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Good Professor

松波 淳也

松波 淳也 教授
法政大学
経済学部

松波淳也(まつなみ・じゅんや)
1989年に慶應義塾大学経済学部卒業。91年には、慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程を修了し、95年に慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得。共著として『東南アジアの環境変化』(法政大学出版局)などがある。

経済学的手法が人々の行動を変えていく

経済学部の校舎に向かうとき必ず通るのが写真の「法政Vブリッジ」。Vを目指して歩けば校舎にたどりつく。それが経済学部なのだ!
経済学部の校舎に向かうとき必ず通るのが写真の「法政Vブリッジ」。Vを目指して歩けば校舎にたどりつく。それが経済学部なのだ!

松波淳也先生の研究テーマは、環境経済学である。具体的には、ゴミとリサイクルの経済学を研究している。  

環境経済学と聞いて、首をかしげる塾生がいるかもしれない。環境問題を解決するのに、経済学がどうして役立つのかと――。しかし、こうした考え方は、「経済学」を狭い意味で捉えているために起こるのだという。

「そもそも経済学は、どうすれば多くの人々の幸福を実現できるかを考える学問です」と、松波先生は教えてくれた。

実際、環境政策に環境経済学の考え方を応用していくのは、世界的な流れになっている。 「従来の環境問題に対する政策は、『規制』が中心でした。しかし最近、社会的な環境負荷を削減するためのコストが、どうすれば最小になるのかという観点が重要になってきています。その一例が、『環境政策における経済的手法』という考え方です。  

これは損得に訴える形で、行動の変革へ誘導する政策手法です。

環境への負荷が高い企業、例えば環境を悪化させる懸念のある廃液などを出している企業ですね。そうした企業には、『廃液を出してもいいけれど、負荷を軽減するための費用を払ってくださいよ』と言うわけです。逆に『お金払うのが嫌だったら、やめてください』とね」

従来なら環境に悪い行動は、実行者の倫理観に期待するか、行政が命令でやめさせるほかなかった。しかし経済的手法という考え方の下では、企業が行動を選べるようになる。そして結果的には、環境保護に向かっていく。行動を変える力が、環境経済学にはあるのだ。

これまで環境政策に大きな影響を与えてきたのは、主に自然科学系の研究者だったという。環境に排出された物質が、人体にどのような悪影響を及ぼすのか。あるいは、どれくらいの汚染物質が自然界に漏れ出たのか。そうした分析には、自然科学系の研究者が必要だったからだ。しかし自然科学系の研究者は、社会システムの専門家ではない。つまり人々の行動を考える専門家ではない。そこに若干の弱さがあった。

「従来の環境政策は、あまりにも倫理面を強調しすぎる傾向にありました。もちろん倫理は重要です。なければ状況が改善しませんので。ただし、環境政策上マイナスに働いた面もあります。

具体的には、環境を良くするには我慢しなくてはならないという考え方です。電気をつけたいけれど消せとか、車に乗った方が便利だけれど我慢しろ、などなど。倫理的に突き詰めていくと、昔の室町とか江戸時代に戻れ、という議論になりかねません。環境保護には多くの方は賛成すると思います。でも、江戸時代にかえる気はないですよね(笑)」

「見えない」環境負荷を経済学で扱う

経済学部のC棟。半透明のドームが付いているのでひときわ目立つ建物だ。
経済学部のC棟。半透明のドームが付いているのでひときわ目立つ建物だ。

松波先生によれば、自分の行動がどれほど環境に負荷をかけているのかが明確になり、その行動によって自分に経済的な損得が生まれるなら、あえて環境に負荷をかける人は少なくなるだろう、という。確かにそうだろう。

だが最近の環境問題は、環境に負荷を与えていると自覚できないものが多い。例えば、地球温暖化の問題。CO2を削減しないと、どんどん地球の温度が上がってしまうとわかっていても、そのためにクーラーを止めるわけではない。毎日、大量のゴミを出していても、それで環境が悪化すると考えるわけでもない。こうしたある種「見えない」問題を、経済学として扱う難しさが、環境経済学には付いて回る。

環境経済学について、先生は次のように説明してくれた。

「環境経済学も、基本的には経済的な利益と損失とで考えます。ただし、伝統的な経済学だと利潤に表れない部分は計算しません。しかしその見えない利潤を示して、うまく市場の中に乗せれば、人々を合理的な行動に導けるのです」

こうした問題の解決法の1つが、環境評価である。誰もが感じる価値観を、単位換算する方法だ。例えば、森林の価値を評価するとしよう。以前なら土地の値段と、せいぜい材木の価格ぐらいしか評価できなかった。これでは世界遺産の白神山地でさえ二束三文の値打ちになってしまう。そこでアンケートを使って仮想の市場を創り出し、人々が考える価値の平均的な金額をはじき出すのである。

アメリカでは自然保護団体の提出した環境評価が裁判所に認められ、保護派の勝利に終わったことがあるという。現実は、どんどん進んでいるのだ。

そして先生の研究は、さらに先進的である。

「見えない価値を表した環境評価は、環境経済学における値付けの一分野にすぎません。しかし僕は、もう少し広い視野で考えています。

経済学全体を見渡したとき、自然環境と人間は見えにくくなっています。そこで古典派経済学といわれる一つ前の経済学で扱っていたものを、今の経済学にうまく応用しようと考えています。そうすれば、環境経済として非常に体系だったものになるはずですから」

環境問題は、かなり切迫した状況にある。温暖化によって水没間近となった国が生まれ、その国民の海外移住計画も論議されている。近年、当たり前のように起こっている異常気象も地球環境の悪化と無関係ではない。具体的に人々の行動を変えるシステムが、今すぐにも望まれている。そうした意味からも環境経済学への期待は年々、いや日に日に高まっているといえよう。大げさではなく、人類に貢献できる学問なのだ。

こんな生徒に来てほしい

「やはり公害問題や地球環境問題に関心のある学生に、ゼミに入ってもらいたいと思っています。あとは好奇心を持って、何にでも積極的に取り組む人でしょうか。リーダーシップを取れるのも重要だと感じています」

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