- 鈴木 和幸 教授
- 電気通信大学
電気通信学部 システム工学科 鈴木 和幸(すずき・かずゆき)教授
日本信頼性学会・日本品質管理学会所属。1999年米Wilcoxon Award受賞、2003年日本信頼性学会高木賞受賞。
主な著書には『未然防止の原理とそのシステム』(日科技連出版社)『信頼性モデルの統計解析』(共立出版株式会社)『品質保証のための信頼性入門』(日科技連出版)などがある。
鈴木教授の詳しい業績などはこちらを参照してください
http://www-suzuki.se.uec.ac.jp/wsuzuki20b1/introduction/index.php
社会の安全の根底を担う「信頼性工学」

- 電気通信大学正門。最寄り駅の調布駅は新宿から特急で15分。その調布駅から徒歩5分という便利な立地にある
家電製品やパソコンあるいは遊び道具でも何でもいい。あなたが商品を買うとき、数多くあるメーカーやブランドの中からひとつのものを選ぶときの基準とはどんなものだろう?
価格が低いというのは大きな魅力だろうし、機能やデザインが充実しているかどうかで決めるという人も多いだろう。 しかし、どんなに価格が低くても機能が優れていてもまたデザインが素晴らしくても、その商品がすぐに故障しやすいことを事前に知っていたとしたら、あなたはその商品を選ぶだろうか。
「優良メーカーとそうでないメーカーとの大きな違いのひとつに、いかに故障を少なくするかという部分がしっかりと検討されているどうか――ということがあります。諸外国で日本のクルマが売れ続けていますが、こうした背景にはやはり日本車をはじめ日本製品には故障が少ないという信頼感が確実に存在するからです」
電気通信大学の鈴木和幸先生はこう話してくれた。故障が少ないということは、その商品のメーカーが信頼されているということにつながる。信頼できるメーカーとそうでないメーカー――このグローバル規模の大競争時代のなか生き残っていけるのはその内の一方であることは言うまでもない。
日本の「ものづくり」を支える信頼性工学

- 校舎改築が進んで一新した電通大キャンパス
「日本は、国土が狭く資源も少ないので原材料を生産できない。したがって外国から材料を輸入して加工し製品にすることによって成り立っている国です。つまり、日本の経済力を支えているのは〝ものづくり〟です。ものづくりの最も基本的な部分で重要になるのが『故障しない』という『信頼性』を高めていくということなのです」
鈴木先生が専門とする「信頼性工学」では、いかにシステムのトラブルをなくしていくかという研究がなされていく。
「信頼性工学でいうところの『信頼性』は、大きく3つの要素〝耐久性〟〝保全性〟〝設計信頼性〟で構成されています」
「耐久性」とは、文字どおり製品自体をどれだけトラブルがないまま長持ちさせることができるかということ。使用環境条件に適し、またそのストレスに耐えうる素材を選ぶことなどがそれに当たる。また「保全性」とは、オーバーホールなどにより航空機のジェットエンジンや新幹線などの故障を事前に抑えること、ならびに消耗した部品をすぐ交換できるか修理がしやすいか等ということだ。 そして、3つ目の要素である設計信頼性については……。
「飛行機がどれくらいの部品数で作られているか分かりますか? あまり知られていないでしょうけれど、約300万個の部品から成り立っているのです。大気圏外を飛行するスペースシャトルともなると、その倍の600万個にもなります。ちょっと気が遠くなる数ですね」
600万個の部品からなる巨大システムを正常に動かすことは簡単には想像しにくいかもしれない。しかし設計の信頼性を高めるためには、つぎのような仕組みがとられている。
「3つの部品からなるシステムがあったとします。それぞれの部品が故障しない確率が90%だとしても、3つ合わせれば0.90(90%)×0.90×0.90で、システム全体として故障しない確率は約73%まで下がってしまいます。これを『直列システム』といいます」
「一方3つの部品を同一の目的に用いて、3つのうち少なくともひとつだけが正常であればシステムとしての機能を果たす場合を考えましょう。ひとつの部品が故障しない確率を0.90とするとき、3つとも故障する確率は(1―0.90)×(1―0.90)×(1―0.90)=0.001となりますので、全体の確率1から0.001を引き、0.999が正常に動作する確率となります。これによって、システム全体が故障しない確率は格段に高くなります。これを『冗長設計』といって、設計の信頼性を高める仕組みの基本となっています」
機械を使う「人間」も視野に入れたシステムづくり
みんなが日ごろ接しているさまざまな商品の多くが、このような仕組みに支えられていることにはなかなか気付くことがないかもしれない。
「たしかに表に立つ分野ではないですね。しかし、この分野の成果があるから皆は「安全」に暮らしていけるのです。だからこそ誰かがやらなければいけない必要不可欠な分野なのです。システムや機械がますます高度化してきているため、故障をなくすシステムもそれに合わせてどんどん進歩していかなければなりません」
最近では、信頼性工学の分野でも「ヒューマンファクター」が新しい要素として取り入れられるようになってきた。機械やそれを保ってゆくシステムの信頼性が上がっても、それを使いこなす肝心の人間側がミスを繰り返していてはエラーがなくなることなどない。そういう意味で、機械を使う立場である人間のことも視野に入れたうえでシステムの信頼性を高めていくという考え方が大事となってくる。
「パニックに陥ったとき、人間の脳は旧皮質部分の働きが主となります。すなわち動物的・本能的な行動をとるということになってしまいます。いくら自動車など機械自体の性能が上がっても、運転をする人間側がパニックに陥ってしまえばどうしようもありません。これからは開発の段階において、人間のこのような側面も考慮に入れたうえでトータルな設計をすることが信頼性工学の本流になっていきます」
20世紀は、どちらかといえば機械をつくることで目的が達成されて事足りる時代だった。しかし21世紀は、次々に生まれる魅力的な新商品や巨大システム、そしてITをはじめ情報技術の発達の見られる時代となるだろう。それらと表裏一体になって「信頼性工学」は日々進化を続けなければならない。その先頭に立つのが鈴木先生なのだ。
こんな生徒に来てほしい
信頼性工学を勉強する人は「信頼性に関する専門家」になるわけです。ですから、社会の安全を担っているという自負をもって、勤勉にコツコツと努力できる人――というのがまず第一ということになりますね。










