- 袴田 茂樹 教授
- 青山学院大学
国際政治経済学部 袴田茂樹(はかまだ・しげき)
1944年、大阪府生まれ。1967年、東京大学文学部哲学科卒業。モスクワ国立大学大学院に5年間留学し、1972年博士課程ソビエト社会論専攻修了。帰国後、東京大学大学院博士課程国際関係論専攻修了。プリンストン大学客員研究員、モスクワ大学客員教授、東京大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専攻は、現代ロシア論、ロシア社会論。著書に、『深層の社会主義』『ロシアのジレンマ』『文化のリアリティ』『ソ連―誤解をとく25の視角』『沈みゆく大国』など多数。
歴史のダイナミズムをリアルに生きる

- 正門は大学の顔だ。ひなびたレンガの正門の向こうにイチョウ並木が続く。若者の街・渋谷にある学院だが正門の伝統的なたたずまいが落ち着いた雰囲気を醸し出している。毎年クリスマスの時期には電飾されたツリーが立てられ年末風景に華を添える。
世界貿易センタービルに旅客機が追突し、炎上。崩れ落ちるビル。アメリカを突然襲った悲惨なテロ事件。
リアルタイムの映像を前に、高鳴る胸の鼓動。今、この瞬間を自分が生きていることへの驚き。そんな歴史のダイナミズムを追っていく学問に、興奮を感じないわけがない。
「私たちは、歴史の激動期をリアルに生きています」と、袴田教授は言う。
先生は、ロシア分析の第一人者である。テレビや新聞で目にしたことがある人もいるかもしれない。研究だけでなく、政治・経済の現場においても意欲的に活動をしている。日本の対ロシア政策に関して政府に提言を行い、ときには批判もする。
「傍観者としてではなく、専門家として主体的に関わってくことが重要であるし、それは可能」というのが、先生の持論である。
ロシア・日露関係を専門としているが、それは決して2国間の問題だけを考えることではない。
「テロ事件に関して、ロシアは米国に積極的に支持表明をしました。その一方で、中央アジアやアフガニスタンに対する米国の影響が強まることなどを懸念している。
ロシアの感情は複雑なんです。アメリカだけでなく世界の秩序基盤が揺れているなか、地球規模で新しい世界像を模索することが求められています」 そこに、国際政治経済論の醍醐味もある。
留学をきっかけにロシアに目覚める

- ガウチャーメモリアル・ホールは2001年9月に完成したばかりの青学の新しいシンボルタワー。13階建ての近代的な高層建築でありながら、外見は伝統的なチャペルの雰囲気を大切にしている。チャペルの上に教育研究の場があるのが特徴的で、「信は知の土台なり」という教育姿勢を表している。
先生には独特のバックグラウンドがある。父がシベリアの抑留者だったのだ。だが、先生がロシアにハマった直接のきっかけは、留学で受けたカルチャーショックだった。
「東京大学では哲学を専攻していて、ロシアのこともロシア語も全く勉強していませんでした。卒業後に父に誘われて、モスクワ大学大学院へ留学したんです。そのときに、今まで空気のように当たり前だと思っていたことが、通用しない世界もあることに衝撃を受けました。そして、日本の国際社会での位置づけ、日本文化について、日本人であるとはどういうことかと考えるようになりました」
ロシアには、信頼をベースにした秩序が存在しない。 「ホテルの予約でも、コネなど裏であの手この手を使わないと確保できません。無秩序が前提となっているんです。一方、日本は電話一本で予約できますよね。信頼関係がベースになっている分、お人好しであるとも言える。
この前も高速を走っていたら、前のトラックに『高価精密機器 接近注意』と書いてありました。ロシアでも他の国でもそんな注意書きがあったら、あっという間に襲撃されますよ」
ロシアでソビエト社会論を専攻。帰国後は、いくつかの大学で教鞭をとった。
先生のゼミは決して甘くない。それにも関わらず、学生の間では評判が良い。専門をしっかり学びつつも、教養を深めることができるところに魅力がある。
「教える側が本気でぶつかっていけば、学生もそれを感じ取って真剣に取り組んでくれると考えています。だから手は抜けません。国際問題だけでなく、芸術・文化などについても本を読んだり実物に触れたりして、レポート・ディスカッションから考えを深めていきます。テーマは多岐に渡っていて、狂言からドイツ文化まで何でもありますよ」
青山学院大学のもつ雰囲気もゼミを支えている。専門の勉強だけに追われるというガツガツしたところがなく、心に余裕を持てるキャンパス環境がうらやましい。
真の国際人とは、自分の言葉で語れる人

