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Good Professor

小林 良彰

小林 良彰 教授
慶應義塾大学
法学部

小林 良彰(こばやし・よしあき)教授
1954年東京生まれ。77年慶應義塾大学法学部政治学科卒。82年同大学大学院法学研究科博士課程政治学専攻修了。84年米ミシガン大学客員助教授。 85年米プリンストン大学客員研究員。86年慶應義塾大学法学部助教授。91年より現職。94年米カリフォルニア大学バークレー校客員研究員。97年英ケンブリッジ大学ダウニング校客員教員。

著作は『選挙・投票行動』(東京大学出版会、以下同)『現代日本の政治過程』『公共選択』(韓国・中国語訳あり)など多数。小林先生のHPはコチラhttp://www.law.keio.ac.jp/%7Ekobayasi/

市民意識の側から政治学に光をあてるパイオニア

小林研究室のある慶應三田キャンパス研究棟
小林研究室のある慶應三田キャンパス研究棟

今回紹介する慶應義塾大学法学部政治学科教授の小林良彰先生は、国政レベルの選挙分析などでもおなじみの日本を代表する政治学者のひとりである。政治学といえば国家あるいは為政者についての研究が多いが、市民の側から政治に光をあてるという先駆的研究をなしてきた。

「私の研究を一言でいえば、市民意識の研究になります。政策決定をする政治的エリートの研究に政治学はなりがちですが、それらと相互補完にある市民(有権者)側の意識の面から私は研究しています」

「現代日本は制度としてのデモクラシーはたしかに整っています。しかし、その実情は必ずしもうまく機能していません。なぜうまくいかないのか? あるいは市民は何を考え、政治に何を望んでいるのか。それらを客観的なデータから分析研究してことが中心となります」

自身の研究について小林先生はそう説明してくれた。

77年から大がかりな独自の世論調査を実施し、すでにその回数は100回を数えるという。その調査データと分析には定評があり、内外の多くの政治学者やマスコミにも利用される重要な調査として位置付けられている。

「推量や推察で政治を語るのは簡単ですが、それだけでは政治状況の把握も変革もできません。私が実施している投票行動とか政治意識に関する世論調査は、推量や推察ではない体系的な議論をするための客観的なデータをめざしているわけです」

最近の日本の政治をめぐる傾向については、先生独自の世論調査から次のように分析してくれた。

「最近は政治に対して観客気分の市民が多くなっています。意思決定に積極的にかかわろうとしない代わりに、責任も負おうとしない。『そう決まったものなら仕方がない』と追認してしまう人たちですね。〝追認観客的民主主義〟とでも言いますか。こうした傾向はとくに20代・30代の人に顕著ですね」

高校生もふくめ、若い世代の政治への無関心傾向を小林先生は由々しき問題だと嘆く。

理想のデモクラシーの形を探る21世紀COEプロフェクト

明治45年竣工の伝統を誇る慶應大学図書館旧館
明治45年竣工の伝統を誇る慶應大学図書館旧館

いま日本の主要大学では「21世紀COEプログラム」が盛んである。これは文部科学省が各大学の卓越した研究教育拠点を選定し助成する制度で、慶應義塾大学でもいくつかのプロジェクトが展開されている。 そのひとつに「多文化多世代交差世界の政治社会秩序形成・多文化世界における市民意識の動態」プロジェクトがある。その拠点リーダーこそが小林先生である。

「デモクラシーにひとつの決まった形などあるわけではありません。米国には米国の、イスラム世界にはイスラムの、あるいは一党優位でないとデモクラシーが保てない国々など、多様な形のデモクラシーが世界中に同時に存在しています。そうした多様なデモクラシーを相対化して、包括的なデモクラシーの形について考察していくのが、このプロジェクトの目的となります」

