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Good Professor

西原 博史

西原 博史 教授
早稲田大学
社会科学部

西原 博史(にしはら・ひろし)教授
1958年東京生まれ。83年早稲田大学法学部卒業。89年同大学大学院法学研究科博士課程修了。89年同大学社会科学部助手。92年同専任講師。94年同助教授。99年より現職。96年学位取得(法学博士)。

主な著作に『学校が愛国心を教えるとき』(日本評論社)、『平等取扱の権利』『良心の自由(増補版)』(ともに成文堂)などがある。
西原研究室のWebアドレスはhttp://www.f.waseda.jp/nissie/

個人の自由を尊重しない国と日本国憲法

西原研究室のある社会学部棟(14号室)
西原研究室のある社会学部棟(14号室)
晩秋の早稲田大学正門付近
晩秋の早稲田大学正門付近

早稲田大学社会科学部教授・西原博史先生のゼミには、徹底したディベートがあることで有名だ。これはあるテーマに対して、ゼミ生を肯定派と否定派に分け、自分たちの主張の正当性を訴えながら、相手を完膚なきまでに論駁していく討論バトルのこと。ときには「打倒西原ディベート」なる西原先生vs全ゼミ生という壮絶なディベートも行われるようだ。

というわけで、西原先生はさぞかし強面の論客だろうと想像して、やや及び腰で研究室を訪れた。ところが、迎えてくれた先生は柔らかな物腰で静かな笑みをたたえていた。ちょっと拍子抜けするくらい優しい先生なのである。

西原先生の専門は「憲法学」。例のディベートのことを聞く前に、まずその専門の話から伺った。

「日本憲法は統治機構と基本的人権の2つからなっています。私個人はその人権論について、とくに精神的自由の領域を研究しています。思想・良心・信教・表現などにおける自由の権利と限界についてが私の研究テーマのひとつです」

この精神的自由についての研究は、日本の現状を分析しながら、諸外国との比較(主にドイツとの比較)を行っている。そこから見えてくるのは、諸外国と比べてもあまりにも個人を尊重しない日本という国のあり方と、あまりにも国についての認識が乏しい日本国民の姿だという。

西原先生の研究テーマには、もうひとつ学校教育の場における基本的人権の問題がある。

「『日の丸』『君が代』問題などもそうですが、この国の教育行政は教育現場をますます一色に染めあげようとしています。それに強い違和感を感じます。子どもたちが自由に考え自由に発言できない状況が進んでいて、それに危惧感をもっています。子どもたちも基本的人権の担い手なのですが、その人権があまりにも尊重されていないのが現状ですね」

この問題を憂慮している西原先生は、学外でも積極的に発言を展開している。頻繁に講演会などで訴え、係争中の裁判には自ら鑑定意見書を提出して、その先頭に立って活動しているほどだ。

ディベートで自分の主張を相対化させる

さて、冒頭で紹介した西原研究室のディベートについて聞こう。

「ディベートの授業はゲームとしてやっています。テーマを立ててチーム分けして争うのですが、必ずしも自分が主張する側のチームに入れるとは限りません。法律を含めたさまざまなツールを使いながらチームとしての主張をして、相手チームを切り崩していくゲームなんです。勝ち負け判定のポイントは、ツール組み立ての論理性、法律外知識も動員した説得力、さらに相手チームの論理的矛盾を即座に衝けるアドリブ能力などになります」

参加する学生たちは自分たちの意見を主張しながら、常に相手チームの反論を想像しなければならない。それが自分たちの主張を相対化させることになる。ディベートを繰り返してそうした技術を身につけることにより、単純なものの見方から、より深化した見方ができるように学生たちが変わっていくという。
それにしても、ゲームとはいえディベートはゼミ生たちを熱く沸かせるようだ。

「ゼミの中でもときどき行いますが、集大成は夏合宿で丸1日かけて行うディベートですね。ゼミ生たちは1ヵ月くらい前から準備に入って理論の構築を始め、合宿ディベートの前日は全員が徹夜で取り組んでいます。ゲームだといっても負けると悔しいですから、参加者はかなり熱くなります。終わってから全員で酒でも飲まないと、ギスギスしたものが残ってしまいますね」

エキサイティングな討論バトルの様子がうかがえる。ここで取り上げられるテーマは、法律を例にした違憲・合憲あるいは死刑制度の是非などが多い。そして、ここで身につけたディベートの技術は、4年次の卒論研究や、将来社会に出てから大いに役立つことはいうまでもない。

簡単に割り切らず悩みながら学んでいく

ゼミ生たちとの集合写真
ゼミ生たちとの集合写真

西原先生は社会科学部の教授である。早大社会科学部ではどんなことが学べるのか、よくわからないという受験生も多かろう。そのあたりを先生から説明してもらった。

「法律の問題にしても、経済の問題にしても、それぞれが独立しているわけではありません。とくに新しい問題になるほど、いろいろな分野の成果を取り入れて解決を図らなければならない問題が多くなります。その解決を探るためには幅広い社会科学分野の基礎知識と、そのなかの専門的な知識が必要になります。それらを学ぶのが社会科学部ということですね」

したがって同学部はそれぞれの専門をもった多彩な教員で構成され、学生たちもそれぞれのテーマで、いろんな方向に向かって研究ができることになる。非常にエキサイティングな学部だとも語る。

西原先生の専門は憲法学である。では、社会科学部で憲法あるいは法律を学ぶことの意味については――。

「法律はいわば道具ですから、それをしっかり使いこなすことが大切です。ただ、社会科学部で学ぶからには、それを使う自分の位置、何のためにどういう文脈のなかで使うのかを明確にする必要があります。ある問題にぶつかったときに、その政治的意味、国の政策的視点、経済的・社会的な視点、それに弱者の立場も含めて考えなけばならない。その意味では、法学部で学んでいる多くの学生たちの割り切り方とは違って、この学部で学ぶ学生のほうが悩みは深くなるかもしれません」

最後に西原先生は受験生諸君に向けて、こう語ってくれた。

「大学で学ぶということは、教えられた知識を自分でどう使っていくかを学ぶということです。知識はしょせん道具ですから、その道具で突きつけられた課題をどう解決していくのか。それを研究することは、非常に面白いです。私自身も楽しんでやっています。そのことを高校生のみなさんにもぜひ伝えたいですね」

こんな生徒に来てほしい

いま社会のなかで起こっている様々な問題を、自分の問題として考えられる人ですね。社会にはさまざまな問題があって、みんなが困っています。その解決の道を探りながら、自分自身も成長していける人がいいと思います。

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