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Good Professor

諏訪 敬祐

諏訪 敬祐 教授
武蔵工業大学
環境情報学部 情報メディア学科

すわ・けいすけ
1953年徳島県生まれ。78年慶應義塾大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了。78年日本電信電話公社(現NTT=日本電信電話株式会社)入社。横須賀電気通信研究所を皮切りに基礎研究所・ワイヤレスシステム研究所・NTT移動通信網(株)無線ネットワーク開発部・NTTドコモ研究開発企画部担当部長などを歴任。03年より現職。主な著作に『情報通信システムの基礎』『情報通信概論』(ともに丸善)『通信ネットワーク早わかり講座』(日経PB)などがある(いずれも共著)
ちなみに諏訪先生が主宰する「諏訪研究室」Webサイトのアドレスはコチラ → http://www.yc.musashi-tech.ac.jp/~suwa/

利用者の視点からのIT情報技術とは

武蔵工業大学正門
武蔵工業大学正門
大学名の石碑
大学名の石碑

武蔵工業大学環境情報学部(武蔵工大横浜キャンパス)は環境情報学科と情報メディア学科からなり、首都圏におけるモダンな都市型キャンパスの代表ともいえよう。この環境情報学部においては文系・理系の双方から学べることでも評価が高い。今週紹介する一生モノのプロフェッサーは情報メディア学科の諏訪敬祐教授その人。まずは環境情報学部と情報メディア学科それぞれの特徴についてお話を頂戴しよう。

「本学部の最大の特徴は、文系・理系どちらの人でも環境情報関連について学ぶことができるということです。環境情報学科と情報メディア学科の両学科ともに文系・理系各分野の教員が勢ぞろいしていますから、それぞれ自分の興味と関心に近接するテーマを研究する先生と出会うことができます。わたしの所属する情報メディア学科でも、情報メディアのシステム構築側(主として理系)とシステムを利用する側(主として文系)の両面を補完しながら勉強や研究ができるようになっています」

アナログ世代にとっては、世紀をまたいで「IT革命」「デジタル革命」「第3次産業革命」などとも称されるほどに情報技術(Information Technology)のあらゆる分野への急速な進展ぶりは驚異的だ。これに伴い、経済困窮家庭の子弟や高齢者におけるデジタルデバイド(情報格差)の存在が新たな社会問題として浮上してくるほどだ。

しかし、早稲田塾に通う現役高校生諸君にとってパソコンやインターネット・携帯電話・モバイル端末・電子辞書などは物心ついた時から身近にあった存在でもあろう。そうしたデジタル志向の現代学生気質や学問へのニーズに合わせるためもあって各大学・アカデミズム側の諸改革もいろいろと進んでいる。

しかし、文理取り交ぜて幅広いコンテンツを満載する「学ぶ場」がまだまだ追い付かないのも実情だ。そうした状況のなかで武蔵工大環境情報学部はなかなかユニークで魅力的な存在ともいえよう。

開発側によるお仕着せ的モバイル技術への反省

諏訪教授の研究室がある2号館 情報メディアセンター
諏訪教授の研究室がある2号館 情報メディアセンター
この入口から諏訪研究室へ
この入口から諏訪研究室へ

ところで諏訪先生自身の専門分野だが、そのものズバリの「情報通信技術」。じつは先生は長くNTT関連の研究所に勤務し、モバイル技術開発の現場にずっと身を置いてきた。NTT研究所といえば世界で1、2を争う携帯電話などの移動通信技術の最先端研究で知られる。携帯電話やPHSなどのシステム設計の研究開発業務を長年担ってきた。

そして大学教授として華麗な転身を遂げた諏訪先生は大きく見方を変えて、利用者の側に立ったモバイル技術の研究にも力を入れている。

「研究所時代のわたしの専門はモバイル・無線通信など情報通信の新技術やシステムの開発でしたが、この大学に赴任してからは利用者の側から見た情報通信システムのあり方という観点にシフトして研究しています。つまり『利用者にとって使い勝手のいいシステム』『利用者にやさしいシステム』などについての研究ですね」

ともすると技術開発サイドからの「お仕着せ」「押し付け」感の強かったのがIT関連の製品・サービス商品等のこれまでの実情でもあった。ちょっと設定や操作を誤ると、全データを紛失したり個人情報が全世界にバラまかれる可能性――。消費者が知らないで利用すると情報の安全性が損なわれる危険性のある製品・サービスがこれほどに大々的に売られるなんてことは白物家電(冷蔵庫やテレビなど)などでは考えられない。

諏訪先生のような利用者サイドからの情報通信システムの研究は、ようやく人間的に成熟したIT情報通信技術の未来への道筋へと続くものとも言えよう。そして、こうしたITテクノロジーに文理ともに精通する人材の育成――それこそが自らの重要な使命として学生指導に懸ける熱き想いをも垣間みせる。

地球・隣国の危機救う「砂漠緑化モニタリング」

さて、諏訪先生の研究室における近年最大のトピックスとしては中国での「砂漠緑化プロジェクト」のことに触れないわけにはいくまい。これは環境情報学科の他の研究室と共同で北京近郊と内モンゴルで進めているもので、諏訪研究室の担当は「環境モニタリングシステム」の開発ということになる。

