買い付けた資料の研究によって、学会から高い評価を受けたこともあるという。  

インタビューの最中に1冊のカタログを見せてもらったが、掲載されている大量の古書は、小さなカラー写真が1点と資料の名前が素っ気なく書かれているだけ。素人が見ても、どれが学会を驚かすようなお宝なのかさっぱりわからない。

そもそも書いてある文字すら読めない。保存状態などの見た目ではなく、書かれた内容が重要になるだけに、古美術などの鑑定より、はるかに難しい宝探しになるだろう。「まあ、専門家じゃないと」と先生は笑うが、かなり研究を極めなければ「ピンとくる」はずもない。先生の実力の一端を、かいま見た気がした。

爪を切り、手を清潔にして受講する!?

重要な古文書を探しだす力を付けるには、長い年月が必要だが、その基礎となる資料の扱い方や調査の仕方などは、先生の講義「日本文献学」で学ぶことができる。  

この講義を紹介したホームページの最後に、面白い一文がある。「受講者は爪を切り、手を清潔に洗ったうえで出席してほしい」。実はこの講義、実物の資料を使うのだという。 「年代ごとの紙の違いなんて、触ってもらわないとわかりませんから」と、先生は当たり前のように言うが、そんな高価な資料を講義で使って大丈夫なのか、といらぬ心配をしてしまったくらいだ。  

もちろん学部生のほとんどは研究者にならない。古典を学んで、就職に役立つ資格を取得できるわけでもない。ただ、古典文学を学ぶ面白さを、先生は手抜きなしに伝えようとしている。だからこそ「本物」の資料が必要になる。 「古典研究は、現在の人間の理解につながるのです。日本人のコアな部分が何なのかがわかってくる。日本人らしさといったものも、時代とともに変わっていきます。
現在、私たちが日本人のコアだと思っているものも、思いこんでいるだけなのかもしれません。そうしたことがわかるのも、古典研究の面白さです」  学生からの講義の評判がよいのも当然だろう。古典への熱い情熱は、一緒にいる人々を元気にする。ぜひ、受講してみてほしい。

こんな生徒に来てほしい

早稲田大学には、いろいろな人がいるから面白いのです。大学は人と出会う場ですからね。予期しなかった出会い、面白い出会い、乱暴な出会い、なかには不幸な出会いもあるかもしれない(笑)。ですから自分に自信があって、性格的に強い人には、早稲田は向いていると思います。きっと何か新しい発見をできると思いますよ。

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