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Good Professor

亀川 雅人

亀川 雅人 教授
立教大学
経済学部 経営学科・大学院ビジネスデザイン研究科

亀川 雅人(かめかわ・まさと)
経営学博士。専門は経営財務。日本経営教育学会・経営行動研究学会・日本経営分析学会など五つの学会で理事等を歴任。『企業資本と利潤』(中央経済社)・『日本型企業金融システム』(学文社)・『企業財務の物語』(中央経済社)・『入門経営財務』(新世社)など著書多数。

未来のビル・ゲイツ氏を育てたい

経済学部のほか社会学部・法学部の研究室などがある池袋キャンパス12号館
経済学部のほか社会学部・法学部の研究室などがある池袋キャンパス12号館

いま日本の企業で有名な社長と言えば誰だろうか? 日本経済が低迷するなかにあって、日本企業の社長の影は薄い。そのようななかで昨年脚光を浴びたのは、日産自動車のカルロス・ゴーン社長である。ゴーン氏のように、海外からCEOを招かなければならない理由は何か。

高校生の皆さんでも、新聞やニュースで「○○新社長は入社時から海外畑を歩み……」というのを耳にしたことがあるだろう。従来までの日本企業のトップは、様々な業務を経験しながらも、最終的には"会計畑""営業畑"など、一つの専門分野(部門)で実績をあげてきた人物、つまりスペシャリストがなることが通例であった。

しかし、立教大学経済学部経営学科の亀川雅人先生は、ここに問題を見出し、次のように主張する。ドラスティックに社会環境が激変する現在、求められているのは、「これまでのようなスペシャリストではなく、新たなゼネラリストです。言い方は悪いが、今までの日本の社長は部門の長ではあるけれども、必ずしもビジネス全体を把握できていなかったと思います」。

だが昨今、何でもできる便利屋風のゼネラリストではなく、スペシャリストとして得意分野をもつことが良しとされてきたのも事実である。スペシャリストだけでは、なぜいけないのだろうか。

「スペシャリストという響きはいいかもしれません。確かに、企業という組織は専門的な知識や技術の協業と分業によって成り立っています。しかし、社会環境の変化スピードが速くなった現在、単なるスペシャリストではリスクをはらんでいると思いますね。スペシャリストは、自分の得意分野にいわば寄り掛かった状態です。

もし、その分野が社会の流れで必要とされなくなったとき、拠りどころがなくなってしまいます。たとえば、半導体を自分の得意分野にしてやってきた人は、半導体に代わるものが出現すれば、半導体の知識や技術は無用のものとなってしまいます」

そうならないよう、社会の変化に乗り遅れずに生き抜いていくために、学生には「ゴーン氏のような真のゼネラリストをめざしてほしい」と話す。たとえ、スペシャリストをめざすとしても、ビジネスの全体を知らなければ本領を発揮できない。

「会計や人事・製造・営業・企業倫理など、すべての分野にバランスよく精通していて、環境の変化のなかで新しいビジネスモデルを構築できる経営の専門家、さらには社会を革新できるビル・ゲイツのような人を育てていきたいと思っているのです」

ゼネラリストへの道は「急がば回れ」

池袋キャンパスにはこの図書館本館と各学部・学科の図書室がある。武蔵野新座キャンパスの図書館分館も含め、コンピュータにより書籍・雑誌の検索ができる。
池袋キャンパスにはこの図書館本館と各学部・学科の図書室がある。武蔵野新座キャンパスの図書館分館も含め、コンピュータにより書籍・雑誌の検索ができる。

では実際、ゼネラリストを育成するためにどのような講義が必要であろうか。

「ビジネスを経験したことのない学生には、ゼネラリストもスペシャリストもないでしょう。経済学や経営学をいくら学んでも、それだけでは真のゼネラリストにはなれませんし、新しいビジネスも生まれません。マイクロソフト社のビル・ゲイツ氏が学んだのは、経営学ではなくコンピュータでした。様々な分野に興味をもち、幅広い教養を身につけることが重要です。経済学や経営学のメガネをかけて見たときに、これまでとは異なる視野が広がれば社会に貢献できる人になれるでしょう。真のゼネラリストになる近道はありません。急がば回れです」

しかし、だからといって教育方法がないわけではない。

「企業活動を身近に感じるためにビジネス・ゲームを行ったり、ビジネス・プランを作成させることが効果的です。立教大学経済学部では、会社を作るための講座を設け、将来の起業を身近なものにしています」

学部での目的は、基礎的な知識をしっかりと身につけ、経済学や経営学的発想を養うこと。しかし、本格的なゼネラリストの養成は、社会人としての一定の経験がなければ難しいそうだ。

