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Good Professor

大和 裕幸

大和 裕幸 教授
東京大学
大学院  新領域創成科学研究科

副研究科長

やまと・ひろゆき
1954生まれ。’77年東京大学工学部船舶工学科卒。’82年同大学院工学系研究科博士課程修了。’82年航空宇宙技術研究所入所。’87年米国航空宇宙局NASAエームズ研究センター勤務。’88年東京大学工学部船舶工学科助教授。’97年同環境海洋工学専攻教授。’99年より現職。’90年造船学会賞受賞。主な著作に『人工環境学』(東京大学出版会)『東京の交通問題』『それは足からはじまった』(前著ともに技報堂出版)などがある(著作はいずれも共著)。
大和先生が主宰するWebサイトのURLアドレスはコチラ → http://www.nakl.t.u-tokyo.ac.jp/~yamato/

世界初の産業環境学研究を次々と実用化

大和先生の教授室のある「新領域環境」棟
大和先生の教授室のある「新領域環境」棟
「新領域環境」棟1階看板表示と建物入り口
「新領域環境」棟1階看板表示と建物入り口

①職場のフローチャート(作業手順)を作業者に教えてくれるコンピューターソフト「Sharefast」の開発(ほとんどの職種に適応可能)②大型船舶のブリッジにおける効率的な協調作業について分析するソフト「CORAS」の開発(航空機の操縦や医療の手術チームなどにも援用可能)③好きなところにバスを呼び乗客の希望する場所まで運んでくれる「オンデマンドバスシステム」の構築④かつての海軍技術中将で東大総長も務めた平賀譲が残した技術や、海軍・教育に関する膨大な資料のデジタルアーカイブ化――これらが1人の人物によって考えられ、全てが世界初のものばかり。しかも実用化あるいは実用実験に成功し、またアーカイブ化を終えていると知ったら君は驚くだろうか? 精力的に研究開発を続けるその人が、東京大学大学院新領域創成科学研究科副研究科長にして人間環境学専攻教授の大和裕幸先生だ。しかも、その成果はまだまだある。

大和先生は、これだけの開発や研究もひとつのコンセプト(ひとつの基本的な考え方)で繋がっているのだと語る。

「わたしの研究分野は『産業環境学』といいましてね、みなさんが働いている環境についてITをベースにして作業効率をよくし、かつ作業をするのにふさわしい環境を考える分野になります。これによって作業効率があがることで、余った時間を新たな作業に振り向けられますから、これが私なりの産業界への貢献になるわけです。わたしの研究というのは造船の設計技術から始まりましたが、あとの開発の流れはその技術を援用しているだけで、基本的にはみんな同じ技術なのですよ。オンデマンドバスなどは別の技術が使われているようにも思われるでしょうが、あれも少しは工夫していますが、もとは同じ技術です」

「Sharefast」はオープンソースとして公開し、だれでも無料で自由に使用できるようにしたという。ソフトメーカーのなかには、これを商品化して販売している例もあるようだが、それもまた良しとしていらっしゃる。いま先生が力を入れているのは、オンデマンドバスと平賀譲研究である。

「オンデマンドバスは、これまで大学キャンパスのある柏市と島原半島(長崎県)で7回の実験を行ない、いずれも良好な結果を得ています。この秋からはさらに5市町村を加えて本格的な実用実験が始まります。島原半島のような過疎地の交通格差是正のための新しい社会システムとして、期待は大きいですね。平賀譲は海軍時代に軍艦の設計で功績のあった人で、彼が設計に携わるようになって日本の軍艦はすべて国産化されます。彼は1943年に亡くなっていますから、この人について調べることは日本の造艦史を知ることになります。その彼は何を考えて軍艦を設計したのか? それを遺された4万点の資料から読み取ろうという研究ですね」

すでに4万点にのぼる資料のデジタルアーカイブ化を終え、先生はその膨大な資料の山に分け入ることになる。この並外れたパワーには驚くばかりだ。

自主性の尊重と「120点主義」

東大柏キャンパス正門へのアプローチ
東大柏キャンパス正門へのアプローチ
最寄り駅のつくばEx柏の葉キャンパス駅
最寄り駅のつくばEx柏の葉キャンパス駅

大和先生の所属は東大大学院新領域創成科学研究科だ。いわゆる学部の延長の大学院とは違って、学部から独立した独立研究科である。この大学院について、先生は次のように説明してくれた。

「ここは新しい技術・新しい学問を創り出すことを目的にした大学院です。そのためいろんな分野、さらには農学部や工学部・医学部などの教員および出身学生たちが『学融合』を図りながら、新たな領域を切り開いていこうというところです」

さらに先生は東大本郷キャンパスにある工学部システム創成学科でも教壇に立ち、講義のほかに3年次学生の演習や4年次学生の卒業研究指導も担当している。

「3年次学生の演習は、こちらから研究テーマを与えてやってもらうようにしています。たとえば、GPS付きの携帯電話を用いて、自分の居場所がわかるシステムを考案しなさいというようなテーマですね。卒業研究については、研究テーマを10ほど挙げてその中から自分の関心のあるテーマを選ばせるようにしています」

学生指導については次のようにお考えだ。

「自主性を育てること。それに120点主義。試験で合格点を取ったからと安心しているようではダメ。120点をめざして頑張りなさいということです。それに研究室入りした学生には、コンピューターのプログラミングができるようになること、ちゃんとした日本語の文章の書けること――このことを最低限の課題にしています。つまり、数学と国語が基本になるのです」

最後に大和先生の口から、最近の学生についての苦言が呈された。

「たとえば、平賀譲は小さいときから徹底して書き取って頭の中にたたき込んでいます。それが最近のこの国の若者たちに決定的に欠けるところですね。とにかく広く深く本を読みまくってほしい。知識というのは、頭の中に入っているものしか使えませんからね。徹底的に基本を頭にたたき込むこと、それしかありませんよ」

これらは、他でもない東京大学の学生諸君に対しての苦言だ。なかなかに厳しいというほかはあるまい。

こんな生徒に来てほしい

基礎的な力をしっかり持っていることですね。上っ面の知識だけでは必ず使えないときが来ます。そのためには中学・高校レベルの勉強をきちんとすること。とくに数学と国語の基礎力は高校までに付けないと話になりません。大学に入ってから学び直そうとしても、もう遅すぎます。それから暗記するタイプの学習もバカにしないで、とにかく頭に叩き込むことが大切です。そして、身体を鍛えることですね。

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