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Good Professor

大山 耕輔

大山 耕輔 教授
慶應義塾大学
法学部 政治学科

大山 耕輔(おおやま・こうすけ)教授
1958年東京生まれ。85年慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位取得退学(94年法学博士号取得)。86年東京大学社会科学研究所助手。88年筑波大学社会科学系専任講師。91年同助教授。96年米マサチューセッツ工科大学訪問研究員。99年慶應義塾大学法学部助教授。01年より現職。03年英ロンドン・スクール・オブ・エコノミックスにてアカデミック・ビジター。

主な著作に『エネルギー・ガバナンスの行政学』(慶應義塾大学出版会)『パブリック・ガバナンス』(共著・日本経済評論社)『行政指導の政治経済学』(有斐閣)などがある。

納税者や生活者の側から民主主義システムを検証

大山ゼミ生たちとの集合写真
大山ゼミ生たちとの集合写真
大山研究室のある三田キャンパス研究室棟
大山研究室のある三田キャンパス研究室棟

「ほかの専門性の高い学科にくらべて、大学の政治学科で学ぶことは非常に多様な学び方が可能となります。そもそも政治というのが多様なものですから、学び方も多様になるわけですね」

そう話すのは、慶應義塾大学法学部政治学科教授の大山耕輔先生だ。続けて大山先生は同大学の政治学科について語る。

「政治学というと国家とか行政側の視点から見た研究が多くなりますが、慶應の政治学科では、むしろ行政を利用する納税者とか生活者の側から見るようにしています。つまり、市民として政治や社会とどう関係するのか、あるいは他者との関係はどうするのかを教育や研究の主眼にしているのが特徴です」

大山先生自身も同学科の卒業生であり、学生たちが自由で伸びのびとしているところは、先生が現役だったころから変わらない伝統だとも。

ニッポン行政システムの弱点を補う「ガバナンス」

三田キャンパス正門を入ると南校舎に迎えられる
三田キャンパス正門を入ると南校舎に迎えられる

その大山先生の専門は「行政学」「政策学」で、研究のキーワードは「ガバナンス」。これは、納税者や生活者の側から行政のあり方を検証することを指す。まさに同大学政治学科の視点とも重なる。

「いま地方自治の“三位一体改革”というのが行なわれつつありますが、これはもう少し本質から考えてみる必要があります。日本では行政サービスの受益と負担を国が決めていますが、たとえばイギリスではミニマムのサービスだけを国が保証し、それ以上のサービスは住民が負担することになっています。その選択は住民の判断に任されています」

閉塞感のあるニッポンの地方自治や政治の状況を一変させるキーワードこそが、このような受益と負担の関係を自分たちで選択できるようにする「ガバナンス」の定着なのかも知れない。また、日本の官僚の“得意技”ともされる行政指導についても、視点を変えると違った様相が見えてくるとも言う。

「行政指導というのは日本官僚制パワーの象徴のように思われがちですが、じつは各業界団体の側が巧みに利用している形跡もあります。つまりカルテルのおそれがあって業界団体でできないことを役所の行政指導という形を取れば独禁法違反に問われないというようなやり方ですね。こうしたことは納税者や生活者の存在を無視した手法とも言えますが、これを糾していけるのもガバナンスあってこそとなります」

日本ではこれまで納税者や生活者の声は無視されがちであったが、ようやく情報公開やオンブズマン制度など政治のガバナンスが機能するようにもなりつつある。その顕著な例が「エネルギー・ガバナンス」だという。

「日本の原子力政策はこれまで推進派の思惑だけで決定・推進されてきたといっていい。ところが、96年の新潟県巻町の住民投票で原子力発電所建設反対が多数を占めるという結果が出ました。原発の安全性に対する不信感もありますが、物質的な豊かさの追求よりも環境に配慮したライフスタイルを住民が選択したことになります。これは、日本の行政におけるエポックメーキングなできごとになりました。今後はこうした選択が増えていくものと思われます」

そして大山先生自身も、納税者や生活者にとって使いやすい政治の仕組みやあり方をガバナンスの視点で研究していきたいと語る。

若者たるもの「独立自尊の納税者たれ!」

利用者で活気あふれる慶應義塾図書館
利用者で活気あふれる慶應義塾図書館

慶應義塾大学政治学科のゼミ(研究会)は3・4年次の学生が対象となる。大山ゼミでは例年20人ほどの男女ゼミ生を迎える。

「3年次のゼミでは、まず行政学に関する基本的テキストの講読からはじめ、それと並行して秋の三田祭で発表するグループ研究に取り組んでもらいます。三田祭が終わると、それぞれ卒論に向けた個人研究が始まります。4年次のゼミ生は1年間かけて卒論研究に充てることになります」

三田祭で発表する研究テーマについてはゼミ生と毎年相談しながら大山先生が決め、ゼミ生たちはグループに別れて調査研究し論文にまとめる。ちなみに04年度の研究テーマは「地方自治体は『自治』体なのか」であった。

また卒論のテーマについては、行政や政策に関わるものであれば何でもOKとのこと。学生たちへの大山先生の指導方針は「独立自尊の納税者たれ!」だそうだ。

「独立自尊は慶應義塾の教育理念で、何ものにも依存しないで自己実現をはかれる人になれという意味です。また納税者であるというのは、徴収された自分の税金が有効に使われているのかチェックする権利ということになります。つまりは、常に公共政策に関心を払ってほしいということです。この2つを忘れなければ、あとは自由にやってくれて構わないと思っています」

なお大山ゼミでは、早稲田大学政治経済学部の縣ゼミとの合同セミナーを毎年開いている。昼間の両ゼミの研究発表のあと、夜は酒席での交流会になる。屋形船を貸し切って行なわれた04年の交流会は大いに盛り上がったそうだ。

物言わぬ有権者や少数者に不利な行政を許すな

グローバルセキュリティ・リサーチセンターの拠点の東館

話は代わるが、学生による「授業評価アンケート」が慶應義塾大学では実施されている。いわば学生が評価する「教員の通信簿」といったところだが、大山先生はこの評価結果を自らのURL上に包み隠さずに公表している。プライドもあってなかなかできることではないが、いかにも律儀な先生らしい。

「自分では自分のことがよく分からないものですから、こうした外部評価には大いに意義があります。この評価を自ら公表することは、私自身が緊張感をもって講義に臨み、さらに内容を良くしようという動機づけにもなります」

最後に、高校生諸君に向けて大山先生は次のような話もしてくれた。

「たとえば年金の問題。今この制度の運用については、高校生もふくめ若者には不利な(高齢者に有利な)政策が決められつつある傾向にあります。民主主義には多数決の原則があって、数の多い世代が圧倒的に有利だからです。つまり、少子化時代の若者たちはいつまでも不利な立場に置かれることになりかねません。高校生のみなさんはこうした問題をどう考えるのでしょう? こうした不公平な政治システムは明らかによくありません。こうした弱点を克服するための最大の論点がガバナンスということになります」

こんな生徒に来てほしい

積極的で前向きな人、人間的な魅力に富んだ人、そんな“人間力”のある人といっしょに学んでみたいと思います。大学生くらいになりますと、こちらが教えるというより一緒に学ぶという感じのほうが強い気がします。ですから、学ぶ意欲があって前向きに問題を考えようという人に来てもらって、いっしょに学べたらいいと思いますね。

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