- 西川 伸一 教授
- 明治大学
政治経済学部 にしかわ・しんいち
1961年新潟県生まれ。’90年明治大学大学院政治経済学研究科政治学専攻博士後期課程退学。’90年明治大学政治経済学部専任助手。’93年同専任講師。’00年同助教授。’05年より現職。この間、’98年英シェフィールド大学東アジア学科客員研究員。主な著作に『この国の政治を変える会計検査院の潜在力』『日本司法の逆説』『楽々政治学のススメ』(いずれも五月書房)などがある。
西川先生が主宰するサイト「国家論」(西川伸一ゼミナール)のURLアドレスはコチラ → http://www.kisc.meiji.ac.jp/~kokkaron/
ニッポンの官僚と司法制度に迫る「国家論」

- 西川研究室のある駿河台校舎「研究棟」

- 明治大学駿河台校舎の全景
明治大学政治経済学部では、’08年度新入生からの演習(ゼミ)に「ゼミ指導型コース制」が導入された。学生たちの興味や関心に合わせ、科目を体系的に選択履修できるようにしたものだ。この制度改革の先頭に立って委員長を務めたのが、今回ご登壇ねがう同学部政治学科の西川伸一教授だ。
「ゼミ指導型コース制は『政治学・社会学』『経済学・経済政策』『地域行政』『国際文化』の4つのコースからなり、学生たちは所属するゼミの教員の指導を受けて、それぞれのコースに設けられた科目を、各自のテーマに合わせて取ることができます。その大きな特徴は、政経学部の学生であればどのコースのゼミに入ってもいいことです。つまり政治学科で学ぶ学生が経済学のゼミを取ることもできるのです」
なかなかユニークな制度として評判も上々とのこと。とくに目的意識がはっきりしている学生にとっては、学習意欲を刺激するとして大いに期待が集まっているらしい。
このほか、明治大学政経学部に設置されているユニークなカリキュラムに、①アメリカ・中国の大学との間で学生を相互に派遣する政経学部独自の国際交流、②ジャーナリスト育成プログラム、③公務員養成講座などがある。
「政治学科を設けている日本の大学は意外なほどに少ないのですが、本学の政治学科は講義の種類・内容や、学生を支援する制度なども整えられていて、政治学を本格的に学びたいという学生に、十分に満足してもらえると思います。政治学以外にも社会学を専門とする教員も多く、社会学に興味のある人が体系的に勉強できるカリキュラムが組まれています。これは他大学の政治学科にはない特徴でしょうね」
現実を踏まえて国家の実体を分析解明していく

- 大学の未来を示す「アカデミーコモン」
西川先生ご自身の専門は、「国家論」である。国家論という学問は、「国家とは何か」など国家の本質に迫る研究分野と、現実の国家がどうなっているのかを実体分析する研究分野とに大別される。先生の研究テーマは後者のほうに属する。
「現実の国家とは、どう成り立ってどう機能しているのか? その実体分析・実証分析はいかに進めるべきなのか? こうした論点がわたしの研究テーマです。具体的には、日本の官僚制度と司法制度についてで、最近はとくに裁判官人事の仕組みについて研究しています」
こうした研究にあたって、現実を踏まえて国家の実体を解明し、そのうえで批判すべきは批判し、肯定すべきは肯定していく客観的態度が重要だという。
「最近の官僚制度関係では、例の『居酒屋タクシー問題』が話題を呼びました。キャリア官僚たちの『役得』の最たるもので、まさに言語道断な行為といえます。しかし真に問うべきは、なぜ官僚の多くが連日連夜のように電車のなくなるまで働かなければならないのかという点です。実はこの原因の大半は国会議員にあるのです。とくに国会会期中は、翌日の質疑に立つ議員がなかなか質問内容を明かさないこともあり、その答弁の資料が準備できず、深夜まで待機や執務を余儀なくされているケースが多いのです」
「また、『ジャッジ』という、島の裁判官を主人公としたドラマがNHKで放映されて反響を呼んだように、裁判所のあり方についても国民的関心が高まっています。そもそも裁判官は憲法によってその独立が保障されています。しかし実際は、最高裁の裁判官を頂点にして高裁・地裁・家裁の裁判官までのピラミッド構造になっており、これらの人事権は最高裁の事務部門に勤務するエリート裁判官たちが握っています。裁判官も人の子ですから、出世したいといった思いは一般の人と変わりません。すると実際の事件に向き合うことよりも、人事評価を気にするあまり、上から評判のいい判決を出したりもします」
こうした司法界の閉鎖性によって、これまでにも社会通念や国民感情から大きく乖離した判決が出されたこともある。そうした弊害を打開するために、’09年から導入されるのが裁判員制度だ。この制度には国民、裁判所側ともにやや及び腰のようだが――
「裁判員制度のねらいは、プロの裁判官が国民とじかに触れ合って意見交換をし、裁判官の独り善がりな判決を少しでも是正できればということです。先進国の中で裁判に国民が関与していないのは日本だけです。お隣の韓国でも、’08年から国民参与裁判制度が始まりました。今回の制度導入には準備不足などの課題はいろいろ残りますが、ようやく国民の負託を受けた裁判制度がスタートするわけですので、わたしは肯定的に見ています」
「知的なぶつかり稽古」を自認するゼミとは

- 明治の象徴「リバティタワー」

- キャンパス正面の大学ロゴプレート
明治大学政経学部の「専門演習」は、3~4年次の学生が対象となる(1~2年次には「教養演習」と「基礎演習」が置かれている)。専門演習ゼミの内容は、3年次に外国書研究と卒業論文指導を2本立てで行い、4年次は卒論に集中する。
3年次前期の卒論指導では、現代日本の政治や行政について書かれたテキストを輪読しつつ、3年次ゼミ生が交替で報告者を務めながら徹底的に議論を深める。そして、3年次後期からは各自が具体的なテーマを決めて卒論準備に入っていく。
こうしたゼミ指導において、「ゼミは知的な『ぶつかり稽古』だ!」というのが西川先生の持論だ。
「わたしのゼミの討論では、その相手が先輩だろうが(たとえ教員であろうが)、徹底的に言いたいことを言って構わないことにしています。相撲のぶつかり稽古のように、順番も決めずに次から次へと質問や意見を出し合います。ことばによる真剣勝負の場でありたいと願っています。ですから、意欲のない人は発言機会のないまま置いていかれることにもなります」
厳しさの中に活発なゼミの様子が伝わってくる。なお、明治大学政経学部のゼミは必修ではない。このあたり西川先生は次のように語る。
「ゼミは必修ではありませんが、大学に入ったからには必ずゼミに入ってほしいですね。せっかくの4年間を大教室授業とアルバイトだけで終えてしまうのはもったいない。ゼミに入って、専門知識を学びつつ一生モノのかけがえのない友情も育む。これこそが大学4年間での一番の宝物ですからね」
こんな生徒に来てほしい
大学側(あるいは教員)が何か与えてくれるだろうといった、指示待ち気分の学生が最近多いような気もしていて、非常に残念です。晴れて最高学府に進学したからには、なにか一生役立つものを奪い取ってやろうというくらいの野心をもって、積極的に学んでほしいと思います。
つまり、自ら問題を探し出して解決策の糸口が考えられるような人ですね。大学で学ぶということは、高校までのように与えられた既知の課題をパターンどおりに解くような、受け身の学習とは全く違うという認識が大切です。小難しい表現をすれば、「個としてのアイデンティティー」を確立するためにこそ、大学で学ぶべきなのです。










