- 鈴木 雄雅 教授
- 上智大学
文学部 新聞学科 大学院 文学研究科 委員長
すずき・ゆうが
1953年東京生まれ。82年上智大学大学院文学研究科博士課程(新聞学専攻)単位取得満期退学。日本新聞協会研究所勤務を経て、84年上智大学文学部新聞学科専任講師。89年同助教授。96年同教授。05年同大学院文学研究科委員長。この間92年および99年に英国・豪州・東南アジア諸国・米国などで在外研究。主な著作に『大学生の常識』(新潮社)のほか『オーストラリア入門』(共著、東京大学出版会)『グローバル社会とメディア』(共著、ミネルヴァ書房)などがある。
鈴木先生主宰のWebサイトアドレスはコチラ → http://pweb.sophia.ac.jp/~s-yuga/
「外国語新聞」に見る日本ジャーナリズム史研究

- 鈴木研究室のある7号館建物

- 上智大学四谷キャンパス正門の外景
上智大学文学部新聞学科の創設は1932年のこと。同種の学科としては日本最古の歴史を誇る。しかも大学院に博士課程まであるのは同大学だけだ。今回登場願う鈴木雄雅先生は新聞学科教授にして、大学院研究科委員長でもある。まずは上智大学新聞学科の特徴から話してもらおう。
「学科名に新聞学科をうたっていますが、もちろん新聞に関することだけを学ぶわけではありません。広くジャーナリズムからマスコミ・メディアについてまで学ぶ学科です。ただ誤解されると困りますが、ジャーナリストを養成するのを目的とはしていません。あくまで大学ですから、バランスの取れたジャーナリステックな視点をもった良き社会人を育てるのを目的としています」
そう語る鈴木先生だが、じつは上智大新聞学科の卒業生の約4割はいわゆるマスコミに例年就職してもいる。これは他大学の同種の学科と比較しても突出した就職率だ。
「今のマスコミにはジャーナリストを自前で育てる力が失われているからかも知れませんね」
そう笑う鈴木先生の専門のひとつが「マス・コミュニケーション(ジャーナリズム)史」。その研究テーマについて紹介する前に、先生のライフワークともいえる研究成果について先に述べておこう。
出版社の「ぺりかん社」から『日本初期新聞全集』という全集シリーズが刊行されている。これが実に全64巻・補巻2巻それに別巻1巻という大作で、幕末から明治初期までの新聞黎明期に日本で発行されていた新聞(全232紙)のほとんどが網羅される。この全巻の監修と解題を担当したのが鈴木先生だ。86年の第1巻刊行から2000年の最終巻刊行まで15年間に及ぶ労作である。
そこで先生自身の研究課題だが、同時期に日本で発行されてきた外国語新聞の発掘がテーマだ。全集ではこれに7巻を充て、先生も共著で筆を執る。この分野で鈴木先生の右に出る人はいないといわれる。
「幕末から明治期に国内で刊行された外国語新聞の発掘というのは私が大学院生だったころからの研究テーマで、ライフワークといっていいでしょうね。日本国内はもとより海外は大英博物館まで回って収集しました。日本に在留していた外国人のために発行されたこうした外国語新聞は、彼らの本国で起きている政治状況や戦争・事件あるいは在留仲間の動静の報告記事などで構成されています」
「そんな新聞を丹念に読んでいますと、日本のことについて報じている記事を発見することがあります。そんな記事を集めていきますと、当時の外国人ジャーナリストが日本をどう見てどう報じていたかが分かるわけです。今はインターネットでURL(Uniform Resource Locator)やブログ(Weblog)などの情報発信が盛んですが、いつの世も人には『伝えたい』『知りたい』というのが基本的にあって、それは当時も今も変わっていないということでしょうね」
以前、ある学生が新聞黎明期に発行された外国語新聞の研究をしようとして相当数の資料を集めたところ、そのいずれもが鈴木先生がかかわる著作や論文であったという。この研究分野における第一人者であることを物語るエピソードともいえよう。
サイバージャーナリズムも研究対象

- 四谷キャンパス内部の晩秋の風景
「そんなふうに言うと古いものにしか関心がないのかと思われるかもしれませんが、もちろん『国際コミュニケーション』『ジャーナリズムとマスメディア』など今日的なテーマの研究もしていますから」
そう、鈴木先生の専門にはもちろん「今」もある。それはサイバースペース上でのコミュニケーションやジャーナリズム活動についてだ。
「そこでの『ネチズン(ネット・シチズン)』や公共圏でのさまざまな行為が社会やメディアそして市民や政府といった『モノ』『コト』『ヨウ』『サマ』にどのような影響を与えるのか? そして自分たちはどこへ向かうのか、向かうべきなのかに関心があります」
そう笑いながら語る鈴木先生のお話はかなり早口で、次のことばが待ちきれないというようなエネルギッシュな話し方をされる。研究分野のほうも貪欲ともいえる旺盛さだが、これが先生の身上なのでもあろう。
大学でマスメディアを学ぶ意味とは

- JR四ッ谷駅から望む上智大学と聖イグナチオ教会

- 「京畿大学」学生と交流した05年ゼミ合宿にて
新聞学科のゼミ演習は2・3・4年次の学生が対象で、鈴木ゼミでは例年10人前後のゼミ生を受け入れている。ゼミ生それぞれが研究テーマを決めて、個人であるいはグループで研究しゼミの時間に発表する。研究テーマについては新聞学科だけに政治・経済から社会問題まで自由だが、なかにはテレビのバラエティー番組を取り上げるグループなどもある。
「ゼミでの学生の指導としては、それぞれの個性を大切にしてうまく育ててあげたいと思っています。ただ、以前にくらべても最近の学生は人とのコミュニケーションの取り方が下手な人が多い気がします。新聞学科にいてコミュニケーションが取れないのはまずいですからね。これから社会に出て行くためには多少とも器用になる必要がありますから、そのへんは注意しています」
ゼミ指導について熱く語る鈴木先生。なお鈴木ゼミの夏合宿はここ数年は海外合宿が恒例化していて、05年は韓国、今年06年は台湾で行なわれた。最後に、高校までの学習と大学で学ぶことの違いについて先生は話してくれた。
「高校までは生徒とよばれ、大学に入って初めて学生と呼ばれます。この生徒と学生の違いは何か? 生徒は『学習』が中心で文字どおり習い学ぶことが主体です。ところが大学は『学問』をするところで、これは『問うことを学ぶ』という意味です。高校までと大学の違いは本来そういうことなのです。ただ、ややもすると最近は大学も学習の場にレベルダウンするところもありますね」
最高学府たる大学に進学することのラジカルにして根源的な意味――人生の一大期に直面する現役高校生たる君たちも改めて考えてみても人生の無駄とはいえまい。
こんな生徒に来てほしい
当然のことですが、マスメディアに関心のある人ですね。テレビや新聞・メディアの方面に関心があって、そうした仕事に就いてみたいと思っている人も結構です。ただし、そういう希望があっても人や社会に関心のない人や、人と会って話すことが苦手な人はちょっと向かないかもしれません。もちろん、そういうことが苦手な人のすべてがこの学科で学べないということではありませんが……。

