1. ホーム
  2. GOOD PROFESSOR
  3. 132 慶應義塾大学 理工学部 川口 春馬 教授

Good Professor

川口 春馬

川口 春馬 教授
慶應義塾大学
理工学部

川口 春馬(かわぐち・はるま)教授
1944年神奈川県生まれ。66年慶應義塾大学工学部応用化学科卒。68年同大学院工学研究科修士課程修了。68年鐘紡入社。73年慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了。77年慶應義塾大学専任講師。78年米マサチューセッツ州大学博士研究員。83年慶應義塾大学助教授。89年より現職。2000年より近畿大学分子工学研究所客員教授を兼任。

主な著作に『ポリマーコロイド』(共著・共立出版)、『ナノアフィニティビーズのすべて』(共著・中山書店)、『微粒子・粉体の最先端技術』(監修・シーエムシー)などがある。

高分子化学における粒子研究のトップリーダー

川口研究室がある慶應矢上キャンパス16-D棟
川口研究室がある慶應矢上キャンパス16-D棟

今回紹介するグッド・プロフェッサーは、慶應義塾大学理工学部応用化学科教授の川口春馬先生。高分子化学の粒子研究では世界のトップリーダーとして活躍している先生である。多忙のなか取材にもにこやかに応じてくれた川口先生だが、専門である「高分子化学」の話から聞いていこう。

「私たちの身の回りにある材料は金属とセラミックス・有機材料の3つに大きく分けられます。このうち有機材料が高分子でできた材料であり、プラスチックはじめ繊維・フィルム・ゴムなどに代表されるものです。これらの高分子材料のより深い理解と新たな材料の開発が私たちの主な研究分野になります」

高分子化学のうちでも川口先生はとくに機能性高分子の微粒子について研究している。高分子の微粒子の例としては、たとえば水性塗料は1ミクロンよりも小さなプラスチックの微粒子を膜にして、つまり粒子をつなげることで塗料として使っている。ほかにも、木工用接着剤や光沢紙・化粧品なども同じ原理でつくられているという。しかし、これらは機能性高分子微粒子と呼ぶほどの機能を持ち合わせているとは言えない。

高分子粒子に“足”を付けることで広がる応用分野

慶應義塾大学矢上キャンパス
慶應義塾大学矢上キャンパス

「私が研究しているのは、このように高分子の微粒子をつなぎ合わせるのではなく、1粒ずつの粒として利用する方法です。たとえば病気の元になる抗原が人間の身体に入ると、それに対抗して抗体がつくられます。この抗体をあらかじめ高分子の粒に結合させて水のなかに入れておき、そこに病気の人の血液を落としてやります。すると抗原と抗体が反応して、粒同士が結合を始めます。病気によって結合が起こると光の透過度が変化しますから、それによって病気であるか診断できるのです。現在30種類の病気について診断できるようになっています」

こうした高分子の粒子を使った研究は、バイオ技術の発達とともに長足の進歩を見せている。生体内のタンパク質とある粒子とを結合させることで、なぞの多いタンパク質に迫る研究すらある。また、ある粒子に蛍光物質を入れると発光する性質を使い、光の屈折率からセンサーに利用したり、多様な発色からバーコード機能への利用なども進んでいる。

さらに川口先生は、なんと高分子粒子に〝足〟を付ける研究にも着手している。この分野の研究では他の追随を許さず、世界のトップを走る。

「粒子に高分子の鎖を足(ヘア)のように付けてやる研究です。温度によってその足は伸縮するようにしてあります。つまり温度を管理することで、足のなかに入れた試薬を自由に出し入れできるわけです。こうした性質をいろいろ付与してやることで、医療だけでなく将来の応用分野は広がると思います」

21世紀COE「ライフコンジュゲートケミストリー」とは

緑のアーチをくぐって矢上キャンパス
緑のアーチをくぐって矢上キャンパス

現在、日本の主要大学では「21世紀COEプログラム」が盛んである。これは各大学の優れた研究プログラムを文部科学省が選定しそのための研究費を助成する制度で、川口先生も慶應義塾大学のプログラムのひとつ「機能創造ライフコンジュゲートケミストリー」の拠点リーダーを務めている。

この「ライフコンジュゲートケミストリー」とは、人々の暮らしや健康・医療の水準を高めることに貢献する化学のこと。同プログラムはその世界最高水準の研究拠点をめざしたものだ。

「このCOEプログラムは、ライフ(生活・命)という縦糸とケミストリー(化学)という横糸が織りなす新しい実学となります。つまり学問のための学問を排し、新たな機能材料を創製して、その実用化を図ることが具体的な目標になります。科学(化学)に新たな価値を付与して、社会に貢献することをめざしたものです」

このCOEプログラムには慶應義塾大学理工学研究科の基礎理工学と総合デザイン工学から17人の教員が横断的に参集している。そして、それぞれの得意分野を生かしながら研究に励んでいる。

実用化に向けた研究内容の一端を紹介すると、ガス濃度を遠隔感知できるセンサーをはじめ、血液内のマグネシウムイオン・カルシウムイオン濃度の同時測定センサー、シックハウスの原因であるホルムアルデヒドの検出センサーの開発――などが進行中。すでに一部は実用化に向けた実験に入っているという。

また、このCOEプログラムには若手研究者を育成するという目的もある。そのため17人の教員スタッフのほかに、大学院博士課程の30人の院生も参加している。

「院生たちには給与を支払っています。彼らには、COEの研究以外にも各種講義の受講や研究発表などの義務を課しています。国際学会などでも積極的に発表するようになって、早く国際的な研究者に育ってほしいと思います」

社会に貢献する科学の創造と次代の人材育成をめざすCOEプログラム――いまこれらは、川口先生のもとで着実に推進されている。

自身を育てることに一生懸命になれ!

ここで慶應義塾大学理工学部についても触れておこう。同学部の入試は5つの大きな分野で分けられた「学門」別で受験し、入学後1年間はこの学門別で学びながら、2年次から所属学科を絞り込むという方式を採用している。

「どの学門に入るかによって、どの専門学科に進めるのか一応は決まっています。ただ、そのカリキュラムは非常にフレキシブルです。たとえば応用化学に進むにしても、ひとつの学門だけでなく、3つの学門から進めるようになっています。ですから、学生は緩やかな縛りのなかで1年間かけて自分の進路の選択をすることができるわけです」

これは慶應理工学部の大きな特徴で、また他大学にはない誇るべきところだろうと川口先生。また、学生たちへの指導方針については次のように語ってくれた。

「自分自身を育てることに一所懸命になれる学生に期待します。本人たちが意欲的になれば、私などはちょっと背中を押すだけでいいのです。そのうえで、前に進むうちにこんなに素晴らしいことがあるのだという経験をさせたいですね」

学生・院生たちに向けるまなざしも、かぎりなく優しい川口先生である。

こんな生徒に来てほしい

1歩でも2歩でもいいから前に進んで、自身を大きくしたいと願う人に来てほしいです。たぶんその手助けはしてあげられます。ややもすると今の若い人たちはバーチャルな世界に引き込まれがちです。しかし我々の世界の足場は「ものづくり」にあります。やはり、実体とつき合うのを楽しめる人でないとちょっと困りますね。

GOOD PROFESSOR
バックナンバー
大学名から教授を検索
学部名から教授を検索
掲載内容に関するお問い合わせ

資料請求・各種お申込み・お問い合わせはコミュニケーションセンターへ

0120-173-573

月~土 / 11:00~20:00 日・祝 / 10:00~18:00
携帯電話PHSからもご利用頂けます。

  • 資料請求
  • 無料体験
校舎一覧