「机上の論理やアルバイト程度ではビジネスの厳しさは理解できません。会社という組織のなかで、自分に何ができ、何ができないかを知ることが重要です。そのうえで、ビジネスを学ぶ姿勢がある人がゼネラリストとしてふさわしいのではないでしょうか」

つまり、社会人教育としての大学院の役割に期待がかけられているわけである。

2002年春、大学院研究科を開設

立教大学では2002年春、新たな大学院研究科としてビジネスデザイン研究科を創設する。戦略的な思考と高度な経営能力を有する先駆的な次世代リーダーの育成と、社会人の再教育を目的として二専攻を設置する。「ビジネスデザイン専攻」では、ビジネスデザインに不可欠な要素やプランを完成できるプロセスを学ぶビジネススクール型大学院。「ホスピタリティデザイン専攻」では、人間系のサービスを中心にホスピタリティマネジメントの専門能力・実務能力を養成する。

両専攻とも、新しいビジネスを構想できる真のゼネラリストを養成するためのカリキュラムとなっている。そのコア科目がビジネス・シミュレーションである。

「ビジネス・シミュレーションは、5~6名のグループをつくり、仮想のビジネスで競争するゲームです。
ある条件の会社を想定し、マーケットの予測や価格設定・生産量などを決めて勝敗を競うのです。グループ同士は競合企業という設定ですので、他のグループに負けない会社経営をするために、グループ内で意見を交換し合いながら選択・意思決定をしていく。実社会では会社としての選択の正否が企業の命運を決めます。仮想の社会ではありますが、グループごとに勝敗を意識しつつ、自らの意思決定結果について毎時間検討してゆきます。こうしたビジネス・ゲームを経験することで、会社経営にどんな知識や発想が必要かを総体的に学ぶことができます」

このゲームは、グループで行うことに、大きな意味がある。

「一人でゲームをすると、曖昧な情報のまま『まあいいや』と安易に決めてしまいがちです。しかしグループですから、なぜその意思決定にするのか理由を説明し、グループのメンバーを説得しなければなりません。そうすると説得するプロセスで自分にどんな知識が必要で、何が欠けているのかがわかるのです。またグループ内の誰がどの分野に強いなど、人材を見極めて活用する能力も磨かれると思いますね」

こうした学習を経験した上で、新しいビジネスモデルを作り、会社を興すカリキュラムを準備しているという。普段、家でやっているゲームならマニュアルどおり、ボタンを押せばクリアできるかもしれない。しかし、このビジネスゲームで必要なのは、会社経営をマニュアルとして覚える能力ではなく、会社全体を見渡しつつ、望む姿にするにはどうすればよいのか、結果から逆算し、より有効な戦略を考えてゆく発想力。それを磨くためのカリキュラムは実に楽しくしっかりしたもののようだ。

大学の本当の役割とは・・・・・・

先生自身はビジネスデザイン専攻において、ビジネス・シミュレーションの担当者の一人であると同時に、コーポレートファイナンスの科目を担当する。企業財務、つまり企業の資本調達と資本の運用について、大学院に進んで徹底的かつ実証的に研究する体制が立教大学には整っている。ここでも場合よっては、実務の世界で、資金調達・運用に携わっている方々を招く予定だそうだ。

「私自身の研究分野である企業財務の研究は元々すごく理論的な研究が多く、経済理論と経営と会計の中間領域のようなものなのです。これまでは、モデルを扱ったり理論的・抽象的な研究が中心だったのですが、最近は学生に教える場合でもベンチャービジネスなどいろいろなものが出てきていますので、お金の流通などできるだけ具体的に教える工夫を懲らしています」

最後に、亀川先生は早稲田塾生にこんなメッセージもくれた。

「高校生のみなさんは、大学は卒業したら勉強は終わりだと思っているかもしれませんね。でも、大学の役割はそれだけではありません。これだけ社会のスピードが速いと自分の価値が陳腐化してしまうこともあります。そんなとき、いつでも自分を環境に合わせて再び生き返らせられる場所としても、大学は存在していると思っています。またそんな場所として存在できるように教える側も柔軟性を失わないように、といつも心がけているのです」

もはや大企業に寄生して安泰に生きていける時代は過ぎ去りつつある。未来のゴーン氏やビル・ゲイツ氏をめざし、自分の手で人生を切り拓いていきたい――そう思っているあなたを応援してくれる先生が、立教大学にはいる。

こんな生徒に来てほしい

好奇心が旺盛な人にぜひ来てほしいですね。環境の変化にもすぐに馴染んで、そこから新しいものを生み出してゆけると思いますから。私の研究室は2・3・4年生が合同で授業を行うので、上級生は下級生に負けちゃならないと必死になるみたいですね。下級生も上級生に教えてもらえるので、しっかり勉強しています。

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