- 柴田 悟一 教授
- 横浜市立大学
商学部 経営学科 横浜市立大学 副学長
柴田 悟一(しばた・ごいち)教授(副学長)
1941年名古屋市生まれ。65年横浜市立大学商学部卒。73年神戸大学大学院経営学研究科博士課程修了。73年横浜市立大学商学部専任講師。74年同助教授。84年同教授。98年商学部長。03年同副学長。主な著作に『人的資源の獲得戦略』『データに見る日本企業の経営風土』(いずれも同文館)、『経営管理の理論と実際』(共著・東京経済情報出版)などがある。
「経営組織論」「経営管理論」の実践的研究の第一人者

- 副学長室のある事務棟(1号館)
2005年の新年度から、横浜市立大学は大幅な学制改革を行なう。現在、文系と理系に分かれている学部をひとつに統合して、新たな「国際総合科学部」を発足させ、従来どおりの医学部との2学部制になる。新たに誕生する国際総合科学部はこれまでの学部や学科の枠が取り払われ、学生たちは自由に横断的・学際的な教育を受講できるようになる。
この学制改革を中心になって推進しているのが同大学副学長の柴田悟一先生である。まず今回の改革内容について話してもらった。
「いまの若い世代の期待にこたえられる学制に変えたいというのが改革の出発点です。目標に『21世紀の実践的なリベラルアーツ教育を行なう国際教養大学』というのを掲げまして、実社会で生き抜くための知恵と能力を身につける実践的な教養教育の実施をめざしています」
商学部は国際総合科学部の「経営科学系」へと発展

- 横浜市大正門から続くイチョウ並木
ところで柴田先生は副学長であると同時に、また商学部の教授でもある。横浜市立大学といえば、医学部とともに看板学部の商学部への進学をめざしていた受験生も多かろう。今回の改革でその「商学部」はどうなるのか――。
「新しく統合予定の国際総合科学部は3学系7コース制を採用し、その1学系に『経営科学系』というのを設けますので、従来の商学部をめざしている人にも違和感なく来ていただけると思います。では何が変わるのかといいますと、従来からの商学部の教育のほかに教養教育や語学教育も横断的に受講できるようになり、学習機会が非常に広がるということです」
学習機会が広がるぶん学生の自覚も促される改革になりそうである。 柴田先生の専門は経営学で、現在の研究テーマは「経営組織論」「経営管理論」。この分野では第一人者と目される。
「経営学の研究はケーススタディーが中心で、現実に起きている問題を扱います。私の研究も実践的なものが多く、経営学の研究者はコンサルティングができないといけないというのを信条にしています」
そのことば通りの実践的成果も多彩だ。たとえば神奈川県で1・2を争う財政赤字であった某市の財政を黒字に転換させた実績をもつ。現在は、寂れゆく某商店街の再生活性化を図るべくコンサルティングを展開中だ。
「こうしたコンサルティングでも企業経営でも、重要なのは『理念』です。理念のないところに発展などない。これは企業ばかりでなく、大学でも病院でも組織であれば必ず必要なものです」
「元気なリーダー」に求められる4つの条件

- 晩秋の雨の日の横浜市大キャンパス
いま柴田先生が主に研究しているのは人事管理。とくにリーダーシップについてだという。このテーマでの講演活動も多いという。
「講演を頼まれたときは『ニワトリを殺すな』というキーワードで最近よく話すようにしています。1羽のニワトリが傷つくと、周りのニワトリは寄って集まってつついて殺してしまうんですね。人間社会も同じで、だれか失敗すると周りが批判の集中砲火を浴びせて、その人のやる気まで奪ってしまうケースが多すぎます。むしろ現代のリーダーに求められるのは、部下の失敗を単に批判するのではなく、それを反省・分析して成功に導くことにあります」
「そのためには、リーダーは部下を褒めること。褒めることで集団が成長します。これを集団維持機能といいますが、良い例が03年プロ野球で優勝した阪神タイガースです。リーダーたる監督・コーチが選手を褒めることで集団の機能が高まった例ですね」
柴田先生が挙げる優れたリーダーの特質とは、
(1) 性格的強靭性(自信・情緒的安定)
(2) 主尊性・積極性
(3) 分析的・合理性
(4) 社交性(対人的順応性) ―― の4つだという。
「よく日本人は情に流されやすいといわれます。しかし、私が行った日本企業の課長を対象にした調査では、必ずしもそうではありません。とくに優れたリーダーほど決断力があって、分析的・論理的で、情に流されることが少ないですね」
このほか経営戦略やNPOの経営学などについても研究中で、近く病院のマネジメントの研究も始めたいとする。自らの研究実績に満足することなく、まだまだ若々しく意欲的な柴田先生の笑顔が印象的だ。
「データをして語らしめ」る実証的研究
横浜市立大学商学部のゼミは2年次の後期から始まる。柴田ゼミは人気ゼミのひとつで、例年15~20人ほどのゼミ生を受け入れているが、その倍を超える応募があるそうだ。選抜の条件は「元気がいいこと」と先生は笑う。
「私のゼミはフィールドワークが中心になります。2年次のゼミ生はグループ研究で、3年次からはそれぞれが卒論を見据えた個人研究になります。我々の研究では文化人類学のKJ法という分析手法を駆使することになります。まず現状の把握をし、それを分析し、改善策にまとめて、プレゼンテーションをするという手順にこだわっていきます」
04年度の2年次ゼミ生の研究は、先の某商店街の活性化問題に取り組んでいる。現状の改善策にとどまらずに、5年後・10年後を見据えた提言も織り込みたいとする。3・4年次の個人研究では、リーダーシップや経営戦略などの観点からテーマを選ぶ人が多いという。
なお柴田ゼミの卒業論文は立派なハードカバー付きで製本され、卒業ゼミ生全員に卒業謝恩パーティー会場で贈呈される。それに学校図書館にも収蔵され、広く閲覧に供されてもいる。それがゼミ生たちの大きな励みになっているようだ。 学生たちへの指導方針については次のように語る。
「ゼミのモットーは『データをして語らしめよ』です。つまり抽象論を語るな、必ず証明せよということです。ただ学部の学生が取り上げる研究ですから、ほとんどのケースで必ず先行研究があります。その2つ以上の研究資料を読み込み、そのうえで自分なりの考え方を打ち出すように指導しています。先行研究をサーベイして、現実を見て、自分の考えをもつこと。これが基本だと教えています」
そして、学生たちを褒めながら育てる。自らの理論を実践していることは本人の言を待つまでもない。
こんな生徒に来てほしい
やはり元気のいい学生ですね(笑)。だからといって、気が小さいとか人前ではあがるような学生のゼミ受け入れを拒否しているわけではありません。そうした弱点は場数を踏むことで改善されますし、我々もいろいろ手助けの用意があります。元気になろうという意欲があって、努力を惜しまない人を大歓迎します。

