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Good Professor

小原 實

小原 實 教授
慶應義塾大学
理工学部 電子工学科 大学院 総合デザイン工学専攻

小原 實(おばら・みのる)教授
1947年東京生まれ。76年慶応義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了。以後、慶応義塾大学工学部電気工学科助手・講師・助教授をへて、93年同教授(95年より電子工学科に改称)。04年同大学大学院総合デザイン工学専攻長。この間に米Los Alamos National Laboratory訪問研究員・理化学研究所訪問研究員(現在も継続中)。82・92・01年レーザー学会最優秀論文賞受賞。

主な著作に『光・量子エレクトロニクス』『レーザー応用工学』(ともにコロナ社)『レーザー応用光学』(共立出版)などがある(著作はいずれも共著)。

新レーザー研究の世界的トップリーダー

小原研究室がある慶應矢上キャンパス26棟
小原研究室がある慶應矢上キャンパス26棟

慶應義塾大学理工学部電子工学科教授の小原實先生の専門は「レーザー」研究。この分野の草分けである先生は、現在は世界の最先端にあって、その牽引者の地歩にある。その研究は大きく2つに分かれる。レーザーの技術開発とその応用開発である。

「新しいレーザーの技術開発では"フェムト秒レーザー"に取り組んでいます。これは従来のレーザーの熱加工と違い、熱が伝わる前に加工してしまう非熱加工が特徴です。非平衡の物理を使った新しい分野の加工になります」

と小原先生は説明してくれた。

そのフェムト秒レーザーの応用は工業用と医療用に分かれるという。

「工業用の用途としては、半導体などの微細加工先端材料加工金属加工光導波路作製などに応用されます。たとえばLSIなどの製作過程で欠陥が生じた場合、フェムト秒レーザーを使用すれば、その欠陥個所が1ミクロン以下の微細なものでも除去できます。しかも非熱加工ですから、周囲の正常な配線に影響を与えることがありません」

すでに工業用の同レーザーは実用化され、先生の教え子のひとりが起業して、従業員70人の企業にまで成長させている。

「起業したその彼は博士(工学)の学位を取得しています。これからのハイテク企業の経営者には、必要な学位ではないかと思いますね。産業界での活躍と愉しい人生を博士の学位が約束する時代になったといえないでしょうか(笑)」

もうひとつ。同フェムト秒レーザーの応用で期待されるのは医療の分野だ。

「いま医療分野ではレーザー遺伝子導入や火傷・皮膚移植の診断への応用が研究され、いくつかは実用化目前のところまできています。レーザーによる診断や治療の特徴は、低侵襲(ていしんしゅう)治療といって、患者さんに痛みを与えないで治療できることです。将来的には、メスを使わないでレーザーによる出血をともなわない手術も可能になります。その研究もすでに始めています」

このような小原先生の研究開発は、ほとんどのものが世界初をめざしたものだ。また、こうした研究開発はほかの医学系大学や民間企業・研究機関との共同研究によるものも多い。

「これからの日本の産業を発展させていくためには、デザインとか設計などでの活躍が重要だろうと思います。わたし自身は『極限技術を駆使して産業界に貢献する』をモットーにして、こうした研究や開発に取り組んでいるつもりです」

そう語る小原先生。その語り口は淡々として穏やかで、世界のトップリーダーでありながら少しも偉ぶるところなど微塵も見えない先生だ。

国際的に通用する学生を育てたい

丘の上にそびえる矢上キャンパス創想館
丘の上にそびえる矢上キャンパス創想館

慶應義塾大学理工学部電子工学科の特徴について小原先生は次のように語ってくれた。

「まず、学生の数に対して教員の数が多いことですね。ほかの私大と比較しても、教員の学生対比は2倍くらいになります。それだけ学生1人ひとりに目が届き、きちんとした教育がなされる環境にあることになります」

「また、近年は約8割の学生が大学院に進んでいます。そのため学部と大学院の6年間を通したカリキュラムを組んで、電子工学に関するスキルがしっかり身につくよう配慮されています」

同大学理工学部では、学部4年生になると各教員の研究室に配属され、最終学年の1年間を卒業研究に打ち込む。小原研究室でも例年5人ほどの学生を受け入れているが、その選考基準は「やる気」であり成績は二の次だという。その指導方針について小原先生は次のように語る。

「国際的に通用する学生を育てたい――というのがわたしの基本方針となります。そのため、研究室の学生にはできるだけ国際会議等で研究発表をさせるようにしています。中心は大学院生ですが、例年ひとりくらいは学部学生にも発表させています。理工学を学んでいる学生にはシャイな人が多かったりするのですが、国際的な場で発表したりすると大きな自信につながりますからね」

小原研究室では、国際化を促すために論文はすべて英文での執筆が義務づけられる。また、大学院卒業はTOEICの700点以上獲得か、国際会議での発表が条件になるそうだ。

21世紀は”光”つまり電子工学の時代

慶應矢上キャンパスに連なる研究棟建物
慶應矢上キャンパスに連なる研究棟建物

いま小原研究室には大学院の博士課程履修の院生が6人も在籍し、また他の医療機関や研究機関・企業などから出向している社会人の共同研究員もいる。学部学生の卒論研究生にとってはまたとない研究環境といっていいだろう。そして小原先生の指導成果のほどだが、この研究室からすでに24人もの課程博士を送り出し、05年度も新たに3人の博士が誕生する予定だという。

まさに飛ぶ鳥を落とすほどの勢いの小原研究室ともいえよう。しかし視点を「電子工学」の世界一般に広げてみると……

「必ずしも高校生のみなさんにきちんと理解されて人気がある分野とはいえないのではないか」

などと危惧も口にした。そして、電子工学を学ぶ魅力について次のように熱弁を奮う。

「いま理工系学生たちに人気があるのは機械工学の分野で、ロボットですとか自動車などについて学びたいという人が多いようです。しかし、ロボットも自動車も現在はコンピューターで制御されていて、これらは機械工学というより電子工学の分野の占める割合が大きくなっています。したがって卒業生の就職先も電子工業・電子情報系ばかりでなく、最近は機械メーカーなどあらゆる領域に及んでいます」

さらに、レーザー研究の魅力については――

「レーザー研究の醍醐味は物理学を追究しながら工学に貢献できるところです。ですから非常に奥の深い世界だといえます。20世紀は『エレクトロニクスの時代』といわれましたが、21世紀は『フォトニクスの時代』つまり"光"の時代だといわれています。これからは光がいろいろな分野で使われるようになりますから、光についていろいろ知識を身につけることは活躍の場を無限に広げることになりますね」

君たちもその無限という可能性にかけて、電子工学あるいはレーザーの世界に目を向けてみてはいかが――

こんな生徒に来てほしい

まず元気のある人! 高校のときに勉強以外の部活などでも存分に活動したといえる人だとさらにいいですね。次に好奇心が旺盛な人。まだ架空のものでも構いませんから、自分の将来に大きな夢を持っているような人ですね。これらを総合すると「やる気のある人」ということになるでしょうか。それに大きな声ではいえませんが、子どものころから親の言いなりだけで育ってきたような人にはあまり来てほしくありませんねぇ(笑)。

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