- 中村 功 教授
- 東洋大学
社会学部 メディアコミュニケーション学科 なかむら・いさお
1965年東京生まれ。87年学習院大学法学部政治学科卒。94年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。94年松山大学人文学部専任講師。96年同助教授。03年東洋大学社会学部助教授。04年より現職。主な著作には『講座社会言語科学 第2巻メディア』(ひつじ書房)『図説 日本のマスメディア』(前著ともに分担執筆・日本放送協会)『シリーズ災害と社会3 災害危機管理入門』(共著・弘文堂)がある。
ちなみに先生が主宰する「中村功のホームページ」のURLアドレスはコチラ → http://www.soc.toyo.ac.jp/~nakamura/
「キューレスネス・メディア」研究が迫る災害情報論

- 中村研究室のある白山キャンパス2号館
今週ご紹介する一生モノのプロフェッサーは東洋大学社会学部の中村功教授。若々しく非常にはつらつとした雰囲気が周りに満ちあふれている先生だ。理路整然とした口跡もすがすがしい。まずは教壇に立つメディアコミュニケーション学科の特徴から聞いた。
「ここは社会学部に属しますから、メディアについて社会学の視点で研究する学科となります。社会学というのは人間関係について多方面から研究していく学問分野ですから、実社会の中またはメディアを通した関係性の研究が中心です。学科の特徴としては、単に頭のなかだけで理論的に研究するのではなく、実証的研究にも力を入れています。つまり現地調査をはじめ当事者の話を直接聞いたり、アンケート調査をしたりといったフィールドワーク(社会調査)を重視しているのです」
フィールドワークは、メディアコミュニケーション学科に限らず東洋大社会学部の学生全員に義務づけられている。社会学系といえどもこうした調査実習が必修になっているのは珍しい。
中村先生自身の専門は「メディアコミュニケーション論」と「災害情報論」。総務省などの政府関係やNTT等通信会社の各種委員会・研究会メンバーの常連で、この分野のエキスパートとされる。
「メディアコミュニケーション論の方では、携帯電話(あるいは携帯メール)などにおけるコミュニケーションを通じた人間関係についての研究をずっとしてきました。研究手法としては聞き取りやアンケート調査などによって、携帯メールのコミュニケーションの特徴、それが人間関係に与える影響などについて調べています。その特徴をいくつかを挙げてみると、口語的な表現が多いことと、実際に対面していないことで羞恥心が薄れ、思っていることが伝えやすくなるなどになります。反面、相手の反応がすぐに分かりにくいために、意思疎通の食い違いを起こしやすいという面もあるのです」
これらを専門用語で「キューレスネス・メディア」(Cuelessness Media)」、つまり「手がかりのないメディア」と呼ぶとも教えてくれた。
大災害時に情報伝達がうまくいかない理由とは

- 春雨けぶる白山校舎正門からのアプローチ
そしてもうひとつの専門が「災害情報論」である。
「こちらは、災害などの緊急時においてコミュニケーションメディアでいかに情報伝達をするか、そして人命救助などを効率よく行なうべきかなどについて研究する分野です。このキューレスネス・メディアには、①事前の避難情報②災害発生時の救援情報③家族や知人の安否情報の発信――という3つの可能性があります。これらのシステムは日々進歩しているものの、なかなか実際の災害現場でうまく機能していないのも現実です」
機能不全の原因としては、技術的な問題もさることながら、災害に遭遇して心理的なパニック状態に陥った被災者たちによる人的要素のほうが大きいという。そうした問題を解決するために、各種委員会や研究会で提言し、講演会で一般への啓発を日々続けているのが中村先生でもあるのだ。
中村ゼミで育む本物の知識とコミュニケーション」

- あいにく雨の東洋大白山校舎の建物群
メディアコミュニケーション学科には、1年次から4年次までの全年次にゼミがある。これは社会学部でも同学科だけという。内容は1年次が導入で、2年次からが本格的な専門となる。中村先生は「災害とコミュニケーションメディア」をテーマにした専門ゼミを開いている。
「わたしのゼミは2年次と3年次では別々に開いていますが、方法的には同じです。それぞれの年次でテーマを決め、前期はそれに関する文献講読。後期はそれを受けてゼミ生各自でテーマを決め、調査研究をして論文にまとめてもらいます。そうした訓練をへて、4年次で卒業論文に挑むわけです」
卒論の段階で新たなテーマで挑んでもいいし、2・3年次に扱ったテーマをさらに深化させるのも構わないそうだ。なお中村先生のゼミを取る学生は例年20~30人にもなり、学科でも人気ゼミとなっている。そうした指導方針については次のように語る。
「まず、大学というところは『学問』をするところです。学問の『学』については講義で知識を得ることで、『問』のほうがゼミにあたると思います。つまり、自ら問題を提起して自問し、考えを深めて解を得るという意味ですね。それをゼミの指導方針にしています。運営方針としては、出欠が厳しい。飲み会や行事への参加もそれにカウントしています(笑)。それにゼミの仲間から生まれる友情関係も大切。そこに利害が絡みませんので、一生続くこともありますから大いに育んでほしいですね」
さらにコミュニケーションの重要さ、実際に面接して調査し語り合うことの大切さ、これらについても強調しているという。
小事・各論から全体に迫っていく社会学の真骨頂

- 東洋大のシンボル井上円了像と「井上記念館」
そして中村先生自身の災害情報論の研究についてはこんな話をしてくれた。
「私がなぜ災害時の情報論のような狭い範囲にこだわって研究しているかといいますと、限定された規模を扱うことによって必然的に深く究められるからです。その応用として、世の中の仕組みとか世の中の動きといった広い世界が逆によく見えてくるのですね。具体的には、災害時の情報論を研究することで情報化問題や高齢者問題・グローバル化問題などがあぶり出されてきました」
まさに社会学とは何であるかを示唆した話でもあろう。血気盛んな若者はしばしば大きなテーマを設定して、大所高所から研究したがる。その結果として抽象的な結論しか導き出せないことも多い。本来は細かいことを深く掘り下げていくことで、社会や時代までもが見えてくるのだ。
さて教壇を離れた中村先生は、音楽を楽しみ、よく旅に出かけ、またグルメでもある。音楽はサルサやボサノバを中心としたラテン音楽を好み、わざわざライブハウスへ出向いて聴くほどという。旅は海外が多く、同僚の先生と自転車レースを見に行ったり、古代文化をたどったりの旅だそうだ。
そんな旅先で食べた食事のことが、先生が主宰するWebサイトにリンク掲載されている。先生の研究論文も掲載されているから、ぜひ1度アクセスしてみてほしい。
こんな生徒に来てほしい
まず、ぜひ国語力を身に付けてほしいですね。国際化時代だから英語だという意見もありますが、それより先に自らの母国語・国語の力をつけること。とくに漢字の読み書きと長文の読解力ですね。何をするにもこれが基本になると思います。勉強以外では、社会の動きに対して敏感になってほしいです。それが社会学を学ぶうえでの最低限の動機づけになるので。










