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Good Professor

山室 恭子

山室 恭子 教授
東京工業大学
大学院 社会理工学研究科

山室 恭子(やまむろ・きょうこ)
1979年、東京大学・文学部国史学専攻を卒業。東京大学・大学院人文科学研究科国史学(日本中世史)専攻博士課程に進み、82年より東京大学史料編纂所助手。93年、東京工業大学助教授。98年より現職。著書に『黄金太閤』『群雄創世紀』『黄門さまと大公方』など。『中世のなかに生まれた近世』で、サントリー学芸賞(思想・歴史部門)。

40人が夢中で議論する講義

班ごとに論議をしている学生。自由に議論をしている姿が印象的だった
班ごとに論議をしている学生。自由に議論をしている姿が印象的だった

「本年度も前期コラムランドが盛り上がった場合に限り開講します」

東京工業大学のホームページには、そんな説明が付されていた。まるでイベント告知のようだが、実はある人気講義の解説だ。講義名は「コラムランド2」。同大の山室恭子教授が、学生の文章力を向上させるために作り上げた講義である。

講義開始のチャイムが鳴ると、プリントが配られる。取材当日に配られたのは18枚だった。すべて受講生が書いた作品だ。ただし、名前や学籍番号など、個人を特定するものは、まったく書かれていない。その代わりに番号が付けられている。1~10と番外1~8。この「番外」と書かれていない10作品だけが、講義で取り上げられるという。半年の講義で全ての学生の作品を取り上げるため、6~7作品は当番の学生が書く。残り3~4作品の枠を狙って、当番以外の学生が投稿する。講義では"乱入"と呼ばれる。今回は3作品の枠に対して11作品が投稿された。競争は熾烈だ。

作品のスタイルはバラエティーに富む。小説あり、詩あり、会話文だけで進行する話あり。ただし、テーマは毎回決められている。取材当日のテーマが「かみ」だった。

「抽象的な話だけど、ところどころ具体的なんだよね」
「表現は好きだな。でも一番最後の"つっこみ"はいらないと思うな」
「僕もそう思う。途中から展開が読めたし」
「その方がスッキリするよね。でも、なんかそこに作者のこだわりがありそうじゃない?」

教室の学生全員が議論に熱中していた。1グループ6~7人で7班。40人を超える学生が夢中に話し合っている姿を大学の講義で見たのは、随分と久しぶりのように感じた。文章を書き、そして批評し合う面白さに、全ての学生が魅了されているようだった。

「答案やレポートの文章は、先生しか意識していません。自分の文章に立ち会うのが、『神様の目』だけといえばいいでしょうか。でも、神様より隣の友達に読まれる方が怖い。だからこそ緊張感があり、書く快感も味わえるのです」と、山室先生は学生が夢中になる秘密の一端を教えてくれた。

「自由に意見を言えるために、作品を批評するときは全て匿名です。この講義を立ち上げた当初から、匿名性が確保されないと講義そのものが成り立たないと思っていました。

ただ批評が終わったら、名乗りでなくちゃいけない。作品を読んでくださった方への礼儀ですから」

ボランティアで講義を手伝う学生も

講義が終わった後は「お茶会」と呼ばれる学生の交流会が催され、楽しそうに個々の作品について語り合っていた
講義が終わった後は「お茶会」と呼ばれる学生の交流会が催され、楽しそうに個々の作品について語り合っていた

グループごとに意見をまとめると、10作品から1~3位までを選び、1位に3点、2位に2点、3位に1点を投票する。さらに作者へのメッセージがあれば、カードに感想を書いて、回ってくる封筒に入れる。その後、班の意見を発表する場なども設けられているが、作者は匿名のまま。作者の発表は、講義の一番最後だった。各班の点数を合計し、10位から発表していくのだ。  

「マジかよ?。お前だったの」。作者の名前が発表されると同時に、同じ班の仲間から声があがった。酷評していたのかもしれない。作者も照れ笑いを浮かべながら壇上に歩いていく。作品について作者自らが説明し、質疑応答を受け、メッセージが詰まった封筒と先生の講評が付いた原稿を渡され席に戻る。わずか7~8分の時間だろう。だが順位に関係なく、壇上の学生はみんな嬉しそうだった。
講義が終わった後に取材した学生は言った。

「毎週か各週ぐらいで作品を提出しているので、読まれないこと、『番外』になってしまうことが、一番気になります」

批評の怖さよりも、作品を発表し論じられる魅力が上回っているのだろう。
「講義を楽しんでもらいたいな、と思っています」と先生は語った。そして先生の願い通り、講義に関わっている全ての人が「楽しんで」いるようだ。  

講義でプリントを配り、作品の「番外」を決めたりする学生は、昨年の受講生だ。ボランティアで講義の手伝いに来ているという。--どうして手伝いを?--という質問に、「この時間帯は外せない授業を取っている仲間が多いので、空いているのは僕だと(笑)。個人とも新しいつながりができるから楽しいですよ」と教えてくれた。  

講義が活発になればなるほど、大量の講評付けに追われる先生は、取材当日、朝の7時から大学で赤ペンを握っていたという。それでも「すごい作品にも出会うのですよ。それも魅力ですよね」と微笑む。

どうしてこの講義が、ここまで人を夢中にさせるのか。塾生には不思議かもしれない。講義に参加した私は少し理解したように感じたが、ここでは書かないでおきたい。

興味のある塾生は、以下のホームページアドレス(http://www2.valdes.titech.ac.jp/~column/)をたずねてほしい。なんと講義をホームページで展開している。勉強の合間にどうぞ。

こんな生徒に来てほしい

「文章力に思いっきり自信のない人(笑)。良い意味で、一般的な東工大のイメージと、実際の東工大生は違うと思います。情報をしっかりと集めて、東工大に入学してください」

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