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Good Professor

野村  一夫

野村 一夫 教授
國學院大学
経済学部

野村 一夫(のむら・かずお)教授
1955年生まれ。社会学者。國學院大學経済学部教授として情報関連科目を担当。法政大学大原社会問題研究所研究員も兼任。

『社会学感覚』(文化書房博文社)『インフォアーツ論―ネットワーク的知性とはなにか?』(洋泉社)『子犬に語る社会学』(洋泉社)など著作多数。
野村先生のWebサイト『ソキウス』はコチラ
http://www.socius.jp/

社会学専門サイト「ソキウス」をWeb発信

音楽好きの野村先生のこだわりが見える音響機器。アンプはちょっとマニアックな逸品
音楽好きの野村先生のこだわりが見える音響機器。アンプはちょっとマニアックな逸品

みなさんは「情報教育」と聞いて何を思い出すだろうか?
コンピューター言語・ネットワーク構築法あるいはOS(Operating System)の構造――どれも間違ってはいない。事実、大学情報教育の多くはコンピューター情報処理を中心としてカリキュラムを組んでいる。

「情報処理は情報機器という『入れ物』の話ですよね。それだけではダメで、コンテンツ(中身)についての教育が必要なのです」

國學院大學経済学部で情報教育を担当する野村一夫教授はそう語り、記者にひとつの質問を投げかけた。

「SE(システムエンジニア)として働く人たちは理系と思われがちですが、じつはその半数近くが文系出身者なのはどうしてだと思いますか?」

あらためて考えてみれば難しい話ではないのかもしれない。これだけインターネットが騒がれて情報教育に注目が集まっているのは、コンピューターがネットワークとしてつながり大量の情報が瞬時に行き来するからだ。情報という「中身」の取り扱いに習熟しなければ、本当に価値あるシステムなど組めるはずもない。

野村先生の専門は社会学だ。とくに社会学の導入教育については学会でも常に注目を集めてきた。インターネット上での大活躍もあって、それこそ社会学分野の「情報通」にとっては日本一の有名教授だろう。

「わたしのWebサイト『ソキウス』を公開したのが95年です。ASAHIネットがWeb作成をはじめて受け付けた初日8月15日に申し込んだほどのユーザーですから。フロッピーディスクをプロバイダーに郵送して公開してもらう――そんな時代でした」

ここに社会学を本格的に扱った日本初のサイトが誕生する。95年当時、PCネットといえば掲示板でテキストベースでやり取りするのが精一杯。画像をやり取りするには回線のスピードが遅すぎ、検索サイトのヤフージャパンもまだなかった。音声端末のみとしての携帯電話やPHSに当時のだれも違和感などなかった。個人でWebサイトを立ち上げるなど一部の専門家しかできない――多くの人はそう考えていた時期だった。

そうしたなかネットにおける野村先生の活躍が始まる。社会学に関連するアカデミックなコンテンツを次々と発信してきたのはもちろんのこと、時事批評や文化批評も手掛けていく。オンライン書店「ビーケーワン」に寄稿する書評などで、気付かないうちに先生の文章を読んでいる塾生もいるかもしれない。

経済学部はじまって以来の人気ゼミに

大学構内に神殿があるのも神道文化学部がある國學院大學ならでは
大学構内に神殿があるのも神道文化学部がある國學院大學ならでは

そうした実績に培われた情報教育は学生たちからの人気も高い。04年初めて募集したゼミ演習では定員20人に80人もの学生が殺到。同大の経済学部始まって以来と話題にもなった。

「いやいや、経済学部で『メディア文化論』なんてゼミを開設したので、経済学をあまり勉強したくない学生が集まったんですよ」

野村先生はそう笑うが、ゼミ生への課題も多く、決して楽とはいえないようだ。それだけに、集まった学生たちの意気込みが伝わってくる。「優秀な学生が集まった」と先生もうれしそうに語るが、意外な悩みもつい口にした。学生たちが学びつつ溜まれるような場所がキャンパスのなかで意外と少ないのだという。

「あーだこーだとモニターの前で言い合うような時間が本当は重要なんです。コンピューターネットだけでつながって情報をやりとりするだけでは、学生もなかなか成長できませんので」

コンピューターが媒介しようとしまいと、情報の「送り手」「受け手」にはそれぞれ人がいることに変わりはない。「真の情報教育」をめざす先生としては、人とのつながりを無視するわけにはいかない。そのため先生の教授室は学生たちに開放され、はからずも「溜まれる」場所として提供されることとなった。

だからこそ、ゼミ生たちは情報の送り手になることが求められる。自らのWebやブログ(weblog)のサイト更新は重要な課題のひとつとされる。

「たくさん書くのが大切だと学生には強調しています。とにかく大量に執筆することを求めると、学生たちが『ネタ探しモード』に入って、どんどん感受性が広がっていくからです。そうした学生のコンテンツづくりを助けるために、わたしのサブゼミではニュース批評やマンガ批評の書き方も教えています」

「『内輪ウケ』ではなく、後輩や受験生など他人が読むことを意識しプレッシャーを感じながら書く。つまり、ちょっと背伸びしながら執筆することで伸びていくんですよ」

「違和感」こそが新しい何かをつくりだす

大学正門。キャンパス改装工事が進み、工事中の建物も後に見える
大学正門。キャンパス改装工事が進み、工事中の建物も後に見える

IT情報化が日進月歩で進むこの国だが、真に系統的な情報学を施すのは容易ではない。なんと情報教育については定番となるようなテキストすら出版されていないのだという。02年にやっと『情報学辞典』が出されたものの、ありとあらゆる内容が詰まっているだけで十分に整理はされていない。

そのうえ、野村先生の所属はあくまで経済学部だ。先生からの提案が受け入れられる柔軟性が大学側にあるとはいえ、経済学部本来の専門分野と完全に一致しているわけではない。そのため、社会学研究に必要な教育環境やITシステムは先生自身が作り上げることも多い。実際、経済学部専用のサーバーシステムは先生が先頭に立って整備したという。

「やはりザラザラとした違和感はありますよ。でも、それが重要なんです。その違和感こそが新しい何かをつくり上げていくことになりますから」

一流の社会学学究でありながらインターネットという新領域での知的蓄積を開拓してきた野村先生だが、いま情報教育という新分野も一気に切り拓こうとしている。しばらくはその活躍から目が離せそうもない。

こんな生徒に来てほしい

とにかくメディアが好きな学生ですね。興味があって、とことん突き詰めてしまう人。面白い映画を見たら、その監督の過去作品を全部見ないと気が済まないような。いまの学生は「感動した」とか簡単に言うわりに、じつは淡泊な人が多いような気がします。やはり、若者らしい勢いのある人に来てもらいたいですね。

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