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Good Professor

入村 達郎

入村 達郎 教授
東京大学
薬学部 大学院 薬学系研究科

いりむら・たつろう
1949年神奈川県生まれ。71年東京大学薬学部卒。74年同大学院薬学系研究科博士課程中退。74年東京大学薬学部助手。80年2月米カリフォルニア大学研究員。80年9月米テキサス大学MDアンダーソン癌センター助教授。88年同準教授。91年より現職。主な著作に『ストライヤー生化学』(共監訳・東京化学同人)『がんの浸潤・転移研究マニュアル正・続』(責任編集・金芳堂)『理系総合のための生命科学』(共著・羊土社、最新刊)などがある。
入村先生が主宰する東京大学「生体異物学教室」のWebサイトのアドレスはコチラ → http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~cancer/labpage/index.html

「糖鎖」の観点から疾病メカニズムに迫る

入村研究室が現在ある薬学部西館。新年度から新築なる研究室に移動予定
入村研究室が現在ある薬学部西館。新年度から新築なる研究室に移動予定
大学院生を指導する入村先生
大学院生を指導する入村先生

薬学系大学において、06年度から「6年制コース」が新設されて従来の「4年制コース」との2コース制になった――このことは医薬学系の志望の受験生なら周知のことだろう。東京大学大学薬学部においては約9割の学生が4年制、残りの1割が6年制を履修するという。このあたりの事情について、今週ご登場願う東京大学大学院薬学系研究科(学部は薬学部)の入村達郎教授に説明してもらおう。

「薬学カリキュラム変更の背景としては、医療の現場で使われる医薬の内容が複雑化し、また薬剤師に求められる職務の範囲も広がったことがあります。医薬品の専門家としてただ薬について知っているだけではなく、病気と健康をつかさどる人体メカニズムとか病気発生の原因なども広くそして深く学ぶ必要が出てきたということです。そのための人材育成を目的に6年生コースが設けられたといえます」

一方で、製薬産業(なかでも最近は「創薬」と呼ばれる新薬の開発を主体とした産業)というのは、その一国の総合的な知的・経済的パワーを要するもので、世界的に見ても限られた先進国でしか成り立っていない。また、生命科学や有機化学の学問の最先端は医薬の創成に直接貢献する場合がほとんどだ。今後の日本の主要産業を支えこれら諸学問の最先端を担う人材を育成するには、大学院教育に重点を置く「4年生コース」もぜひとも必要だとのことだ。

さて入村先生の専門であるが、単純に「○○学」とひとくくりで表現できるような研究分野ではない。

「世界でだれも手をつけていない初めての研究が多分野にわたって数多いということですかね。ここのところの私どもの研究としては、癌や感染症を含めて免疫系が関係する病気について『糖鎖とそれを認識する分子』という観点からアプローチしています」

たとえばインフルエンザウイルスは、粘膜上皮表面の糖鎖と結合して細胞に感染し、糖鎖を分解して細胞から飛び出していく。服薬による異常行動が話題となっているインフルエンザの特効薬・タミフルなども、こうした考えに由来してつくられた薬だという。ノロウイルスやエボラ出血熱ウイルスなどのヒトへの感染、あるいは癌が転移して広がるメカニズム等にも糖鎖が関係している。

このほか入村先生の研究テーマには、アレルギー発症など免疫応答の調節機構の研究等いずれも世界最先端のテーマがめじろ押しだ。

「教えられる側」から「自ら創造する側」へ

<br><img src=http://www.wasedajuku.com/wasemaga/good-professor/images/irimura_tatsuro04.jpg><br>ゼミ合宿における集合写真


ゼミ合宿における集合写真
東京大学本郷キャンパスの正門
東京大学本郷キャンパスの正門

インタビュー中の入村先生は、低いがよく通る声で丹念に自身の研究について話してくれた。それに、写真でもお分かりのようにシックでおしゃれな雰囲気までもが先生の周りを漂う。

