- 岩崎 晋也 助教授
- 法政大学
現代福祉学部 現代福祉学科 岩崎 晋也(いわさき・しんや)
1961年熊本県生まれ。83年中央大学法学部卒業。95年東京都立大学大学院社会福祉学専攻博士課程中退。同年東京都立大学社会福祉学科助手。98年法政大学大原社会問題研究所助教授。00年より現職。
著作は『精神障害リハビリテーション学』(共編・金剛出版)、『地域に根ざした精神障害者援助マニュアル』(共編・日本評論杜)ほか
いまや狭い社会科学分野ではありえない

- 多摩キャンパス奥にそびえる「現代福祉学部」棟

- ゼミの学生たちと談笑する岩崎先生
法政大学多摩キャンパスは、多摩丘陵に近代的な校舎が建ち並ぶ開放的で伸びやかなキャンパスである。その奥まった小高い丘にそびえる17号館の建物が「現代福祉学部」棟。同学部が開講したのは2000年4月で、スタートからまだ2年という新しい学部である。
「21世紀の福祉の問題を考えると、従来型の社会福祉学部の内容から、さらに広げてとらえていく必要があるというコンセプトで始められた学部です。つまり、これまでの福祉援助の実践に加え、援助を受ける側の心の問題ですとか、全国一律の福祉政策ではない地域ごとの実情に即した福祉のあり方、あるいは福祉を含めた街づくりや文化・環境づくりはどうあるべきかということまで、広い視点から研究している学部です」
そう説明するのは、同学部助教授の岩崎晋也先生である。
現代福祉学部では従来からの社会福祉学の学習・実技演習のほかに、臨床心理学や地域づくりまで学べ、多面的に福祉を理解できる配慮がなされている。
さらに、マスプロ系他大学にない同学部の大きな特徴としては、少数精鋭によるきめ細かな指導がある。毎年の学生の募集定員は200人で、1年生の基礎演習でも20人を超えるクラスはない。ゼミともなれば、10人前後になる。
法政大学のなかでも教員の対学生比が突出して高い学部で、真面目な学生にとっては非常に恵まれた環境といえる。さらに、岩崎先生もそうだが、大半の教員が福祉現場実務の経験者で、そうした先生から専門性の高い指導が行われるのも特徴の一つだ。
開講からまだ2年ということもあって、同学部はまだ卒業生を送り出していない。将来的には、福祉の専門職を中心に公務員や一般企業への就職が予想されている。 「特に近年は一般企業の福祉に寄せる関心が高くなっていますから、この分野に進む卒業生も多くなるでしょうね」と岩崎先生。
なお、この学部の4年間の履修を修了すると、社会福祉士と精神保健福祉士の国家試験受験資格が得られ、認定心理士や社会福祉主事任用資格およぴ中学・高校の社会科や福祉の教職免許が取得できる。
4月から大学院「人間社会研究科」開設

- 整然とした岩崎研究室
また、法政大学ではこの4月から「人間社会研究科」をスタートさせる。これは現代福祉学部を基礎にした大学院で、修士と博士の二つの課程が設けられ、学部を卒業したあと大学院に進む道も用意されることになった。また、修士では臨床心理士の養成も行う。
さて、現代福祉学部の開設準備から関わったという岩崎先生の専攻は社会福祉理論である。
「社会福祉理論というとテーマは非常に広くなりますが、たとえば障害者を前にしたとき、なぜ援助をするのか、どこまで援助すればいいのかといった疑問が湧いてくるんですよ。そうした現実的かつ原理的な問題に取り組んでいる学問といったらいいでしょうか」
誰しもがいつ何時障害者になるかはわからないはずなのに、一般に障害者というと固定的なイメージでとらえがちだ。それは、現代福祉学部に入ってくる新入生についても同じと岩崎先生は言う。
「障害者問題などに関心があるはずの入学したばかりの1年生も、社会から埋め込まれた概念でとらえている人が多いんです。しかし、障害にもさまざまな種類があって、時代や地域によってもその概念は可変的なものです。
「最近の学生を見ていますと文章表現の能力には優れていますが、きちんと語す力や議論する能力に不足しているようです。
私のところでは、まず議論することを身につけさせたい。議論をするのは相手を言い負かすことではなくて、よりよい合意を導き出す手段なんですね。
基礎演習でもなるべく議論の場を設けるようにしています。大学で教えている知識というのは、いつか忘れてしまうものが多い。基本的な考え方はともかく、細部はそれでかまわないと私は思っています。忘れた知識など本など読み返せば思い出しますからね。では、何を学ぶかといえば、自分で問題を整理し切り取る力と、いろんなことに興味をもって対峙し解決する力を養うこと。大学というのは、そういう場だろうと思います。」
福祉現場へのフィールドワークを忘れない

- 開放的な法政大学多摩キャンパスの全景

- 2001年夏のヨーロッパ研修旅行にて
ところで、岩崎先生自身は大学生時代には法律畑で学んでいた。当初めざしていたのは弁護士だったという。それが、なぜ途中から社会福祉に方向転換したのだろうか?
「司法試験をめざして勉強していたときに、あるボランティア活動に参加して、知的障害者の施設に1年間いたことがあるんです。そこではじめて、世の中にはこういう仕事もあるのかと目が開かされました」
その後、自ら飛び込んで精神障害者の施設で働いたうえで、社会福祉を学ぶために大学院に入りなおした。
「私自身が研究者としてここまでやって来たのも、自分で道を開いたというより、いろんな人との出会いがあって、その影響によるほうが大きかった。ですから学生にも、なるべくたくさんの魅力的な人と出会う機会を自らつくるようにして、“人に惚れなさい"と説いているんですよ」
最後に、社会福祉を学ぶ心構えについてこう結んでくれた。
「福祉を学ぶというのは大学の中だけで完結するものではなく、常にフィールドを意識していなけれぱなりません。
また、確たる答えのある分野でもありません。現実的な問題解決も求められます。そうしたことに対処するためには、物事に対して『なぜそうなっているのか?』と絶えず問題点を自分に問いかけられるようにしておくことですね。そうした力をつけることが大切です」
こんな生徒に来てほしい
人に興味をもっている人。
人と人の関係ですとか、人の暮らし方、そうしたことに興味のある人ですね。
これまで福祉は特殊な学部と思われがちでした。しかし、現代福祉学部では、福祉のほかにも、社会学や法学・心理学なども扱ってきた領域も学べて間口が広くなっています。社会科学系学部を考えている人の選択の一つとして考えてもらえればいいと思いますね。