- 間島記念館は風格ある外観で、青山キャンパスの象徴的な存在となっている。1929年に建てられた伝統ある建築で、1階にはキリスト教の活動センターがある。2階は青学の歴史とキリスト教研究の貴重な資料が収められている資料センターとなっていて、多くの教員や学生が利用する。
袴田先生ご自身は、どんな大学生だったのだろうか。 「読書量では、誰にも負けませんでした。私にとって本を読むということは、真剣勝負だったんです。自分の価値観と他の価値観とどちらが正しいか、そのぶつかり合いでした。その代わり、遊ぶときは徹底的に遊びました。
学生にもいつも言っているんですよ。「ダラダラ生活するのが一番悪い。やるときは徹底してやる、遊ぶときは遊ぶというメリハリのある生活をしなさいって」
「大学時代は、自意識に目覚める時期だと思います。今まで無意識のうちに取り入れていた価値観に疑問を持ち、徹底的に自分で突き詰める。考え抜かれた言葉は重いんです。
大人になって話をしていると、そのような精神的な営みを経ている人か、常識だけで生きてきた人かわかってしまいます。本物の国際人とは、自分の人格があり、自分の言葉で語れる人です。そして、そんな人を育てるのが、大学教育の場だと考えています」
高校時代にやっておくべきこととして、こんなアドバイスをもらった。 「まず基本的な歴史認識を持っておくことです。どんな分野に進むにしても、必ず必要ですから。次に、日本の文化を理解しておくことです。自分に自尊心がないと他の人格を尊重できないように、自国の伝統文化を知らなければ、他を理解することはできません。受験だから用語を暗記して終わり──ではなく、自国の文化を理解しようとする心のゆとりがほしいですね。そして、外国語はきちんとやって損はありません」
今の学生に期待する部分は大きい。 「感受性が豊かであることに感心します。プロのJAZZプレーヤーであり、同時に哲学や自然科学を勉強している学生もいますし。そのような幅広い感性には、未来を切り拓いていく可能性があると思います。」
国際関係に少しでも興味がある人がいたら、青山学院大学へ行ってみよう。深い教養とともに、歴史のダイナミズムをとことん追究できる環境がそこにはある。
こんな生徒に来てほしい
思索と教養を求める人です。教養とは、知識の積み重ねというよりも、深くものを考える力ということです。まずは、芸術文化などで本物を知り、人間の持っている根源的なものをつかむ。そこから思索を広げることで、人格的な厚みが生まれてきます。そのような精神的にゆとりのある学生に来てほしいですね。 もちろん、専門もきちんと勉強してもらいます。他の人と取り換え可能な部品のような人間にだけはなってほしくないんです。


投稿されたご意見・ご感想(1件)
栗岩 洋平 さんのコメント
初めまして 北区にある私立桜丘高校2年栗岩洋平です。
本当は実際に会って色々お話したいのですが、袴田先生はお忙しいと思うので、メールを使わせていただきます。僕は中学2年生の時に旅行でニューヨークに行きました、その時に貿易センタービル跡地に行きました、跡地は工事現場のようになっていましたが、隣にあるお店の看板にはハッキリと傷跡があり、そこに居ることが怖くなりました。どうして世界は平和にならないのか?と思い国際政治に興味を持ちました。きっかけは些細なことですが、今政治について勉強しています。将来、戦争や国同士の争いが完全に無くなり平和になって欲しいと思います。大人の人は無理だと笑うかもしれませんが高校生だからこそ今この思いを持ち、そして大人になりたいと思います。だからもっと国際政治について深く勉強したいので青学の国際政治学部を目指して勉強しています。絶対に合格してみせるので楽しみにしていてください!
投稿者: 栗岩 洋平 | 2006年01月26日 18:36