1. ホーム
  2. GOOD PROFESSOR
  3. 203 中央大学 理工学部 姫野 賢治 教授

Good Professor

姫野 賢治

姫野 賢治 教授
中央大学
理工学部 土木工学科

ひめの・けんじ
1956年大分県生まれ。79年東京大学工学部土木工学科卒。防衛施設庁技官・東京工業大学工学部助手・北海道大学工学部助教授をへて、97年より現職。 87年に土木学会論文奨励賞を受賞。主な著書に『道路工学』(理工図書・共著)『土なぜなぜおもしろ読本』(山海堂・共著)がある。

知られざる道路工学新メカニズム

中央大学後楽園キャンパスの全景
中央大学後楽園キャンパスの全景

わが日本国土の3分の2が山地であることは広く知られているが、国土面積の約2%が道路で占められることはあまり知られていない。道路が占める面積の割合は都市部のほうが地方部より大きく、とくに東京都中央区では23%程度。東京駅前のように局部的には40%を超えることもあるという。

中央大学理工学部の姫野賢治先生の専門は、道路工学なかでも道路舗装に関する研究だ。道路舗装の表面を覆っている材料の95%程度は砕石という文字どおり砕いた石であり、この砕石と砕石を結合させる接着剤の役割を果たす物がよく耳にするアスファルトということになる。道路舗装の研究においては、この5%程度にすぎないアスファルトが砕石をどのように結合するかを考えることが基本になる。

「ほかの土木構造物(橋梁やダムなど)と道路との決定的な違いは『はじめから壊れることを前提につくる』ことにあります。おおむね10 年とされるアスファルト舗装の寿命をどうすれば延ばせるかという問題から、車両運転者にとってどんな舗装なら乗り心地がいいのか、あるいはいかにコストをかけずに道路を維持していけるのか等さまざまなことが研究対象となります」

いつの世もあまり変わり映えしない社会的資本のひとつと思われがちだが、道路の舗装技術は確実に進歩している。周辺住民にできるだけ騒音を感じさせないような道路舗装技術などがそれだ。

「この『低騒音舗装』は約20年前から実用化されました。その基本メカニズムとしては、砕石と砕石との間に全体の20%のすき間をもたせることによって穴のなかに音が吸収されるのです」

「この低騒音舗装の原理と似たものに水たまり防止の『排水性舗装』の技術があります。面白いことに、20%の砕石のすき間に水を透過させて舗装の内部で横からその水を抜く排水性舗装の技術と低騒音舗装とは構造的にほとんど同じなのです」

「特殊塗料」を塗って路面高熱化阻止

姫野研究室や実験室のある2号館
姫野研究室や実験室のある2号館

ここ最近では都市問題化した「ヒートアイランド現象」対策としての舗装技術も注目されている。都市部の面積の2割近くをも占める道路に「TOKYO砂漠」対策の活路を見つけようとする考えなのだろう。しかし果たして夏場の昼間60℃以上にもなるという路面温度を舗装技術だけで下げられるのだろうか?

「ヒートアイランド現象の対処方法としての舗装工法としてはいくつか考えられます。ひとつは、太陽の熱を吸収しないように路面を白く塗ってしまうこと。しかし、これは交通安全上支障ありそうということで極端に白くすることは困難視されてきました」

「もうひとつは、路面をぬれた状態に保っておくこと。具体的には、排水性舗装が施された舗装の内部の20%のすき間にオシメに使われるような保水性の高い材質のものを詰める方法です。ただし、これもしばらく雨が降らないと効果が薄くなってしまう欠点があります」

いま主に研究が進められているのはひとつ目の方法を発展させた方法だ。舗装路面を白くしてはダメというのなら、黒いまま太陽熱を吸収しない路面材質を開発すればいいという発想らしい。

「ふつうの舗装路面の色のままでも赤外線の一部である近赤外線なら吸収せずに跳ね返すことが可能なのです。根本的な舗装構造を変える必要はない特殊塗料を塗るようなイメージなので、これも一部で実用化されています」

最も求められるのは「壊れない道路」

このように低騒音性・排水性・遮熱性など次々と社会的要求に迫られる舗装技術だが、基本となるのはやはり安全性。道路には何より「壊れないこと」が最も重要なのだ。しかし人間の身体などと違って、路面の状態を見ただけでその舗装が〝健康〟かどうかは分かりにくい。

「道路が安全な状態かどうかを確かめることを『構造評価』といいますが、いちいち壊して調べるわけにもいきません。そこで『非破壊試験』といって舗装を壊さずに状態を確かめる方法について研究しています」

5トン以上の重りを道路に落として、表面がどれだけへこむか、どんなたわみの波ができるか計測していく。それらがフィードバックされて、どれくらいの強度があれば安全な道路といえるのかという基準も作られていく。

壊れにくい舗装を作るためには、普通のアスファルトの性能を高めるために高価な樹脂をアスファルトに混ぜることがよく行なわれてきた。毎年1億本以上にも及ぶ使用済み廃タイヤから得られるゴム粉をアスファルトに混ぜて、これと同じような効果をもたらす舗装を開発することに力を入れているそうだ。そのほかゴミとして捨てられるプラスチックと使用済み天ぷら油をうまく利用した高機能舗装の開発など、循環型社会をめざした研究もさまざま行なわれているという。

実際の道路舗装はさまざまな要因で日々崩れていく。可能なかぎりデコボコがないように作っても、まわりの地盤が沈み込んだり、わだち掘れによって表面が凹んでしまうこともある。根性ある(?)植物の成長によるゆっくりとした圧力に意外にもろいことも知られる。これらをしっかり把握して、安全性を確保しつつも車両の運転者にとっての乗り心地という点が今は重要視されてきている。

「道路工学では表面のデコボコのことを『ラフネス』といいますが、もちろん路面に凹凸があれば運転者にとって快適ではないですよね。アスファルトの材質や温度によっても舗装の状態は変化しますから、ひとつの要素から簡単に判断することなどできません。道路表面の凹凸はなぜできるのか?どうすれば凹凸をなくすことができるのか? 車両運転者・周辺住民にとって快適な路面をつくり維持することが我々の研究の目的なのです」

諸君も自動車やバスに今度乗った時ふと思い出してみてほしい。道路の安全性と快適さには人知れず進化してきた工学技術が隠されているのだ。

こんな生徒に来てほしい

何事にも知的好奇心がある人に来てほしいですね。高校生みなさんの身のまわりにも研究のネタになりそうな面白いテーマは道路に限らずいくらでもあるはず。それらを自分で見つけ出して研究に没頭できる――そうした環境が一応整っているのが大学なのです。

GOOD PROFESSOR
バックナンバー
大学名から教授を検索
学部名から教授を検索
掲載内容に関するお問い合わせ

資料請求・各種お申込み・お問い合わせはコミュニケーションセンターへ

0120-173-573

月~土 / 11:00~20:00 日・祝 / 10:00~18:00
携帯電話PHSからもご利用頂けます。

  • 資料請求
  • 無料体験
校舎一覧