- 遠藤 健治 教授
- 青山学院大学
文学部 心理学科 えんどう・けんじ
1953年神奈川県生まれ。76年専修大学文学部人文学科卒。82年青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士課程単位取得退学。83年青山学院大学文学部講師。89年同助教授。98年より現職。主な著作に『Excelによるデータ処理入門』(北樹出版)『心理学名画座』(近代文芸社)『例題からわかる心理統計学』(培風館)などがある
現代社会人の行動や内的過程に迫る

- 遠藤研究室のある11号館「総合研究」ビル

- 都心を走る青山通りに面する青学キャンパス
青山学院大学文学部の心理学科――。今年07年度からこの人気学科において履修科目の充実を図るための一大カリキュラム改革が実施されて話題となっている。その改革の中心になったのが今週ご登場願う心理学科主任教授の遠藤健治先生その人だ。さっそく今回の改革の意図するところからお話し願おう。
「これまで本学の心理学科は昼間コースと夜間コースの2コース制をとってきました。今回これを統合して1つの学習課程とします。そのぶん履修科目を大幅に増やして充実させるというのが本改革の一番の目的です。この履修科目については、臨床医療系に精神分析学・音楽療法・健康心理学などが増え、応用社会心理学系に広告心理学やノンバーバル・コミュニケーション(言葉によらないコミュニケーション)などを増やします」
今どきの高校生諸君の多くが心理学に関心をもつが、その大半はカウンセリングなど臨床医療系をイメージしがちだ。しかし実際に大学の心理学科に入学してみると、ひとくちに心理学といっても各種・多様な分野があることに目を開かれる人も多いことだろう。
「そもそも心理学とは、主に人間を対象にしつつも人間の外から見える行動や内的なプロセスについて科学的に探求していく学問なのです。その専門領域には臨床心理学のほかに認知心理学や発達心理学・社会心理学などの分野もあります」
外国語学習者の心理傾向に迫る

- 都会派キャンパスライフのシンボル・青学正門

- 初夏真っ盛りの青山学院大学キャンパス全景
ところで遠藤先生自身の専門は社会心理学。これは社会のなかで生きる私たち人間の行動や内的な過程を探る研究分野だ。これまでの先生の研究内容のなかから今回2つのテーマの成果について語ってもらう。
まず初めは「外国語学習のストラテジー(方略)」。これは96年から継続している英米文学科教授との共同研究で、調査対象は青山学院大学英米文学科学生約4700名に及ぶ労作でもある。
「結論的に言ってしまいますと、英語学習の成績上位者の主な傾向としては、①生活のなかに英語を持ち込んで積極的に使う②英語を読むとき一語一語調べたり逐語訳したりしない③だれか相手を探して英語でコミュニケートしようとする――といった結果が見られました。つまり細々としたことに捉われないで大きな流れで文脈を把握していこうというストラテジーなり方法が英語習得にとっては有効だということが分かります」
ちなみに成績下位群の傾向としては、①受験勉強と同じ英語学習法を採用している②文法や語意など細かなところに神経質になる③失敗を恐れる④自分の感情に過剰に反応しやすい――などの結果が出たそうだ。
英語を苦手にしている決して小数派でない高校生諸君には示唆的な調査結果でもあろう。
「女性の化粧」を心理学から見ると

- 歴史を感じさせる青山学院大学本部ビル
もうひとつ。遠藤先生の最近の研究テーマである「対人魅力」の研究の中から「女性の化粧」について。ちなみにこの調査対象となったのは青山学院大学の3~4年次女子学生だという。
「女性が化粧(メーク)をするのは、ただ外見のみを整えているわけではありません。女性にとってメークは、顔をつくるのと同時に内面をも含めた自分自身をつくり上げる行為にもなっているのです。鏡の前で『わたしは今日こう生きるんだ』というセルフマネージメントを毎日していると言ってもいいでしょう」
この興味あふれる調査において遠藤先生はゼミ生とともに次のような実験方法も試みた。
「調査対象として協力してもらった女子学生たちに対して美容師から入念な化粧をしてもらって、その女子学生たちに学内を自由に歩いてもらったのです。すると入念な化粧をしてもらったことで自信がついたのか、メーク前より対人距離が短くなることが分かりました。友人と話をするときなど化粧前より相手に近づいて話すようになったのですね。他人に対して積極的・前向きになる人が多くなるという実験結果でした」
筆者等いかつい男性が慣れないお洒落をしたハレの日など、ついつい人の陰に隠れて目立たないようにしてしまいがちだ。しかし女性心理はどうやら全く逆らしい。こうした研究はまだ始まったばかりで、調査対象の彼女らの追跡調査も含めて今後さらに研究を深めたいとも遠藤先生は語る。そこからどんな女性心理のあやが導き出されるのかオジサンならずとも興味深い。
このほかにも女性心理をその服装・ファッションから解明しようという研究なども進行中だという。
それら自らの研究内容について楽しそうに語る遠藤先生。一語一語を確認するように門下漢の筆者にも噛んで含めるようにして説明してくれる。非常にていねいで心やさしい人柄がうかがえる。
心理学科カリキュラム改革に取り組む
青山学院大学心理学科のゼミ演習は3年次から始まる。遠藤ゼミは一番の人気ゼミともされて、女子学生を中心に例年20数名のゼミ生を受け入れている。これでも選抜した結果であって、入ゼミ希望者はこれに倍する人数になっている。
「わたしのゼミでは、まず自分の関心のあるテーマについて先行的な研究に取り掛かることから始めてもらいます。それをゼミで発表してもらうというスタイルで進めていきます。次第に研究テーマを固めていき、4年次の卒業論文につなげるようにしています。心理学の研究には必ず実験か調査が伴いますので、3年次の夏休みまでにはテーマを固めるよう指導しています」
ゼミ生に女子学生が多いこともあって、やはり卒論のテーマは対人への説得や化粧・衣服・色彩などに関するテーマが選ばれることが多いという。そこで遠藤先生の指導方針についてだが、次のように語る。
「それぞれの学生のレベルに合わせて指導するということでしょうか。全員を一律の基準で見るのではなく、それぞれに努力の跡が見えることが大事なのです。『この学生はこのあたりまでが限界だろう』『この学生はもう少し要求水準を上げてもいいだろう』などと細かく各自見極めながら指導するようにしています」
こうしたきめ細かい配慮はいかにも丁寧さが身上の遠藤先生の面目躍如といったところだろう。インタビューの最後に、あらためて青山学院大学心理学科の特徴について語ってもらった。
「07年度からのカリキュラム改革によって履修科目がより充実しましたので、心理学をさらに体系的に学べるようになりました。それに1学年100人あまりの定員ですから、学生と教員スタッフの距離が近くて非常にアットホームなところも特徴になりますね」
こんな生徒に来てほしい
高校生のあいだに質問の仕方をよく訓練しておいてほしいと思います。最近の大学生を見ていますと、勉強をするということを、きちんと授業に出て先生の講義をしっかり聞きノートに取ることだと誤解している人が多いようです。それだと分からないことがあっても質問をしないのですね。積極的に質問することによって学生自身の理解が促進され、我々の講義全体の質も向上するものなんです。

