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Good Professor

石神 隆

石神 隆 教授
法政大学
人間環境学部 大学院 環境マネジメント研究科

いしがみ・たかし
1947年静岡県生まれ。72年東京工業大学大学院理工学研究科修士課程(経営システム工学専攻)修了。73年日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。97年に同行を退職するまでに国際開発センター(79年)・(財)日本経済研究所(87年)・米ブルッキングス研究所(90年)などに派遣および出向。97年法政大学産業情報センター教授および大学院社会科学研究科教授。99年同人間環境学部教授。03年同大学院環境マネジメント研究科教授。主な著作に『都市開発』(ぎょうせい)『情報化と都市の将来』(慶應義塾大学出版会)『地球環境対策』(有斐閣)『国際経営と経営文化』(文真堂)などがある(著作はいずれも分担執筆)

人々の要望と義憤に応える「地域計画」

石神研究室のある「ボアソナードタワー」
石神研究室のある「ボアソナードタワー」
大規模改修中の市ヶ谷キャンパス正門付近
大規模改修中の市ヶ谷キャンパス正門付近

近未来の恩師プロフェッサーとして現役高校生諸君に今回ご紹介するのは法政大学人間環境学部の石神隆教授。取材時間1時間半との事前の約束だったが、その倍以上の4時間余にわたって自らの研究や学生指導について語ってくれた。その溢れるような情熱に圧倒されそうな熱き時をここに再現してみたい。まずは石神先生の所属する人間環境学部という耳新しい学部についてだが、具体的にどんなことが学べる学部なのか聞いてみよう。すると即座に「いわば文科系主体の環境学部ということですかね」という答えが返ってきた。

「一般的に地球環境問題といいますと、理工系のいわゆる環境科学等の学部で扱うものだと思われがちなのですね。しかし環境問題の特徴として文理とり交ぜていろいろと学際的なアプローチが必要ということがありまして、経済をはじめ社会・法律等の面からの検討も絶対に欠かせません。環境問題の解決には自然科学系の色合いの濃い環境科学や生態学だけからではなく、社会科学あるいは人文科学的な視点からのアプローチも模索することが大事です。もちろん我々は理系の分野も基礎として学習します。理系・技術系専門家と対等に環境問題について議論・討論ができる実力をもった文系の新しい形の人材を育てる――これが人間環境学部の特色でもあります」

新世紀を迎えて温暖化対策など地球規模の環境問題に対する企業・自治体・行政の社会的責任が厳しく問われるなか、この問題に精通している人材をきちんとしたキャリア・スキルの持ち主として認める一般企業や自治体も増える傾向にある。そのためもあって、99年の発足からまもない法大人間環境学部卒業生の就職状況はおしなべて好調という。

さて、その石神先生の専門は「地域計画」。この研究分野の概要については次のように語る。

「地域計画とは、地球規模の環境問題を中心にすえつつ、地域コミュニティーで日々暮らす住民・市民の生活の質を向上し持続させるような具体的な『まちづくり』『地域づくり』について考えていくことを指します」

さまざまな現実の物理的・社会的な要素が絡み合う「地域づくり」にあたっては、その地域計画プロジェクトを推進するにしても研究するにしても実に多様な知識が求められる。そこで、文末の石神先生のプロフィール欄に注目していただこう。

東工大で経営システム工学を修めた石神先生は、政府機関の日本開発銀行に就職して地域開発を担当。その間にも国際開発や経済などの研究所に派遣・出向するなど、世界中・日本各地の「現場」を歩きいろいろな体験・研鑚を積む。机上に止まらない豊富な現場体験とそのマルチな学識があるからこそ、地域づくりのアドバイザー・研究者としてまさに打ってつけな人とも言えるのだ。

エキサイティングな街づくり事例の数々

新装された「外濠校舎」。奥はボアソナードタワー
新装された「外濠校舎」。奥はボアソナードタワー
法大市ヶ谷キャンパス内にはコンビニもある
法大市ヶ谷キャンパス内にはコンビニもある

これまで例えば長野県飯田市や青森県大畑町(現むつ市)における地域づくり・まちづくりなどに関与し、また、中国の黄土高原砂漠化地帯の地域づくりにも携わってきた。そんな石神先生は、これら地域の活動における実例をいくつも熱心に紹介してくれる。そして、その話のどれもが実に興味深く時にエキサイティングですらある。

たとえば飯田市――「南信濃・伊那盆地の地方都市」から、世界に冠たる「人形劇のまち」へと変身。来たる08年には「世界人形劇フェスティバル」の開催地に決まっている。経済産業省が推進する「エコタウン」(産業から排出される廃棄物を別分野の原料にすることで廃棄物ゼロをめざす運動)の第1号指定の市となったことや地域独自の環境認証など面白いいエピソードの連続だ。

