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  3. 204 東京理科大学 工学部 半谷 精一郎 教授

Good Professor

半谷 精一郎

半谷 精一郎 教授
東京理科大学
工学部 電気工学科

はんがい・せいいちろう
1953年東京生まれ。75年東京理科大学工学部電気工学科卒。81年同大学大学院博士課程修了。81年東京理科大学工学部電気工学科助手。91年同助教授。94年米スタンフォード大学客員研究員。01年より現職。主な著作に『ディジタル信号処理』(単著)『電子計算機概論』(共著)『JPEG・MPEG 完全理解』(共著・いずれもコロナ社)などがある。

世界初「署名認証システム」と情報通信工学

研究室でパソコンに向かう半谷先生
研究室でパソコンに向かう半谷先生
九段の東京理科大学工学部仮校舎
九段の東京理科大学工学部仮校舎

創立125周年を06年に迎える東京理科大学はいま神楽坂キャンパス校舎の大幅な建て替え中だ。そのあいだ各学部とも仮校舎での講義や研究となるが、そのうち工学部は靖国神社近くの九段校舎に移った。その仮校舎への引っ越しを終えたばかりで慌ただしさの残るなか、同学部電気工学科教授の半谷精一郎先生は快く取材に応じてくれた。

「これまで音声や画像のデジタル信号処理に関する研究に携わって来ましたが、最近は情報セキュリティーに興味をもちまして、現在はそちらの研究が主軸になっています」

と語る半谷先生の専門は「情報通信工学」。インターネットなどの利用が増大し高度化していくIT社会にあって、相手側の人物が確実に本人であるかどうか「本人確認」をするシステムの構築は喫緊の問題になっている。

「いま確実な本人確認の方法としては生体認証になろうかと思います。それで私たちの研究室では顔・音声・署名(サイン)の3つの生体認証について研究しています」 このうち半谷先生がいま最も力を入れているのが署名認証。じつは署名(サイン)というのは特に日本人には苦手な認証方法とされる。署名するときのペンをもつ角度や筆圧などの特徴から本人確認をする全く新しい発想による認証システムの開発に先生は取り組んでいる。すでに90%を超える認証確度が実証されているそうで、世界初の生体認証システムの1日も早い実用化が望まれる。

「しかし実用化するまでには、もっと精度を高めて銀行やクレジット会社などユーザーの信頼を得ることやシステムや規格の統一をして国際的な標準化を図ることなど解決すべき問題はまだたくさんありますね」

このあたり、あせらず泰然自若といった半谷先生の雰囲気が印象的だ。なお、この署名認証システムの国際的な標準化を図るための国際会議が毎年2回開かれるが、その日本の代表委員を務めるのは当然ながら半谷先生ということになる。

怠慢学生に容赦ない「進級関門制度」

東京理大工学部仮校舎のロビー
東京理大工学部仮校舎のロビー

東京理科大学は、創立125周年という日本の理工系私大最古の歴史と伝統を誇る大学だ。そのうち工学部電気工学科は、コンピューターに関する講義にも力を入れ、実際にプログラムを組んだりコンテンツをつくる実習も多く取り入れていることで知られる。半谷先生も次のようにその特徴を語る。

「1年次から実験・演習の多いことが特徴でしょう。工学系学科の学生にとって自らの手を動かして感じ取ることをたくさん経験することが最も重要です」

この電気工学科に限らず東京理科大学は、進級関門制度(1年次から2年次および3年次から4年次への進級時)によって規定の単位取得が足りない学生は容赦なくふるい落とされることも知っておくべきだ。その厳しさは理科大学の昔からの伝統ともされ、今もそれは変わっていないと理科大0Bでもある半谷先生は微笑む。

電気工学科の学生たちは、4年次になると卒業研究のために各教員の研究室に配属される。半谷研究室でも例年10人ほどの4年次学生を受け入れて指導をしている。

半谷研究室での研究内容として特徴的なのはグループ研究がないことだ。学生それぞれがテーマを決めて個人研究をするのが原則で、その研究テーマは「画像信号処理」「音声信号処理」「セキュリティ」のいずれかの分野から選ばれる。

研究室には学部生のほかに大学院生もいて総勢は20人を超える。そのため研究室では日夜20を超える研究プロジェクトが同時進行ということになる。それらの研究進展状況を報告し合う会議がそれぞれの分野別に毎週1回開かれて、もちろん半谷先生も必ず出席する。

「この会議はディスカッションと呼んでいますが、学生・院生たち全員に各研究の進み具合や問題点を報告させて、それぞれ私から提言するというスタイルで毎週やっています」

個性あふれる「電気好き」集まれ!

近く一変する神楽坂キャンパスの全景
近く一変する神楽坂キャンパスの全景

最先端の研究に携わりながら国際会議に出席するなど繁忙さのなか、毎週繰り返されるディスカッションへの出席を自ら義務として半谷先生は学生指導の努力を続ける。じつは教授によっては、学部学生の研究指導の大半を助手や大学院生に任せるという人も少なくないのだが……

そのことに触れると半谷先生の応答は「教育とはそういうものですから」とそっけないものだった。そこには学生1人ひとりに責任もって指導するという半谷先生の信念が強い信念が込められているように感じた。そんな先生が学生指導で心掛けていることについて次のように話してくれた。

「自分の頭で考えて自分の考えで行動できる――そういう人間を育てたいと思っています。ただ言われたことしかできないようでは、研究者よりも何よりも人間として社会に出てから困りますから(笑)」

「それに失敗を恐れないこと、たとえ失敗しても悲観的にならずに考え抜くようにと教えています。つまり、ある研究なり実験が失敗したとすれば、その方法では失敗することが分かったわけですから、それもひとつの成果だと考えればいい。負の結果もまた大切な結果であるということですね」

最後に最近の学生気質についてこんな苦言をひとつ――

「以前までの電気工学科に入ってくる学生たちといえば、電気が好きで好きでたまらない子ばかりでした。小中学生のころからラジオを組み立てたり電気製品を分解したり、とにかくハンダづけが得意だったりして(笑)。ところが昨今の偏差値重視の受験環境のためか、どの学生も同じような考え方ばかりで個性にどこか欠ける感じがして……。これは教えていても正直ちょっと物足りない気がします」

熱きグッド・プロフェッサー半谷先生は電気好きで個性あふれる若者を今か今かと待望している。

こんな生徒に来てほしい

まずは電気工学とは何かくらいは知ってから受験してほしいですね。せっかく入ってきたのに「自分のやりたいことではなかった」などと愚痴をこぼすような人が時々います。これでは人生の貴重な時間が無駄になってしまいます。大学で自分が何をやりたいのかをしっかりと見定めてから学科を選ぶようにしてほしいですね。

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