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Good Professor

國領 二郎

國領 二郎 教授
慶應義塾大学
環境情報学部

SFC研究所 所長

こくりょう・じろう
1959年米ニューヨーク州生まれ。82年東京大学経済学部経営学科卒。82年日本電信電話公社(現NTT)入社。86年より米ハーバード・ビジネススクール留学。修士課程・研究員などをへて、92年ハーバード大学博士課程修了(経営博士)。93年慶応義塾大学大学院経営管理研究科助教授。00年同教授。03年同大学環境情報学部教授。05年よりSFC研究所所長を兼任。主な著作に『オープン・ソリューション社会の構想』(日本経済新聞社)『オープン・アーキテクチャー戦略』(ダイヤモンド社)『オープン・ネットワーク経営』(日本経済新聞社・テレコム社会科学賞受賞)などがある。

「経営情報システム」研究の第一人者

慶応義塾大学SFCを正面から一望
慶応義塾大学SFCを正面から一望

慶応義塾大学SFC環境情報学部の國領二郎教授は、大学卒業後に日本電信電話公社(現NTT)に入社し、ビジネスの最先端に立った経験がある異色の経歴をもつ。

「入社してすぐに公社からNTTに民営化されました。そこで私が手がけたのは、NTTの技術を使った通信施設を海外に建設する新たなビジネス領域の開発プロジェクトでした。会社も民営化の真っただ中だったせいでしょうか(笑)、20代の若造に何でも任せてやらせてくれました」

と当時を振り返る。民営化・国際化そしてテクノロジーが長足の進歩をするなか、若き日の國領先生はビジネス開発を実地に学び、その後の研究生活の基礎となった。そうした先生の現在の専門領域は「経営情報システム」の研究だ。

「コンピューター・ネットワークをビジネスにどう活用できるかといった研究になります。わたしが研究を始めた90年代はじめのころは知られていない分野でした。専門家からも『そんな研究をして何の役に立つ』などと白い目で見られていましたからね(笑)」

もともと國領先生は経営学が専門で、当時その分野からコンピューター・ネットワークについて研究する人は皆無に近かった。そのぶん先生はパイオニアとしての道を歩むことになる。いまやビジネス・日常生活にかぎらずネットワークの活用は花盛りである。そして先生はこの分野のトップリーダーとして牽引する立場となった。

「ビジネスへのネットワーク活用についてはテクノロジーだけあっても役に立ちません。決済機能とかトラブル処理などのビジネス的・社会的な仕組みを組み込んでおかないと、実際には動いてくれません」

システム全体にどういう仕組みを組み込んで、社会の中でどのような活動をさせるか――そうした視点がないとうまく機能しないものなのだ。こうしたネットワーク・システムの高度化やそれが他に及ぼす影響についての考察などが具体的な先生の研究課題ということになる。

起業家を輩出するネットワーク・プロジェクト

初秋の慶応義塾大学SFCキャンパス
初秋の慶応義塾大学SFCキャンパス

今回の國領先生への取材はある企業のオフィスで行なわれた。あらゆる教育機関における遠隔授業の運営をサポートしたりアドバイスするというこのIT企業。これがなんと先生の教え子が設立し経営しているという。実はこの会社のネットワーク・システムはかつて先生の研究室で研究考案されたもので、その起業化実践版でもある。

「この会社のシステムについて私の研究室で議論を始めたのが96年で、正式な会社設立は99年でした。かなり地味な業務内容ですから急成長は望めませんが、業績は堅実に伸びています。ほかにも大学でいろいろな会社の立ち上げに立会いました。その中には株式を上場して、SFCの研究に寄付してくれたところもあります」

大学の研究室から生まれた会社が順調に業績を伸ばしているというのは喜ばしい限りである。なお國領先生も同社に出資し、経営のアドバイザーを務めている。

慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は新しいコンセプトに基づいた学際的な研究・教育の場として90年に開設され現在に至る。このSFCの最大の特徴は、ただ学問的なことを知るだけでなく、自分たちの手で世の中を変化させることを標榜し、それを実践しているところだろう。

「ここでは、教員から大学院生・学部生までがいっしょになって問題の解決を考えます。それぞれの問題解決の研究プロジェクトにはいろいろな専門分野の人が動員されますから、学生たちはそこから多面的に学んで自分の専門を深めることになります。そうしたことを面白いと感じられる人にとっては最高の知的刺激が与えられる場といえるでしょう」

いわゆるゼミ演習制を採らないSFCでは、代わってさまざまな研究プロジェクトが用意されている。各教員が主宰するプロジェクトはなんと約200にも及ぶ。在籍する学部の枠を越えて興味や関心のあるプロジェクトに学生たちが自由に参加できる仕組みなのだ。

國領先生自身が主宰している研究プロジェクトには2つある。「ネットワークを基盤としたビジネスモデル構築とその実行」と「ネットワークに基盤をおいたビジネス・社会モデルの設計」の2つだ。

「前者のプロジェクトは、具体的なビジネスモデルを立ち上げて実際の運営をシミュレーションをしていくものです。大学院生とも連携しながら、学部生30名弱ほどで常時5つぐらいのビジネスモデルが進行しています。たった今は電子タグを活用するビジネスを考えるグループが多いようですね」

実際に企業化して社会に打って出ているグループもいくつかある。また、NPOなど非営利の事業モデルを研究しているグループもあり、むしろ先生はそちらのほうに注目すべきものがありそうと語る。

もうひとつの研究プロジェクトは、ビジネスや社会におけるネットワークについて理論的に考察するものだという。こちらのほうは文献や資料の講読とディスカッションが中心となる。

実践から学んで新時代の法則性を探る

國領先生がアドバイザーを務める企業が入るビル(都内)
國領先生がアドバイザーを務める企業が入るビル(都内)

あらためて学生指導でつねに心掛けていることについて問うと――実践から学んで新しい時代の法則性を探る――これこそが、國領先生の指導指針だという。

「自分で問題意識をもって自ら取り組んでいける学生を育てたいですね。そのための環境を整えてあげるのが我々の役目だと思っています。慶応SFCの良いところは、研究プロジェクトの学生指導にOBの協力が得られやすいところです。実社会に出て活躍されているOBの方々は、単にテクニックだけでない実際的な指導をされますから、学生たちにはいい刺激になっているみたいですね」

さて、國領先生は今年05年5月から「SFC研究所」の所長に就任した。慶応義塾大学湘南藤沢キャンパスの各研究プロジェクトと国内外の産官学界との連携を支援することが同研究所の主業務となる。

「さまざまなSFCの諸研究を後方から支援する裏方ですけどね(笑)。これからの大学が社会で果たすべき役割を考えますと、産官学提携は重要なテーマになると思います。社会にどんな貢献ができるのかを考えながら、SFCの研究を積極的にバックアップしていきたいですね」

自身の学部プロジェクトだけでなく、SFC研究所の活動のほうでも旺盛な意欲をみせる國領先生なのである。

こんな生徒に来てほしい

新しく先端的なものをつくり出す企業の創業メンバーになりたい。自分自身で世界初のパイオニアになってやろう――そんなふうに考えている人には慶応SFCはとてもいいキャンパスだと思います。漠然としたものでもそうした意識をちゃんと持っていれば、基礎的なことから学べる環境がここでは整っています。逆に、大学に行けば何か教えてくれるだろうというような受け身の学生にはちょっと不向きなキャンパスかもしれませんね(笑)。

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