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Good Professor

関 満博

関 満博 教授
一橋大学
大学院 商学研究科

関 満博(せき・みつひろ)教授
1948年富山県生まれ。71年成城大学経済学部卒。76年同大学大学院経済学研究科博士課程修了。73年東京都労働経済局商工指導所勤務。89年東京情報大学専任講師・助教授をへて、95年専修大学助教授。98年より現職。
『現場主義の知的生産法』(ちくま新書)、『世界の工場/中国華南と日本企業』(新評論)、『地域産業の未来』(有斐閣)など著書多数。

経済学・中小企業研究に新たな地平を開く

関研究室のある国立キャンパス第一研究館
関研究室のある国立キャンパス第一研究館

そもそも一橋大学の前身は旧制東京商科大学であり、商学部は一橋大学を代表する学部である。商学研究では日本屈指の地位を誇る一橋大学商学部および商学研究科は、質の高い教授陣を擁していることで知られる。

今回紹介する関満博先生もそうした有名教授の1人である。その関先生の主な専門テーマは「産業論」「中小企業論」「地域経済論」だ。

「地域における産業と企業についての研究をしています。私の場合の地域というのは、人の姿が見える範囲、いってみれば人口3~10万人規模のスケールのこと。その地域において、産業と企業がどう影響を与えているのかというのが主な研究内容です」

個々の研究では地域の範囲を限定していると語る関先生だが、その研究フィールドは広く、日本全国から東アジア一帯にまで及ぶ。そこで研究対象にしているのはもちろん中小企業。これは大学教員になる前の前職との関連からだという。

「東京都の商工指導所に16年間勤務していまして、都内の繊維や機械産業の経営指導・コンサルティングをやってきました。16年間、毎日のように都内の中小企業や町工場を見てまわり、指導していたんですよ」

日本経済の分析には日本独自の経済理論が必要

商学分野で屈指の蔵書誇る一橋大学附属図書館
商学分野で屈指の蔵書誇る一橋大学附属図書館

日本の戦後の経済復興・高度成長は、大企業と中小企業(下請け)とからなる独特の二重構造によって成し遂げられたとされる。その中小企業の実態を長年にわたって見つづけてきた関先生は、その経験から、日本経済を分析するには独自の経済理論をうち立てる必要があると説く。

「我々の前の世代までの経済学を簡単に総括すれば、西欧の経済理論を移入して、それで日本経済を分析しようとしてきたわけです。しかし、そうした分析手法ではどうしても無理が出てきます。むしろ、日本あるいはアジアの現実から理論を抽出して、西欧とは違う新しい枠組みをつくる必要があると思います」新しい経済理論を構築して、経済学・中小企業研究に新たな地平を開く――それこそが、関先生が生涯を懸けて挑むライフワークなのだ。

努力惜しまなければ、人生捨てたもんじゃない

JR国立駅から大学前学園通りまで桜並木が美しい
JR国立駅から大学前学園通りまで桜並木が美しい

先の東京都商工指導所に関先生が迎えられたのは、まだ大学院に在学中のとき。ずいぶんと早熟の才気だが、じつは高校時代から大学の前半まで“落ちこぼれ”だったと語る。

「高校は有数の進学校に進学したのですが、入って2ヵ月で落ちこぼれちゃいました(笑)。受験のためだけの勉強というのが、どうしても私の肌に合わなかったんですかね。それから6年間はい上がれないで苦しみ抜き、それが大学3年生ごろまで続きました」

折から、当時の大学キャンパスには全共闘運動のあらしが吹き荒れていた。そうした学生運動に触発されるなかで、関先生はかつ然と方途が開けるという経験をする。

「当然あれだけの歴史的な学生運動でしたから、学問的にも社会的にも刺激を大いに受けましたね。結論的にいえば、自分は人より6年間遅れていることに気づかされました。それからは、目が覚めたように猛然と勉強をするようになります。その6年間ほどの遅れは、大学4年生から大学院の2年間でほぼ取り戻せたと思いますね」

それまでのスランプがまるでウソのように猛然と勉学に向かい、やがて大学院生の身分で東京都に迎えられるまでになる。

「人生での数年間の遅れなんて、ちょっとしたキッカケと努力で簡単に取り戻せますよ。どうってことありません」

将来君たちの多くも壁に突き当たることもあるだろう。あるいは文字どおり現実に落ちこぼれかかっている受験生もいるかもしれないが、関先生のこうした経験はいい励みにもなろう。

企業見学ひとつでもおろそかにしない真剣さ

一橋大学商学部のゼミ演習は3・4年次の学生が対象となる。関先生のゼミでは3・4年次の学生が合同で、それに大学院生やギャラリー(他大学の学生や社会人聴講生)まで加えて、総勢40人ほどにもなろうかという大所帯で開かれている。

「3・4年次合同でゼミをやっているのは、先輩・後輩の関係を継続させてゼミの実績をあげていくのがねらいです。それに院生とギャラリーを加えることで、物事を多面的にいろんな視点からとらえることが学べます。ギャラリーから影響を受ける学生も多いようですね」

なかなかにエキサイテイングな関ゼミの様子が伝わってくる。前期ゼミのメインは夏の合宿。国内合宿と海外合宿を隔年で行ない、毎回20~30社の企業を訪問する。それも大半が中小企業となる。

「学生には『ただ漫然と工場を見るだけで終わらせるな。工場側に必ずひとつ何かの提案をするように』と言い放って、それを条件にしています。それでみんな真剣になりますし、見方も真剣になってきますからね」

3年前の中国合宿のときには、そのまま大学を休学して現地の企業で働きはじめた学生もいたそうだ。企業見学ひとつでもおろそかにしない真剣さが伝わってくるエピソードだ。なお、こうした合宿にも、大学院生からギャラリーまでゼミ生全員が参加するのだという。

さて、関先生の学生たちへの指導方針については「自分のことは自分でやれ」が基本となるらしい。

「とにかく、学生には勇気を与えたい。我々の仕事はただ知識を伝達することではないですからね。勇気と希望を与えたいんです。ゼミの後期はそれぞれがテーマを見つけて本格的な研究になりますが、学生たちには自分で考えて自由にやらせるようにしています。私はただ様子を見ているだけ。細かいことを四の五の言っても始まりませんからね」

ほかのゼミ生の研究レポートを見て「己がナンボの者であるかを知ればいい」とも言い放つ。なかなか豪快な指導法ではある。

ちょっと話し方にも時々べらんめえ口調が交じったりして実に豪放磊落な関先生なのだが、またこんな一面もある。

「私はふだんテレビを一切見ないようにしています。車の運転も基本的にしません。これで年間約1000時間が浮きます。1000時間あれば本3冊分の執筆ができます。すでに51冊の著作を出版していますが、いつか年齢(現在56歳)以上の出版物をものにしたいと考えているんですよ」

豪快さのなかにも、自らを禁欲的なまでに律している関先生なのだ。

こんな生徒に来てほしい

もはや死語なのかもしれませんが、「志」のある若い人と出会いたいですね。人間にとって一番大切なのは、その志と社会的使命感ではないかと思います。そのためには、いろいろなものに関心をもつこと、それと本質を見極めようとする積極的な関心が必要です。

大学選びでは偏差値だけで決めるのではなく、その大学や学部のもつ特定の力とか、どんな先生がいるのかをきちんと見極めて選んでほしいですね。ただ、大学の先生はかなり激しく人事異動しますから、それだけは頭に入れておいたほうがいいですよ(笑)。

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