「イラクにしろアフガニスタンにしても、どんな政治体制の国家であっても、そこには必ず市民が生活しています。その市民がどのような政治意識を持っているのかを調査分析し、それぞれの市民意識を尊重しながら、そのうえでどの国の形にも突出しないデモクラシーの形を考えてみようという試みなんですね」
これまで小林先生は日本の市民意識についての調査研究を中心としてきたが、この手法を海外にまで広げ、汎世界規模のデモクラシーのあり方を模索するという壮大なプロジェクトとなる。

プロジェクトは03年4月から始まり、5ヵ年計画で行なわれている。すでに、アジア・アフリカ・北米・ロシアなど各国での現地調査や研究会・シンポジウム、さらに調査結果のデータベース化などの作業が順次進められているという。

「グローバリゼーションなどというと、いまは〝アメリカンゼーション〟とほぼ同義的に使われていますね。たしかに米国はすばらしい国ですが、そのデモクラシー制度が唯一絶対のものではありません。米国型とは違ったデモクラシーの形もきっとあるはずなのです」

研究について語る小林先生の口調はひたすら熱い。このCOEプロジェクトに参加できるのは大学院生からだが、学部の学生あるいは現役高校生にも大いに関心を持ってもらって、公開シンポジウムなどでは積極的に参加してほしいとも語る。

政治社会の変革をどう実現するか ―――それが政治学の任務

図書館旧館前に立つ慶応のシンボル・福沢諭吉像
図書館旧館前に立つ慶応のシンボル・福沢諭吉像

慶應義塾大学政治学科のゼミ演習は3、4年次の学生が対象で、小林ゼミでは例年15~16人のゼミ生を受け入れている。ゼミ生がそれぞれ個別のテーマを立てて研究し、その成果を毎秋の三田祭で発表するという定番のスタイルで進められる。

「私自身は市民レベルの政治意識を研究していますが、それにならってゼミ生まで同じものを研究する必要はないと考えています。それぞれが自分の関心に基づいてやりたい研究をすればいいのです」
「私が教えられるのは、研究の前提となる分析手法など方法論的なことです。そのあと、ゼミ生がその方法を利用してどんなテーマで研究するかはそれぞれの問題意識によりますね」

そう話してから、小林先生は03年度のゼミ生の研究論文集を見せてくれた。

「市民参加型社会」「有権者意識」「報道番組と視聴者」「育児支援」「多世代共生社会」「貧困解決」等々――その多岐にわたる研究テーマを見ていると、ゼミ生たちがそれぞれの問題意識をもって意欲的に研究に向かっている様子がうかがえる。学生たちへの先生の指導方針については次のように語る。

「私は欧米の大学で教壇に立った経験もありますが、日本の学生と欧米の学生をくらべると、基礎学力のレベルに違いはないと思っています。では何が違うのかといえば、オリジナリティーでしょうね」

「知識を覚えるのには長けているのですが、それをどう使っていくかという点でやや欠けている学生が日本では多いような気がします。学んだ知識を有機的に結びつけながら有効に使っていく。そうしたオリジナリティーをぜひ身に付けてほしいですね」

最後に、いまこの時代に政治学を学ぶことの意義について熱く語ってくれた。

「いまの政治社会システムが完璧であるならば、政治学など必要ないのかもしれませんね。でも、現実にはどこか『おかしい』ところがあり、それをどう変えたらよりよい政治社会が実現するのか――それらを考えるのが政治学の任務です」「現代に生きている私たちは現実の政治社会の枠組みから逃れられません。『おかしい』『変だ』と思うことを変えるためには、積極的に働きかけていくしかありません。その方法を学べるのが政治学科ということになります」

こんな生徒に来てほしい

何事にも興味と関心にあふれている人に来てほしいです。自分を取り巻いている環境――自然科学であれ社会科学であれ――環境のあり方に興味をもっている人だとさらにいいですね。自分だけ「人間的に向上したい」と思っても、それをただ考えているだけでは何も変わりません。現実の環境や社会に具体的にかかわっていくことで、はじめて変わり得る可能性が生まれてきます。自分をよりよく変えたい、社会をよりよく変えたいと考えている人はぜひ一緒に学んでいきましょう。

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