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Good Professor

中山 幹夫

中山 幹夫 教授
慶應義塾大学
経済学部

山 幹夫(なかやま みきお)
1947年富山県生まれ。72年東京工業大学・大学院理工学研究科修士課程修了。78年富山大学・経済学部助教授。87年ノースウエスタン大学大学院客員研究員。88年富山大学教授。89年法政大学教授。97年より現職。

主な著作に『はじめてのゲーム理論』『ゲーム理論で解く(共編)』(ともに有斐閣)などがある。

”協力ゲーム理論”による経済分析研究のパイオニア

慶應義塾大学三田キャンパス
慶應義塾大学三田キャンパス

慶應義塾大学・経済学部は学部学生約4800人、教員130人あまりを擁するマンモス学部である。同学部の創設は、慶應義塾建学と同時(なんと安政5年)で、わが国最古の経済学部として幾多のエコノミストを輩出してきた。  

ここで教鞭を執る中山幹夫先生は、同学部の特徴について、次のように語る。  

「この学部は、日本の私立大学のなかでも有数の規模を誇るものです。教員の数も多く、それだけに学習メニューも非常に豊富になっています。なかでも経済理論を専門にしている先生がたくさんいて、その充実ぶりは他の大学にない特徴でしょう」  

その中山先生も経済理論を教えるひとりで、専門は「ゲーム理論」である。ゲーム理論と聞くと目を輝かせる塾生がいそうだが、「コンピュータゲームの攻略理論ではありませんから、そこを誤解しないように」と先生もクギをさす。では、ゲーム理論とは何か。  

「米国の天才的数学者ノイマンの研究によって、1928年に理論化されたものです。たとえば、ジャンケンをするとき相手に手を悟られないためには、次々にでたらめな手を出していくのが最適な選択になります。これを数学的に定式化して証明した理論で、つまり人が他人との関係のなかで合理的な意思決定をするとき、どのような行動が生まれるかを研究した数学理論ということになります」

例に出たジャンケンのように、1対1で争い、勝ち負けが常にプラスマイナスゼロになるものを「ゼロ和2人ゲーム」という。しかし、いわゆるゲームにはプレーヤーが複数参加したり、ともに勝者、逆にともに敗者になるものもある。その後「非協力のゲーム理論」と呼ばれる新理論に発展して、現在はこちらが主流という。こうしたゲーム理論が経済学の分野に応用されるようになったのは80年代のことだ。  

「それまでの経済学の理論というのは厳密さ・分析性に欠けていました。特に80年代に入ってから、それまでの理論では説明できない産業組織論・情報経済学などの問題が出てきました。そうした現象をゲーム理論によって分析して説明しようとしているわけです」  たとえば、ある1社が製品価格の値下げをすると、ライバル企業も追随して値下げをする。それを繰り返しているうちに、両社ともに倒産してしまうことがある。まさにともにゲームにおける敗者になるケースで、これを非協力のゲーム理論では「囚人のジレンマ」という。  

資本主義経済市場は自由競争の原理で争われるため、これをミクロに読み解くためには非協力のゲーム理論を用いるのが有効となる。ところが中山先生は、その対極ともいえる協力ゲーム理論にも着目して、その理論による分析研究に力を入れている。  「ノイマンの研究のなかには、ゲームの参加者が3人以上になると、結託行動が起きるというのがあるのですが、ずっと経済学では使えない理論だとされてきました。しかし、最近ではネットワークなど協力(結託)するような形態も出ていますからね」  この分野の研究は、日本ではもちろん世界でも研究者は少ない。中山先生はそのパイオニアの道を歩んでいることになる。

知識を詰め込むだけではダメ!論理的・数学的な考え方を

慶應三田キャンパス内にある福沢公園
慶應三田キャンパス内にある福沢公園

慶應義塾大学・経済学部ではゼミを重視した指導が行われている。ゼミが始まるのは3年次からで、中山ゼミでも例年10数名のゼミ生を受け入れている。ゲーム理論への関心の高まりもあって、希望者は年々増えている。  

「ゼミの4年生は卒論研究になります。3年生は、ゲーム理論・ミクロ経済学の分野から個人・グループそれぞれのテーマを決めて研究します。学部内のゼミですから、自分が研究したことをどれだけ人に説明できるのかを重視しています。それで、研究成果は秋の三田祭で発表させているのです」  

その三田祭での発表では、外から来場するサラリーマンなどにも関心を寄せる人が多いという。ゲーム理論は経済活動の只中にいる人にこそ有だからだろう。  

中山先生は淡々とした口ぶりで、難しい理論の話でもていねいに語ってくれる。そうした人柄から窺うに、さぞかし学生たちにはや用さしい先生なのかと思われたが、じつは学生には厳しいことで定評があるのだそうだ。  

「ただ丸暗記をしたり、知識を詰め込むだけの学習ではダメなのですね。論理的・数学的な考え方が大切で、飛躍的・非論理的であってはいけない。筋道の通った考え方や合理的な研究行動が必要です。ゼミでも学部の講義でも、学生の発表に対しては、その点を厳しく追及するようにしています。ですから、学生には厳しい先生だと思われているようですね」

自分の感覚とセンスで分析対象を数学モデル化していく

その中山先生から見た最近の学生観については、次のように話す。  「最近の学生は人目を気にしすぎる人が多いようです。今わからなくても恥ではないから、はっきり言えといっているのですがね。曖昧なままにしていると、当然僕に突っ込まれることになります(笑)。  一方で非常に成績優秀な学生もいて、理論でも何でもすぐに理解してわかってしまう。それはそれで実に結構なのですが、何か底が浅い。むしろこの学問を学ぶには、常に疑問を感じて試行錯誤し、一つずつ身につけていく人のほうがいいとも思っているのですが」  最後にゲーム理論を学ぶための心がまえと、その醍醐味について話してもらった。  「いま高校で数学が面白いと感じているような人には向いていると思います。ただ高校の数学と違うところは、公式を覚えて計算するだけではないところです。大学での研究は、分析したい対象を自分自身で数学モデルに定式化しないといけない。自分の感覚とセンスで問題をつくっていくということです。そうした姿勢が身につけば、経済学ばかりでなく、いろんな分野の分析にも応用できるようになります。それがゲーム理論研究の醍醐味ですね」  

ゲーム理論、とくに協力ゲーム理論は、将来の多方面への分析・応用が期待されている。この新しい分野のパイオニアである中山先生のもとで学べる学生たちは幸せだ。

こんな生徒に来てほしい

あらゆることに関心を広くもって、「なぜ?」というたくさんの疑問を感じることのできる人に来てほしいですね。それにゲーム理論は論理的に分析・研究するものですから、情緒的・文学的な思考をするより理系的な思考をする人の方が向いているようです。ただ、その理系的思考も柔らかい幼い心のままでいることが大切で、それが物事の本質を早くつかまえることにつながると思っています。

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