- 島田 浩章 教授
- 東京理科大学
基礎工学部 生物工学科 しまだ・ひろあき
1956年大阪生まれ。78年京都大学農学部農芸化学科卒。80年同大学院農学研究科修士課程修了。80年三井東圧化学入社。総合研究所勤務。87~90年名古屋大学大学院に出向し共同研究に参加。90~93年三井植物バイオ研究所に出向し主任研究員。96年三井東圧化学退職。96年東京理科大学基礎工学部助教授。01年より現職
ちなみに島田先生が主宰する研究室サイトのアドレスはコチラ → http://www.rs.noda.tus.ac.jp/~biost/OPFU/SMDA/11smrhm2.htm
代替エネルギーを支える植物分子生物学

- 島田研究室のある野田キャンパス10号館

- 実験室で学生たちと談笑する島田先生
東京理科大学基礎工学部の3学科(電子応用工学・材料工学・生物工学)に進学した有意な学生たちは、1年次を北海道・長万部キャンパスで過ごす。それも入学式当日の式終了と同時に北海道に移動し、そのまま1年間の寮制生活に入る。そして3学科共通の教養・基礎課程をみっちり学ぶこととなる。
「北海道の大自然に包まれて勉学とスポーツに1年間いそしむと言えば聞こえは良いのですが(笑)、広大な自然の中にある長万部キャンパスはまさに周りに何もありません。こういうところで1年間を過ごしていると、じっくりと熟成された独特で豊かな人間の形成がなされるようですね(笑)」
そう和やかに話してくれるのは基礎工学部生物工学科の主任教授でもある島田浩章先生。今週ご紹介する将来の恩師その人だ。
1年間全寮生活を終えた学生たちは、純朴さを残しながらも首都圏の大学に通う学生とはちょっと違う雰囲気を醸し出すらしい。島田先生によると基礎工学部全体の結束も強く、まるで往時の旧制高校生のような固い友情で結ばれて帰ってくるようだという。
そして、いよいよ2年次からは野田キャンパス(千葉県)に戻って各学科で卒業まで本格的に学ぶことになる。そこで島田先生が主任教授を務める生物工学科の概要について説明してもらおう。
「ここで研究しているのは生物工学で、いわゆる生物学科とは違うので注意が必要です。つまりはバイオテクノロジーあるいはバイオサイエンスといわれる分野です。ここでの研究のキーワードはずばり『遺伝子』。すべての生命現象の設計図は遺伝子にありますから、その遺伝子を研究して人類の将来に役立つものの発見と改良に努めていきます」
イネ遺伝子バイオマス研究の第一人者

- 東京理科大学野田キャンパスの正門

- 初夏の風が吹き抜ける野田キャンパス点描
島田先生自身の専門は「植物分子生物学」。このカテゴリーの内容については次のように簡潔に解説してくれた。
「これは植物の生命現象を遺伝子レベルで研究する分野ということになります。具体的には、その植物が植物であることの形質を決定している遺伝子を探し出すこと。メンデル(Gregor Johann Mendel)に代表される古典的な遺伝学を高校生の皆さんは勉強してきたわけですが、あれらは単に現象的な問題に過ぎません。なぜそういう現象になるのかを遺伝子・分子レベルから解明しようというのが植物分子生物学の研究分野となります」
このうち島田先生が具体的にずっと研究テーマとしてきたのは「イネの研究」を中心とした分野だ。
「現在のわたしの主要な研究テーマは『バイオマスとしてのイネの生産性向上について』です。生物資源=バイオマス(biomass)=は大気中の二酸化炭素(CO2)を固定して作られるものですから、石油などの化石資源とは異なり地球上のCO2を基本的に増やすことはありません。そのため地球温暖化対策の切り札として注目されています」
「しかしバイオマスの原料は本来は我々人類の食糧でもありますから、単純にこれを石油の代用として使用すると、大変な食糧危機や物価高騰を引き起こすことになります。それを防ぐためには、バイオマス資源である作物の生産性を飛躍的に上げる必要が出てきます。お米(イネ)に関していいますと、①そのデンプン量を増やす②イネ自身を大きくする③環境ストレス(乾燥・低温など)に強くする④虫・鳥害に強い品種に改良する――などの方法が考えられます」
そのためにイネの遺伝子を解析して改良を加えていく。そのことによる個体での収量の増加はわずかでも、世界中で生産される総量での増加は計り知れない量になり得る――これこそが島田先生の信念。現在すでに乾燥ストレスに強い遺伝子の抽出にも成功。その遺伝子を在来種のイネに組み込むことで、日照りで一度枯れても再度水を与えると復活する「スーパーイネ」もできつつある。
このほか島田研究室では、昆虫が生産する抗菌ペプチドの「タナチン」を植物に用いる技術の開発にも成功している。これは従来の抗生物質に対する耐性菌にも効果があるため、理論的には医薬品等への応用も大いに期待できるという。さらに生分解性プラスチックの研究や砂漠の緑化問題――等々。こうして島田先生の研究フィールドはますますの広がりを見せる。
3年進級パスすれば至福の実験ざんまい

