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Good Professor

鈴木 宏昭

鈴木 宏昭 教授
青山学院大学
文学部 教育学科

すずき・ひろあき
1993年より現職。日本教育心理学会・日本認知科学会・日本人工知能学会等に所属。専門分野は認知科学。著書は『類似と思考』『認知科学モノグラフ』(共に共立出版)など多数。鈴木先生のWebサイトアドレスはコチラ → http://edhs.ri.aoyama.ac.jp/~susan/mt/

「問題解決」プロセスに迫る認知科学とは

学生たちでにぎわう昼食どきの学内の風景
学生たちでにぎわう昼食どきの学内の風景

あなたが何かものを考えるとき、頭の中でどのようなメカニズムが働いているのか――そんなことを考えてみたことがあるだろうか?青山学院大学文学部の鈴木宏昭先生は人間が問題を解くときの思考のあり方について研究している。ここで「問題」とは、数学の問題を解くといったことから、昼食に何を食べ素敵な結婚をするためにはどうすればといったことまでも含めた広い意味をもつ。

では、具体的に「問題を解く」ときに人の頭の中ではどのようなメカニズムが働くのか単刀直入に教えてもらおう。

「自分自身が望む状態と現状とが一致していない事態を『問題』ということとすると、そのギャップをどう縮めるのか考えることが問題解決のプロセスとなります」

たとえば「電源をオンにする」ということが当面の「問題」だとして、「スイッチを押す」という単純なプロセスを経ることでこの「問題」は簡単に解決する。しかし私たちが日々直面する「問題」の多くはもっと複雑だ。複雑な現実問題に直面したとき、その問題をうまく解決できる人とそうでない人がいることはあなたの身辺をながめても思い当たることだろう。

「世の中にはビデオデッキの予約録画がどうしてもできないという人がたまにいますよね(笑)。予約録画など簡単にできる人から見れば、なぜそういうことになってしまうのかも分かりにくいものです。できない人は、予約録画という課題が ①録画したいチャンネルを決める ②録画したい番組の時間を決める ③実際に機械的に設定する ――といった構造をもつ課題であることに気づいていないのです。そして、それら個々の『課題』に気付くことができないまま、硬直してしまうことが多いわけです」

一方で、予約録画をできる人というのは「チャンネルを決める」などの個別課題をそれぞれ分けて考えることができている。これを認知科学では「課題分割」というが、課題分割の概念を理解してもらったうえで再度試してもらうと、「機械音痴」とされるような人でも圧倒的に結果がよいほうに変わるそうだ。人間の思考メカニズムの原理を応用したひとつの例だといえるだろう。」

創造的思考メカニズムに必要な2原則とは

真夏のある日の青山学院大学キャンパス
真夏のある日の青山学院大学キャンパス

そもそも認知科学とは、人間のみが対象ではなく「知性の性質」全般をターゲットにする学問だ。ジュウシマツの鳴き声が一定の規則に沿っていることに着目し、生まれてからその規則が形成されるまでのプロセスを探る研究、さらに機械が知性をもつためには何が必要なのかといった人工知能に関する研究までも認知科学の対象となるという。

このような広がりをもつ認知科学だが、鈴木先生の専門は「問題解決」。なかでも「創造的な問題解決」が最近の研究領域となる。

「自らの希望と現状とが一致していない問題の解決というゴールに向かって人間が進むとき、既存の方法ではなく、創造的な方法を作り出すまでにはどういったプロセスをたどればいいのか――そういうことを中心に研究しています」

たとえば、形が違ういくつかのパーツを組み合わせて「T」の形をつくるパズルを学生たちに解いてもらって、その様子をビデオにおさめて比較するという実験を行なったとしよう。

「私たちが普通は『こう置きたい』と思うパーツの置き方からいったん離れなければ解けない仕組みにこのパズルはなっています。認知科学では『こう置きたい』という個人の自然な思い込みのようなものを『制約』といいますが、パズルを解くためにはこの『制約』を乗り越えなければなりません」

創造的な問題解決プロセスにあたっては何かに「とらわれている」状態から脱することがまず必要となる。先の実験ビデオを観察していくと、パズルを解くことができた人はできなかった人より『制約』を打破してプロセスを進もうというという試みの確率が多いことがわかった。しかし、それだけでパズルが解けるわけではない。

「正しいプロセスを途中まで進んでいても、そこから最後まで進める場合とそうでない場合があります。正しいプロセスを『正しい』と見極めることができるかどうかということが問題解決までのもうひとつの重要なポイントということが分かります」

解決法模索のプロセスこそが人間らしい

これら実験の結果から得た「制約を打破すること」「正しく評価すること」の2つについては鈴木ゼミでの演習にも応用される。その舞台は何とブログ(weblog)だという。あくまで現在はゼミの補助として活用しているが、ブログを導入してから学生たちの考えが驚くべきスピードで高次元になったという。

「黒板を写すだけというのはもはや学習ではありません。大人数の講義などでは実際そういう学生は今もって多いですが、丸写ししている状態というのは創造的な問題解決とは無縁です」

「講義内容について私や学生たちがブログ上でコメントし合っていくうちに、ひとつのテーマに関して多様な解釈があるのだと気付きますよね。みんなと意見をシェアし交換することによって、物事の多様性や評価を身をもって体験してもらうことができます」

問題解決というとすぐにコンピューターによる情報処理が浮かぶが、とてもじゃないが人間の代わりになどならないという。たしかに近年のコンピューターの進化には目を見張るものがあるが、実際はプログラムされた内容を取り扱っているにすぎない。しかし、人間はそうではない。

「問題が解決できないとすれば、人間はどうにかして新しい方法を見つけ出そうとします。プログラムされていない新たな方法を模索するわけですね。口でいうほど簡単なことではありませんが、そうしたプロセスをなんとか模索することこそ人間らしさなのです」

こんな生徒に来てほしい

いわゆる知的好奇心をもっている人。面白いと思えるような対象を見つけて自ら取り組んでいける学生ですね。分からないことがあっても、その解決に向けて創造的な方法を探すことができる人ならさらにいいですね。

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