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Good Professor

佐藤 喜子光

佐藤 喜子光 教授
立教大学
観光学部

佐藤 喜子光(さとう きしみつ)
1942年北海道生まれ。66年京都大学・教育学部心理学科卒業、近畿日本ツーリスト(株)に入社、国際販売部長、プロジェクト推進事務局部長、経営企画部専任部長などを経て、98年より立教大学・観光学部教授、その後、大学院観光学研究科教授、大学院ビジネスデザイン研究科教授、観光総合研究所所長を兼任。そのほか観光政策審議会専門委員、旅行業法等検討懇談会委員、生活産業創出研究会委員、「観光カリスマ百選」選定委員などを務め、旅行業人材高度化研究会、観光旅館経営方策検討委員会、中小旅行業の21世紀戦略検討委員会で座長を務めるなど産官学連携プロジェクトで精力的に活動。

著書に『めざせ!カリスマ観光士』(同友館)、『観光を支える旅行ビジネス』(同友館)、『旅行ビジネスの未来』(東洋経済新報社)など多数。

観光のシナリオを創る旅行産業のリーダーを育成

『観光を支える旅行ビジネス――次世代モデルを説く』(同友館 2002年11月 2500円)
『観光を支える旅行ビジネス――次世代モデルを説く』(同友館 2002年11月 2500円)

「旅行産業をめざしている人は、遊び好きの八方美人でなくてはならないのですよ」

この言葉を、立教大学・観光学部の教授、佐藤喜子光先生が語っていることを知って、えっと驚く。大学の先生といえば、研究一途の堅物人間というイメージが強い。学生に、そんなことを言ってしまっていいのだろうか!?  

「なぜなら、人はみんな『感動』を体験したくて旅をするのですよ。より多くの人に、より大きな『感動体験』を提供するためには、みんなの気持ちがわかる八方美人であり、みんなと喜びを分かち合える遊び好き人間でなければならないでしょう?」  
旅行産業は、いわば「感動仕掛け人」である。だから、旅行産業が必要とするのは、異なる価値観を持つ様々な人が、ひとりでも多く喜び感動できる「観光」を演出できるプロのエンターテイナーなのだ。さらに人々が感動することに、喜びを見出せるような人でなければならない。 つまり、「名人芸をもった芸能人のような人、単なる二枚目役者ではなくて、優れた喜劇俳優や落語家のような演出力を備えた人」と同質のものと、先生は言うのだ。

観光を教育する機関が不足していた

佐藤先生がマーケティングの極意を解説
佐藤先生がマーケティングの極意を解説

佐藤先生は、観光学部で「旅行産業経営論」を教えている。旅行によって生まれる「観光効果」は、旅行者という「旅行の主体」に、交通機関や宿泊施設という「旅行の客体」が、各種のサービスを提供することによって発生する。観光効果とは、ホテルの収益などの経済利益と旅行者の満足感などを総称したものだ。そして、主体のニーズを汲み取り、より満足感の高いシナリオを描き、必要な観光サービスを織り込んで、統合されたシステムとして観光を機能させるマーケティング・マネジメントの方法論が「旅行産業経営論」なのだ。
いまの旅行産業界のリーダーたちには、この役割を十分に果たせる人材が不足しているのです。なぜなら、観光について専門的に研究・教育する機関が、これまで日本にはほとんどなかったからなのです」と先生は言う。

たしかに今でも、日本で観光を専門的に扱う研究・教育機関は少ない。立教大学が98年に観光学部と大学院観光学研究科を設置した以外は、少なくとも首都圏においては学部をあげて観光を扱う教育機関はなく、大学院に至っては日本で唯一つの学府である。

「旅行産業の中核は、旅行代理店と呼ばれることも多い旅行業が担っています。格安のパック旅行を提供したり、グルメ旅行や世界遺産を訪ねる旅を企画したりすることも旅行業の仕事のひとつです。しかし、その発展の仕方は、業態のルーツが同じ“代理店”である広告代理店と比較すると、明らかに遅れていることがわかります」

広告代理店は、メーカーなど企業の宣伝活動を代行する業者として、同様に旅行代理店は、航空会社のチケットやホテルの宿泊クーポンの販売を代行する業者として誕生した。しかしながら、広告代理店が市場創出志向のマーケティングに基づき、独自の企画を立ててメーカーに提案を行うインセンティブ・プランナーに成長していったのに対し、旅行業者は今でも「チケット代売業」のイメージを拭い去ることができていない。いまや広告代理店には新しい文化や流行を生み出す企画業のイメージが定着しつつあるというのに。この差が生じた理由を、高いレベルの専門的な研究・教育機関の不足にあると先生は言うのだ。

「1年間に国内外を合わせた観光旅行者数は、延べ約3億4千万人。これら旅行者から旅行業者に支払われる金額は、年間およそ10兆円になります。これは日本の家庭電化製品の総売上額にほぼ匹敵する金額。さらに旅行市場全体は約25兆円に達すると見込まれております。旅行業界はこんなに巨大な市場を抱えているのです」

さらに人々は、札束を切って世界を駆け廻るだけの観光旅行や贅沢なだけの買い物旅行に飽きている。時代はスローライフを合い言葉に、生活の「ゆとり」「楽しみ」「心地よさ」を見直す時期に入っている。こんな時代だからこそ、旅行産業への期待もいっそう高まっていると言えるだろう。それは観光を異文化交流の舞台としてコーディネートできる旅行業界のエキスパートが求められているという意味だ。

いま旅行業界に下克上が始まった

よって観光学部は、旅行産業界に就職したのちに業界の幹部となる人材だけを育成する。「兵隊」でなく、産業を発展に導くことができる「参謀将校」だけを養成するのだ。  

「この学部の卒業生や大学院の卒業生たちが次々と巣立って、21世紀の社会に羽ばたいていっております。まもなく、旅行産業界には下克上が始まるでしょうね。もうすでに新しい起業家も現れており、その兆しがはっきりと見えてきております」と笑う。  

また、先生は未来のリーダーたちの適正を次のようにも言う。  

第一に、理屈で物事を理解していく左脳人間ではなく、感性で物事をとらえられる柔軟な右脳人間であること。浅く広く多くのことを知り、バランス良く考えることができる雑学人間であること。歴史的にも大陸や欧米から文化を移入してつくられた日本文化の特性をよく知り、さらに新しい異文化について理解と好奇心をもてること。流行に敏感であるだけでなく、流行が起こった理由を本質的につかみとるセンスがあること、など。  

「たくさん挙げると難しそうに聞こえるかもしれませんが、要はいろいろなことに興味をもてる、未来志向でホスピタリティ精神あふれる人ということです。旅行者を前にしたときに、この人たちの笑顔が見たいな、と思える人であれば大丈夫です。後の実践的な技術と理論的な裏打ちは、大学に在学中に十分身につけることができますから」  

不況のなかでも、ここだけは発展が見込まれるという成熟社会に適応した旅行産業。もしも君がこの業界をめざすなら、立教大学で幹部候補生をめざしてみてはどうでしょう。

こんな生徒に来てほしい

既成概念にとらわれず、新しいことを理屈でなく感性で受け止められる柔軟性のある人が最適です。
また、ひとつのことのみを追及するのではなく、多種多様な人に喜ばれる観光をプロデュースするには、バランス感覚と広い視野が必要です。
人それぞれ十人十色の好みや要求に合わせられる「八方美人型」であることも大切です。観光という「感動体験」を演出するには、プロのエンターテイナーであることが欠かせません。「遊び心」を提供できるホ乳類=ホモ・ルーデンスを一緒にめざしましょう。

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