- 山口 浩一 教授
- 電気通信大学
電気通信学部 電子工学科 やまぐち・こういち
1961年長崎県生まれ。’86年電気通信大学大学院電気通信学研究科通信工学専攻修士課程修了。’86年電気通信大学電気通信学部助手。’95年同助教授。’08年より現職。安藤博学術奨励賞受賞(’91年)。工学博士(’93年・東京大学)。主な著作に『工業材料大事典』(工業調査会)『ナノマテリアルハンドブック』(NTS)『電子材料ハンドブック』(朝倉書店)などがある(著作はいずれも共著)。
山口先生が主宰する研究室のURLアドレスはコチラ → http://www.crystal.ee.uec.ac.jp/
次世代半導体へ向けて世界的研究の数々

- 山口研究室のある調布キャンパス西8号館

- 電通大の東地区と西地区をつなぐ中門
山口浩一先生のご専門は「量子エレクトロニクス」。次世代半導体として電子の量子サイズ効果を利用したナノメートルサイズの新型半導体の開発を研究課題としている。
「いまこの研究分野では、『量子ドット』と呼ばれる、ナノメートルサイズの微小な半導体結晶の粒を用いた素子の開発に、期待が寄せられています。その新型素子をつくるためには、1平方センチメートルあたりに1兆個もの量子ドットを均質なサイズにそろえる必要があり、多くの研究者がその研究に挑んでいます。私たちの研究室では、超高真空の中で結晶成長させる際の、自己組織化という手法の作製条件を調べ、世界でもっとも高均一な量子ドットをつくることに成功しました。これまで築いてきた結晶成長についての基礎的な研究が、この成功に結び付いたと思っております」
さらに山口先生の研究室では、結晶成長の過程で別の物質を加える方法(サーファクタント効果)で、均一な量子ドットをさらに高密度に作製することにも成功している。この成果は高性能な半導体レーザーや高変換効率の太陽電池への応用にも期待されている。
山口先生の所属する電子工学科の概要について伺った。
「いま多くの理系大学から電子工学科という学科名が次々に消えていますが、電子工学という学科では、材料物質からデバイス・通信・情報・システムまでを幅広く学ぶことができ、卒業生は社会でも高い評価を得ています。このような質の高い電子工学の技術者や研究開発者を育てたいという考えが根強く、電子工学科という名前が残っています」
大学側のこのようなこだわりや、長年にわたって培われてきた産業界との信頼関係は、学生たちの卒業後の進路にもよい影響を与えているようである。電通大は就職率のいい国立大学として広く知られているが、なかでも電子工学科の就職率は好調らしい。これは長年にわたって培われてきた産業界との信頼によるもので、いまや電通大の電子工学科はひとつのステータスにさえなっているのだ。
「20世紀はエレクトロニクスの時代といわれました。21世紀はその延長として、量子ナノエレクトロニクスの時代ともいわれ、これらはまさに電子工学科のフィールドでもあります。つまり、次世代の高度な情報化社会を支えるべき技術者・研究者の人材育成がこの学科の大きな目的になっています」
また、同学科では「ものづくり」指導にも力を入れており、それぞれの学生が電子工学に関する工作物のアイデアを出し合って製作し、競い合う「エレクトロニクスコンテスト」や「電子工学工房」も備える。さらにはインターンシップ制度も盛んで、規定時間以上の実習を行なうと単位に認定される。いずれも学生には好評とのことだ。
やるからには愉しみながら研究しよう

- 盛夏を迎えた電通大キャンパス西地区の全景

- 研究室において学生指導をする山口先生
電通大電子工学科では、学部学生が各教員の研究室に所属するのは4年次の1年間となる。山口先生の研究室でも定員いっぱいの学生を毎年受け入れているが、希望者は定員の倍以上あり、選抜が行われる人気の研究室だ。
「そのためか、やる気のある学生さんが多く入って来てくれますので、研究室の雰囲気も活気があって良好です。卒業研究では『一人ひとり独立した研究テーマ』で『やるからには愉しみながら研究する』というのをモットーにしています」
研究テーマは自然とモノづくり系が多くなるが、山口研究室ではそこで必要になる装置を手づくりするところから始める。それによって装置の原理や仕組みを理解し、トラブルが発生したときなども自分で修理や改良して対処できるようにもなる。これは山口先生自身が学生時代に受けた指導法でもあり、いまの学生たちにも同じ方法を推奨しているのだ。
「装置などの設計開発やデータ解析などのソフト開発、そして材料物質の作製や評価、素子への応用など、これらを卒業研究を通して学ぶことができるのは、まさに幅広い分野を習得する電子工学科ならではだと思います」
最後に山口先生はこんな話をしてくれた。
「いまはインターネットをはじめIT技術の発達等によって、情報の入手には時間がかからなくなっていますが、その情報の中身についてもっと自分の頭で考えることをして欲しいと思います。また難しい地道な基礎研究などでも、起きている現象について自分が理解できることやイメージできることを通して、それらが何につながるのかを少しずつでも具体的につかんでほしい。このようなプロセスを大事にしていけば、学問の本当の面白さが見えてくるでしょうし、研究も積極的に愉しみながらできるようになるでしょう。嫌々やっても成果は上がりませんからね」
こんな生徒に来てほしい
好奇心を旺盛に、いろいろなことに興味や関心をもって欲しいですね。大学で学ぶことで、さらに興味や面白さが増し、自分の進む方向も見えてくるでしょう。そして、科学技術ばかりではなく、文化・社会などにも広く関心を持ち、新たな学問の探求に向かってほしい。若い時のチャレンジ精神で次々と研究対象にぶつかっていくことが大事です。