- 東京理科大学野田キャンパス図書館

- 最寄り駅からこの橋を渡ってキャンパスへ
日本を代表する理系私大として東京理科大学は最古の歴史と伝統を誇る。またその進級の厳しさでも広く知られるが、それは生物工学科を含む基礎工学部とて全く同様の事情となる。
「生物工学科の教育コンセプトとして、1年次においては北海道キャンパスで自由に伸びのびとやってもらいます。しかし2年次ともなると生物工学の専門教育が始まり、必修科目も大幅に増えてきます。ここが学生にとって大変な1年間になります。というのも2年次から3年次への進級には非常に厳しい関門が待っているからです」
この進級査定は本当に厳しいらしく、多い年度には2割近くの学生の進級が認められずに留年することがあるらしい。このあたり東京理大生物工学科をめざす受験生諸君は今から心しておかなければならない。
「ただ、この進級をパスして3年次になりますと、実習中心の実験ざんまいの日々が始まります。微生物の実験に始まって細胞培養やDNA診断など、かなり高度な実験までが経験できるようになっています。この学科をめざす学生は実験の好きな人が多いようですから、それこそ『実験浸け』の楽しい1年間になるはずですよ(笑)」
そして4年次になると各教員の研究室に配属になって、1年間かけて卒業研究に打ち込むことになる。
毎月1回は必ず全スタッフと個人面談
島田研究室では例年10人前後の研究生を受け入れる。卒業研究のテーマについては、研究生の希望を聞いた上で先生のほうから提示したものの中から決められていく。そこで島田先生の指導方針だが――
「学生たちの自由な発想こそを大切にしたいと思っています。実をいいますと『羊と羊飼いの関係』を目指しているんですよ。羊たち(つまり研究生たち)は勝手に自由にやっているつもりでも、いつの間にか羊飼い(つまり私)の誘導する方向に導かれている――そんなあり方を理想としているんですがね(笑)」
そうは言ってもなかなか思うようにはいきませんね――そう豪快に笑う。
そんな島田先生の研究室では全メンバー参加のミーティングが週1回開かれ、さらに先生と大学院生および学部研究生との個人面談を全員について毎月1回必ず行なう。懐の深い包容力のある雰囲気を感じさせる先生だが、学生指導においても緻密にして要を得た配慮を心掛けているのだ。
こんな生徒に来てほしい
人間的なキャパシティーの大きな人。自由な発想ができる人。だれとでも打ち解けられる人。実験の好きな人。それに失敗を怖れない人ですかね。ただ何事にも失敗には必ず原因がありますから、それをちゃんと追究する姿勢が大切となります。実験に失敗は付きものですが、最初から結果がわかっている実験など本来の実験ではありません。そんなのは作業というべきものなんです。

