- 村岡 洋一 教授
- 早稲田大学
理工学部 副総長
村岡 洋一教授(副総長)(むらおか よういち)
1942年宮城県生まれ。65年早稲田大学理工学部電気通信学科卒。71年イリノイ大学電気計算学科博士課程修了。71年日本電信電話公社(現NTT)電気通信研究所勤務。85年早稲田大学理工学部教授。02年同大学副総長。主な著作に『コンピュータアーキテクチャ』(近代科学社)『スーパーコンバイラ』(オーム社)などがある。
夢を自ら達成できるコンピュータ・ネットワーク学

- 村岡研究室のある喜久井町キャンパス研究棟
早稲田大学理工学部は2003年4月から電気・通信・情報系の3学科が再編され、新たに「電気・情報生命工学科」と「コンピュータ・ネットワーク工学科」の2つの学科に生まれ変わった。早稲田大学副総長である村岡洋一先生は、後者のコンピュータ・ネットワーク工学科で教鞭を執る教授でもある。まず、再編された同学科について話してもらった。
「情報通信の分野といいますのは、無から有を生み出さないとなりません。これまでにない新しいサービスや新しい製品が常に求められています。高い創造性が必要です。理論だけを学ぶ学問とは違って、この分野は理論に実践が伴わないといけません。そうした両方の力を備えた学生を育てるのが目的です」 そのためコンピュータ・ネットワーク工学科では、新しい教育方式の試みがいくつかなされる。少人数クラスによる並列授業、大学院科目の先取り履修、2年次からの最先端研究プロジェクトへの参加、さらに卒業論文も2年次からの提出が可能――等々である。そう、やる気さえあればどんどん先に進んでいけるシステムが採用されるのだ。伝統ある早稲田大学理工学部に、かつてない魅力に富んだ学科が誕生する。
ネットワークで世界一の巨大計算機をつくる

- コンピュータの周りで談笑する村岡研究室の学生たち
村岡先生自身の専門は情報処理ハードウェアおよびソフトウェアについてだが、いま2つの大きなテーマを研究中だと語る。
「まず1つは世界でいちばん大きくて性能のいい計算機をつくろうという試みですね。これは物理的に巨大な計算機をつくるということでなくて、世界中の計算機をネットワークで結んで分散処理ができる仕組みを構築するということです。その出発は計算機のネットワークから始めますが、将来的には人間まで組み込んで、世界中の知識・情報や人のパワーまでが結集されたものを目指します。そうやって結集した計算機を使うといったい何ができるのか、それ自体も研究テーマのひとつなんです」
もう1つはインターネットのWebサイト(ホームページ)についての研究である。 「現在、世界中にどのくらいのWebサイトが存在しているのか。その調査をこの秋からスタートさせて5ヵ年計画で調べてみようと思っています。世界中のWebサイトのすべてを収集してみようということですね」
いま世界中に存在するWebサイトは30億とも40億ともいわれる。そのすべてを集めようという壮大というか、気の遠くなりそうな作業に着手しようというのである。しかも、この世界は生成消滅が激しいため、それを上回るスピードで収集しなけばならない。そのため国内外の研究者や企業などとも協力して収集にあたるのだという。 これに関連して、膨大なコンピュータ情報の検索システムも先生の研究テーマだ。
「インターネット上には文字情報ばかりでなく、音楽・映像などの情報も含まれています。たとえば、タイトルを忘れた曲を検索するときに、メロディーを歌うことで検索できるようにする。あるは身振りをコンピュータに認識させて情報検索する。そういった検索システムの研究で、メロディーを歌って曲名を検索するシステムはほぼ完成しています」。このほか遠隔地をネットワークで結びながら、あたかも同じ空間を共有しているような感じが得られる分散共創空間の研究もしていると語る。
研究の話をする先生の姿は本当に楽しそうである。早稲田大学副総長という肩書きから想像される近づきがたさはなく、いたって温厚な人柄がうかがわれる。
コンピュータ・ネットワーク工学科の学生は学部3年次まで専門課程を学び、4年次から各研究室に別れて卒業論文研究に入る。
「私の研究室では卒論研究について、まず学生に自分が何をしたいのか自主的に考えてもらうことに重点を置いています。極論を言えば、学部の3年生までは結果のわかっていることを一方的に教えられるという教育を受けてきます。しかし、実際の世の中では結果のわからないことのほうが圧倒的に多い。自分でテーマをつくり、問題をつくるようになってもらわなければならない。そうした訓練ができるのは、大学4年生の1年間だけなんですね」 先生のほうからは大枠のテーマだけを提示して、あとは学生個々の主体性に任される。自分で考え解決できるような学生たちを育てたいとする。
ICTアカデミズアプログラムのCOE拠点リーダー
話は代わるが、いま文部科学省では「21世紀COEプログラム」という一大プロジェクトを進めている。これは世界トップレベルの研究や研究者の育成をめざした大学のプロジェクトに国が助成支援をする制度で、早稲田大学でも5つのCOEが立ち上げられている。そのひとつ「プロダクティブICTアカデミズアプログラム」の拠点リーダーは村岡先生なのだ。
「ICTプログラムは情報ネットワークを使って何ができるのかを探っていくプロジェクトで、本年度から正式にスタートさせました。世界トップレベルの研究にするためには、研究内容をオープン化して、異文化交流を図ることだろうと考えています。そのため国内外の一流の研究者との交流や招聘、あるいは今いちばん刺激的なアジアに研究所をつくって、そこで研究することなどを計画しています」
このプログラムに参加できるのは原則的に大学院生からだが、優秀であれば学部生でも参加できるのだという。先の魅力的なカリキュラムとともに、コンピュータ・ネットワーク工学科の大きな特典でもあろう。また一般の学生にも、ICTの研究に触れて内外一流研究者の講義を聞く機会が用意されている。
最後に、村岡先生にコンピュータ・ネットワークを研究する醍醐味を語ってもらった。
「何よりいままで不可能だと思われていたものが、どんどん可能になっていくところですね。一昔前までは日本と米国のコンピュータが1つにつながるなんて考えられませんでした。それがいまでは普通の人たちも日々利用していますよね。自ら夢を描いて、自らその夢を達成できる。それがコンピュータ・ネットワーク分野の魅力ではないでしょうか
こんな生徒に来てほしい
この学科にはいろんな学生が来ます。どういう学生ならよくて、どういう学生が悪いというのはありません。どんな学生にもチャンスの芽はありますし、その機会は全員に与えていこうと思っています。あとは本人のやる気次第なんですね。チャンスをつかむのは、自らやるしかありません。それが大学というところなんです。