そんな入村先生の研究室のメンバーは現在17人。その内訳は、博士課程6人・修士課程8人、それに学部4年次の学生5人。薬学部の4年生がどの研究室に入るかについては、学生同士で話し合って決めるという東大薬学部独特のルールが存在するらしい。なかなか自主的かつユニークで合理的な決め方ともいえようが、晴れて研究室入りした4年次学生たちは1年間を卒業研究に費やす。ちなみに6年制コースの学生の4~6年次の扱いについては、東大薬学部として今のところ未定とのことらしい。

「大学で学問を学ぶということは研究の第一線に参加することだと私は考えています。ですから学部生に対しては、それぞれ大学院生の元で実際に個別の研究に参加しながら卒業研究をさせるようにしています」

そうした学生たちへの指導方針については次のように語る。

「高校生の諸君にとっては、大学がどんなところかまだよく理解できない部分もあるかもしれませんね。大学もふくめ学校というのは学ぶところで、それは小学校から中学・高校それに大学3年次くらいまでと続いていきます。ところが大学4年生になって研究室の一員になると同時に、学問をクリエート(創造)する場に参加することになるのです。つまり、学問を教え与えられる側から学問を自ら発想し作る側に立場が変わるということです」

「そもそも科学というのはロジック(論理)の上で成り立つものですから、その論理的つじつまが常に矛盾なく通っていることが大切となります。どんなに画期的なアイデアあふれる内容でも、論理的に証明しその結果をきちんと説明できるように構築しなければ評価には至りません」

その点を、学生や院生に対する指導ではよくよく注意しているという。

毎週4回も入村ゼミが行なわれる理由

冬のある日の本郷キャンパス全景
冬のある日の本郷キャンパス全景
本郷キャンパスをめぐる赤レンガ塀
本郷キャンパスをめぐる赤レンガ塀

さて入村先生は、80年から10年余の長きにわたってアメリカ国内の大学で助教授・準教授として過ごした貴重な経験をもつ。そのあいだ研究活動に励みつつ、教壇に立って学生指導をしてきた。ここでは日米両国の大学教員を経験して感じたことも話してもらった。

「アメリカでわたしが教えた大学はテキサスという独特な州の大学で、東大とはちょっと気質も違いますし、単純に日米の比較はできません。ただ彼の国の学生たちの印象としてみんな真面目なのですね。とにかく一所懸命がんばる人が多かった。そこへいくと東大生は世慣れているというか、研究室に参加する当初は要領よく様々な世事もふくめたテクニックに長けているように見えます。しかし、学問の魅力を知って取り組むうちに学問の多様な側面で達人になっていく場合が多いのです」

「本当に大事なのは自らの研究対象にどれだけ興味があって好きかということですね。その研究を一生のモノにしていけるかどうかは何より研究対象に面白さを発見できるかどうかなのです。それはアメリカであろうと日本であろうと変わりません」

そして入村先生のお話は再び自身の研究室のことに戻る。じつは入村研究室ではゼミ演習形式のミーティングが毎週2回、研究チームごとのディスカッションが毎週2回も行なわれている。

「研究室内の意思疎通を図るためには常に顔を突き合わせることが大切ですね。研究チームごとに研究の進展をディスカッションしミーティングしているうちに、午後から始めて夜遅くまでかかってしまうことも多いですね(笑)」

最後に逸話をひとつ。入村研究室ではマウスを使った動物実験をすることが多い。「外科手術」をする実験ともなるのだが、当年とって58歳の入村先生、いまだに若い院生などには負けないらしい。

こんな生徒に来てほしい

我々が生きている21世紀の今もまだまだ未知のことがたくさんあります。地球とその自然には人類にとって未知なことで溢れ返っています。そうした様々なものに出会って感動し興味を抱く人、さらに未知なものに挑戦して科学的に解明してみようという情熱をもっている人ですね。

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