一方、大畑町(現むつ市)の事例では、人工化した河川を自然河川に近い状態に戻すとか、コンクリート化された海岸線を元の磯場に近い形に戻すとか、環境を主体とする修復工事が地域の力により行なわれてきた。これらは、全国的な法律改正にもつながっていくが、住民運動の成果としての事例としては画期的なことらしい。本年07年には、このコンクリート護岸が撤去されて自然に戻された海岸に対して、日本土木学会から「デザイン大賞」が授与されるというオマケまでも付いた。

「沙棘」植林による砂漠緑化運動の永続性

外堀通りからの法政シンボル・ボアソナードタワー
外堀通りからの法政シンボル・ボアソナードタワー

こうした環境問題に絡めた地域づくりに関与する原動力ともなる実践的な心得として石神先生は次の3点を強調する。

「①その地域の風土・暮らしを五体で感じること②その地域のすばらしさに素直に感動すること③一方おかしなものには公憤・義憤の気持ちをもつこと――まずはこの3つのことが大切になりますね」

さらに中国・黄土高原の砂漠化防止運動においては、単に緑の樹木を植える単純良心的かつ先進国主導的なイベントとしてだけで終始するのではなく、その地域の住民が経済的に潤う換金性のある植物を植えて永続性のある緑化運動にすることが肝要だという。そのため例えば沙棘(さじ)という多年生潅木の植林を石神先生は推奨してきた。砂漠など乾燥した厳しい自然環境に強いうえに、その果実は栄養価の高いジュースやジャムになり、その種子は薬効成分をもち、その葉は薬用茶にもなるという。

「そうした意味で、例えばこの沙棘は砂漠の緑化に理想的な植物なのですね。ビジネスとしても成立しますから、現地の人々も積極的に大きく育て上げようと努力するわけです。このように砂漠化問題の解決などは『ただ環境だ緑化だ』などと直線的に考えて進めているだけでは狭い範囲に止まってしまいます。その地域が社会的に発展する経済性をも備えた計画でないと持続的に成功はしませんね」

人生の指針となるビジョンを身に付けよう

法政大学人間環境学部には「フィールドスタディー」という独特なプログラムが数多く用意され、上記3つの石神先生のプロジェクトにも現役の学部学生も参加できるようになっている。プロジェクトの現地で実際に人々と交流し、その地域の風土を五体すべてで感じる。この経験を通して人間的に成長する学生が実に多いということだが、これは大いにうなずけよう。

これらとは別に人間環境学部学部のゼミ演習は2年次から始まり、2~4年次まで合同で行なわれる。石神ゼミでは年度ごとに統一テーマが設定され、グループで研究するスタイルをとる。ちなみに今年07年度のテーマは「ウオーターフロント」だという。そうした学生への指導方針について石神先生は次のように話す。

「環境問題や地域計画に限らずあらゆる知識というのは遠からず必ず陳腐化してしまいますので、わたしは専門知識をただ覚えさせるようなことはしません。それよりも何に対しても対応できる処理能力や創造力のほうが重要という考えをもっています。さらに、それらの能力をつかさどる一貫した芯となるもの(ビジョンと言ったほうが良いかもしれませんが)がないといけません。そうしたことを大学4年間でぜひ身に付けてほしいと思って指導しています」

そのあと石神先生は学部での講義を実際に再現して見せてくれた。用意周到たるプレゼンテーションソフト(パワーポイント)を駆使して展開されるその内容は非常に興味深く飽きさせない。どうすれば現代学生の興味をひいて関心を保てる講義ができるのか、この基本的な課題にこれほど心を砕く大学の先生の存在がいかに例外的なことか君たちもやがて思い知ることだろう。

知的好奇心を満足させられながらエキサイティングにして優しい――そんな理想的なプロフェッサーを独り占めすることとなり、筆者にとっても至福の4時間となった。

こんな生徒に来てほしい

多少古臭いことばの響きに感じられるかもしれませんが、とにかく「志」が大切だと思います。他人から与えられたものではない自身納得の目標をもち、努力してそれを達成するという喜びをぜひ経験すべきです。自ら感動できるところに赴いて、そこで五体に感じられるものは人間本来のエネルギーともなり得ます
これまでの通念・常識に囚われることなく自らの内なる声に耳をすませる。そして人生の目標となるものを見つけ出してどこまでも貫徹していく。そうしたことこそが一生モノの志ともなります。法政大学の人間環境学部はいわゆる「目的学部」で、法学部や経済学部のような「手段学部」とはちょっと雰囲気も違います。それだけに各自それぞれ目標を見つけやすいと思いますよ。

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