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Good Professor

冨田 勝

冨田 勝 教授
慶應義塾大学
環境情報学部

冨田 勝(とみた・まさる)教授
1957年生まれ。
81年、慶応義塾大学工学部数理工学科卒。85年カーネギーメロン大学コンピューター科学科博士課程修了。

工学博士。医学博士。88年には米国科学財団大統領奨励賞受賞。

最先端の研究に参加できるキャンパス

このガリバー池の名物は、多いときには100羽以上も集まる鴨。ちなみに鴨を眺めながらお茶を飲むことをカモティーと呼ぶらしい
このガリバー池の名物は、多いときには100羽以上も集まる鴨。ちなみに鴨を眺めながらお茶を飲むことをカモティーと呼ぶらしい
280台のワークステーションが学生に開放されている湘南藤沢メディアセンター。SFCに通うことになれば必ず使うことになる施設だ
280台のワークステーションが学生に開放されている湘南藤沢メディアセンター。SFCに通うことになれば必ず使うことになる施設だ

日本におけるAO入試の歴史は、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)とともに始まる。1990年、日本で初めてのAO入試が同キャンパスの総合政策学部と環境情報学部で行われたからである。現在のように少子化が叫ばれていた時代ではない。多様な入試方法が活発に議論されていた時期でもない。しかし、SFCの2学部は従来の試験方法ではかれない学生が必要だった。

「オールAをめざして勉強するタイプはSFC向きではないですね」 冨田勝先生はSFCに必要な人材を笑いながら説明する。

「時間は有限でしょう。だから自分が本当に面白いと思う授業や研究プロジェクトに時間を使ってほしいです。与えられた課題をきちんとこなすだけの人はSFCに向きません」

冨田先生の言葉は挑発的に聞こえるかもしれない。しかし、SFCが求めている人材は、従来の教育機関で求められていた人材とは違う。なぜならSFCの2学部が、従来の学部と全く違った性質を持っているからだ。通常、日本の学部は学問領域の名前がついている。文学部しかり、経済学部しかり。だが、総合政策や環境情報という学問領域はない。

「普通の学部なら124単位も取れば、一応その学問領域を学んだことになります。しかし、SFCで何となく124単位を取っても専門知識を身に付けたことにはなりません」

「一方、SFCでは最先端の研究プロジェクトが数多く行われています。世界でほかに誰もやっていないプロジェクトに参加して、その研究成果を語れるようになって卒業してもらいたいのです。正解のない問題に全力で取り組んでもらいたい。そのことが教育で一番重要だと考えています」

通常、大学の研究室は3年次より始まる。しかしSFCでは、2年次からだという。必要な専門知識を2年間で積み上げるのではなく、1年間で興味のもてる分野を探し、実際のプロジェクトに取り組むなかで必要な知識を自ら学ぶ。それがSFCの学生に求められている態度だ。SFCで行われている最先端の研究プロジェクトは、何と100以上もある。

「必ずやりたい研究が見つかります」 冨田先生は太鼓判を押してくれた。

独創的な人材は社会でも活躍

メーンゲートから続く道はタロー坂と呼ばれる。人名にちなんだのかと思いきや道の両側に植えられているタローツリーという樹木から付けられたという
メーンゲートから続く道はタロー坂と呼ばれる。人名にちなんだのかと思いきや道の両側に植えられているタローツリーという樹木から付けられたという

自らの意志をもち、興味をもって新しいことにチャレンジする。そうしたSFCで望まれる人物像を評価するシステムはなかった、と先生は語る。

「こんな学生は、高校の成績がむしろ悪かったりしますから。多くの高校生は勉強がつまらないと思っている。しかし、試験があるからやむを得ず勉強する。そして試験が終わったら忘れる(笑)。そんなことを繰り返す教育システムは、本当に何とかしなければいけません。日本の教育をSFCから変えていけたらと思っています」


じつは冨田先生も、受験システムにとらわれず自由に勉強してきた。慶応義塾幼稚舎出身の先生は、大学卒業まで受験と縁がなかったからだ。

「いまでもよく覚えているのは、中学時代の自由研究ですね。1年のときのテーマは、ポーカーの確率でした。5千回ほどひとりでポーカーをして、役の確率を調べました。数式もなく、どの教科にも属さない研究でしたから、先生に怒られるかと思ったんですよ。ところが逆に評価されましてね。『これ面白いねぇ』と。それで2年のときには、もう少し複雑な五目並べの必勝法を研究しました(笑)。もし高校受験があれば、こんな自由研究はやらせてもらえなかったでしょうね」

独創的な人材を集めてきたSFCは、設立から10年以上も経過した。多くの学生が社会に巣立ち、さまざまな分野で活躍を始めている。

プレイステーションのゲーム「サイ」を作りあげ、100万本を売ったのは冨田先生の研究室で学んだ学生である。また日本マイクロソフトに入社し、日本語版「WORD97」を企画し、その功績を買われてアメリカのマイクロソフト本社に起用された人も、冨田先生の教え子。いま彼女はシアトルに在住し、MS-WORDの多言語化の企画担当をしているという。

そのほかにもオレンジジュースのナンバー1ブランド「なっちゃん」を企画した人もSFCの卒業生など、枚挙にいとまがない。

SFCで才能を伸ばす学生を集めるためには、すべての学生をAOで選ぶのが理想だ、と先生は語る。
「AO入試を批判する人のなかには、予備校がAOの指導を始めれば、面白い人材は集まらなくなるという人がいます。でも僕はそうは思わない。学生の興味を引き出すような指導が行われれば、高校も活性化すると思いますから」

「できれば、AO入試を実施する大学がもっと増えて、『高校時代は自分の興味を追求して、AO一本で好きな大学に入ろう』なんて学生が出てきてほしいですね」 AO入試を実施する大学は徐々に増え、いまや実施する私大は全国で約180校にもなる。先生が望む未来は意外に近いかもしれない。

こんな生徒に来てほしい

得意なこと、好きなことに夢中になっている人ですね。そしてその成果をきちんと発表できる人です。動物は遊びながら学ぶといわれています。ライオンの子どもが追いかけっこして遊ぶのは、将来の狩りに備えた学習過程である、という考え方があります。人間においても、遊びたいという本能は、学習本能と表裏一体なのではないでしょうか。興味があることを気がすむまで徹底的にやる、これが教育本来の姿だと思っています。

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