「これは中国の現地に気象観測装置やWebカメラを常時設置して、そのデータや映像を無線技術やインターネットを利用して遠隔地でリアルタイムにモニタリングできるシステムです。学内での実験は成功していよいよ中国現地に設置しようという段階になって問題が発生してしまいました。じつは専門的な気象データ等を国外に持ち出すためには中国政府の許可が必要だというのです。そういうわけで現在はその許可が下りるのをジリジリと待っているところなのです(笑)」

とんだ予期せぬ一時休止となった。しかし、このビッグプロジェクトには北京の大学も参加しており、中国政府から許可が下りるのは時間の問題――。そう笑ってあわてず騒がずの余裕を見せる諏訪先生でもある。

このシステムが導入されると、大規模な砂漠化問題などに悩む彼の地における植林後の緑化地帯の画像データや温度・湿度・風向・風速などの環境データが24時間態勢で武蔵工大横浜キャンパスに居ながらモニタリングできることになる。ややもすると東アジアの諸問題をめぐって政治的緊張感が漂う日中関係だが、真に友好的・建設的な共同プロジェクトの実例として一大成果を挙げるためにも、画期的なこのシステムの一日も早い設置が期待される。

このほか何時でもどこでも通信が可能な「ワイヤレスセンサーネットワーク」(ユビキタス情報通信)などIT先端諸技術の開発内容等についても門外漢の記者に詳しく説明してくれる諏訪先生の姿がそこにあった。

「親身の個別指導」の情報通信技術研究

通常の理系大学において学部学生が各教員の研究室入りをするのは4年次の1年間だが、武蔵工大環境情報学部では3~4年次の2年間研究室入りをする。この間ひとりの教員について専門性の高い教育指導が受けられるわけで、学生たちには好評だそうだ。

「わたしの研究室には3年次学生が16人、4年次が18人おり、それに院生2人・研究生1人の合計37人が所属しています。研究テーマはひとり1テーマが原則で、グループ研究はありません。ということは私の研究室だけで37もの研究が行なわれていることになります。その個別指導に時間を取られて、わたし自身の研究に手が回わらないのが目下の悩みのタネなのです(笑)」

学生たちの研究テーマとしては、①ワイヤレスセンサーネットワーク②モバイルコンピューティング③環境モニタリングシステムネットワーク④IPネットワークにおけるセキュリティー技術⑤データ放送表示システム――などがズラリと並ぶ。これに文系のテーマを絡めた研究をする学生もいて確かに指導する諏訪先生はかなり大変そうだ。

そうした学生・院生たちへの指導方針については次のようにも語る。

「研究テーマの選定については自分で興味あるものを自ら見つけることが原則です。研究方法などは各自の自主性に任せ、日々の問題解決も学生自身の力で行なっていくというのが私の方針です。もちろん研究に行き詰まったり悩んでいる学生には、私のほうからアドバイスもします」

「ゼミを毎週開いていまして、全員から研究の進み具合を逐次報告してもらっています。この報告を通してコミュニケーション能力を磨いてもらうのも副次的なねらいともなります。研究者の道に将来進むにしても社会人としても将来かならず役立つ能力(プレゼンテーション力や文章力など)を養うという意味も込めているわけですね」

それぞれの研究テーマについて学生自らが見つけ、自らの力で解決していく。一見きびしそうな学生指導スタンスだが、こうした40人近い学生・院生の研究指導のために自身の研究を棚上げして当たる多忙さなのだ。そんな諏訪先生の学生たちを見守るまなざしは限りなく温かい。今どき日本国内の大学でこんな師にめぐり会える学生は例外的な幸せとも言えるだろう。

話は変わるが、武蔵工大環境情報学部では、日夜進められる研究成果を地域に還元しようというのを学部のポリシーに掲げて実践している。たとえば夏休み中のキャンパスを開放した地元小中学生のための宿泊学習の体験をはじめ、キャンパスのある都築区と連携した卒業研究成果発表の実施、高齢者向けのパソコン教室、地域のNPOグループとの共同活動など地域に密着した諸活動を展開している。非常にハートウォーミングないい話である。

そして諏訪先生たちもこうした試みに積極的に参加しているのは言うまでもない。初対面のインタビューではあるが、先生もまた非常にハートウォーミングな人柄の持ち主とお見受けした。

こんな生徒に来てほしい

これをやりたいというものが自身の中にあって、それに対する情熱や熱意のある人ですね。自分が何をやりたいのか長期的な目標を立てられない希薄な人が以前にも増して見受けられるようになりました。一度きりの人生なのですから、けっして他人には譲れない自ら明確な目的とか気概をしっかり持ってほしい。また、環境問題も含めどんな研究も情報が基本になります。ただ受け身的に教えられるだけでなく、この情報を使えばこんな研究ができるのではないか?などと若者らしく積極的に提言してもらえればとも思いますね。

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